表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
319/743

317話 幸せの側面、幸せな側面 04



「ああ〜〜〜!!最ッ低だよ!!」



ドスン、と荒々しくソファに座り。

カールベンは伸ばした足で、壊れない程度にテーブルを蹴り、毒づいた。



「やってらんねぇ、ちくしょうッ!!」



それでも収まりがつかずに、ソファの座面に拳を打ち込む。

盛大に舞い上がった埃に顔をしかめ、その結果、更に苛立ちが加速する。



「くそッ!!」




───事の発端は、洗面台だ。


以前から蛇口の締まりが悪く、ポタポタと水滴が落ちていた。


まあ、大した量ではない。

水道代に響いたとしても多少の事さ、と長らく放っておいたのだが。

ここ最近の熱帯夜で、非常に寝付きが悪くなり。

その水滴の音が、どうにも気に(さわ)るようになってしまった。


獣狼族(ライガルフ)の聴覚は、人間の何倍も優れている。

一度気になってしまうと耳から離れず、一種の拷問だ。



───もう、我慢出来ない!



意を決し、使わないまま錆が浮き始めた工具箱を持って来て。

こんなのキュキュッと締めてやればいいんだろう、というのが浅はかな考え。


ガチャガチャとやってるうち、ボロッ、と『蛇口が取れた』。


噴出する水の勢いに、たちまち間に合わなくなる排水。

悲鳴を上げながら必死に、もう一度取り付けようと格闘。

床は水浸し。


今思えば、元栓を閉じれば済む話だったのだが。

パニックに陥った自分は、思い付きもしなかった。


弾ける水飛沫でズブ濡れになりながら、やっとの事で蛇口を付け直し。

ありったけのタオルで床を拭いていた時、妙な音がした。


霧吹きでシュシュッ、とやるような。

それをずっと、連続でやってるような。


原因は、すぐに判明した。

何せ配管()き出しの、かなり古い平屋建てだ。



───洗面台蛇口に向かう途中部分から、水漏れしていた。


───力任せに揺すったせいで、亀裂が走ったのだ。



ビニールテープでグルグル巻きにし、その上からまたタオルを巻き。

元栓の存在を思い出したのは、事がここに至ってからである。




「・・・・・・」



深く息をつき、天井を見上げる。


どっ、と疲労が押し寄せてきた。

中途半端な姿勢で作業してたから、腰も痛い。


朝になったら、速攻で業者に連絡だ。

素人がヘタな事をするんじゃなかった。

最初っから、プロに任せるべきだったんだよ。


床はまだ濡れているが、もう気力が尽きた。

明日でいい、明日で!


このまま、寝ちまうか?

だが、興奮というか、イライラし過ぎてるな。

何処かに飲みに行くか?



(・・・でも、あんまり金無いんだよなぁ)



細々(こまごま)とした計算は面倒だから、やらないが。

ざっくりと見積もってもこの先、ざっくり足らない感じだ。


いや、どうせ足らないなら、多少使ってもいいか?



───そんな事を考えていたら、玄関のドアがノックされた。



「・・・・・・」



妙だな。

玄関先に誰かが歩いて来た音はしなかったぞ?


これって何か、ホラーなヤツか?



「居るかしら?───私よ」



こちらの名前を呼ばず、自分が誰かも名乗らない声。



ファリアちゃん!?


え??

何で、俺のところに!?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ