表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
315/742

313話 悪魔のプライド 06



「───おぬしも売れない時代は、『流し』をやっていたらしいな」



《白面の悪魔》が、唐突に言う。



「・・・だ、誰から、それをッ!?」


「そりゃあ、おぬしのファンからに決まってるだろう」


「・・・・・・」


「断られても頭を下げて。

雨の中、何軒も店を廻って。

酔客に絡まれ、グラスを投げ付けられたりもしただろう。

そんなおぬしが、アマチュアの気持ちを想像出来ぬ筈はあるまい?」


「・・・・・・」


「───《Hell Musica》」


「ッ!!」


「我輩、《トレカ》なる遊戯を多少は(たしな)んでいてだな。

運良く、全国大会でベスト16に食い込んだ事もある。


勿論、《Hell Musica》も使うぞ?


駆け引きの果てに、格上カードを倒す爽快感は格別だからなあ。

(えが)かれたイラストも、実に素晴らしいじゃないか。

ええ??」


「・・・・・・」


「『悪魔』の生き様は、それぞれだろう。


様式美に(のっと)り、傲岸にふんぞり返るも良し。

気取りに気取って、伊達を押し通すも一興。

毒舌で煙に巻きながら、その裏で『聖者』の如く生きるも味わい深い。


まあ我輩としては、少し笑われるくらいで丁度良い、と思うがな」



腕組みを(ほど)いて、男は。

ニタリと『邪悪な笑み』を浮かべた。


そして。



「───だが、卑怯と卑劣はイカンなあ」



ぽん、と左肩に手を置かれた。



「ッ!!!」


「ジュンヤ・スエモリ氏から、極上の絵を頂き。

『写し身』とも言えるカードを、多くの者に称賛され。

奏でる音色に魅せられた、古くからのファンさえ居るというのに。


自分の事だけ考えて、他者を(ないがし)ろにするような。

口先の理念を盾にして、私腹を肥やしまくるような。


そんな『悪魔』が存在するとしたら。


こればっかりは、許す事が出来んなあ。

まったくもって、出来んだろう。


流石の我輩も怒りのあまり、『怒髪が天を突く』ぞ??

ええ??」


「・・・いやッ!・・・そのッ!・・・」



ぐぐ、とアップで迫ってくる《白面》。


ちょ、待て待て待てッ!!



「なあ───ダルホーゼン・ガル・カラッド」


「ひいッ!」



真名(フルネーム)』で呼ばれ、思わず情け無い声が出た。



「マクツヴァの《加盟料》に関してだが。

我輩が昔払った分で、足りるか??」


「は・・・はひッ!!」


「おお!そうか、そうか!

そりゃあ良かった!


では早速、地獄に戻って仕事に励むといいぞ!

やるべき事が沢山あると思うが、体調を崩さぬよう、気を付けてな?

フハハハハ!!」



ステッキが床を叩く音と同時に、燕尾服の姿は消え。


それから男は、くるりと振り向いた。



「───とまあ、こういう訳だ、マギル女史。

我輩、ちと格好良すぎる所を見せてしまったか??」


「如何なる時も閣下は、《大悪魔》に相応しい立ち振舞。

この度の御助力、深く感謝いたします」


「や、や!そんなに改まらんでくれ給え!

”虫の知らせ”か、”死霊の(いざな)い”か。

ドイツへ来たのは本当に、偶然なのだ。


そなたとしては、アレだろう?

ギルバートに、『こういう事』も含めて経験させたかったのだろうが。

カチ合ってしまうとつい、熱くなってなあ!


ま、あやつもこれからは、もう少し賢くやるだろう!」



ワークパンツのポケットから出した扇子が、華麗に広げられ。

バサバサと首元を(あお)ぎつつ、男は笑う。



「さてと。

これから我輩、マクツヴァの諸君と少々語らうつもりだが。

その後で、Münchener(ミュンヒナー)でもどうだ?

久し振りのドイツだからなあ!

ヴァレスト君も誘って、ぐい、と()ろうじゃないか!

ええ??」


「 はい、是非!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ