301話 公認される 05
「クライス、ちょっと聞きたいんだが」
「何さ、アル」
「分家の方は、どうやって血を確保してるんだ?
献血キャンペーンとかか?」
「そんなのやってバレた時は、大事件になるよ。
人間が人間に向けた善意を横取りするのも、何か嫌だしさ。
ただ、献血というのは当たらずとも遠からず、かな」
「ほう」
「『検査用採血』からの拝借だよ。
医療機関に、吸血鬼を潜り込ませてる。
言っとくけどこれ、他家よりよっぽど穏便な方法だからね?
ファリアだって承認してるし」
「ええ。『強制無し』の原則下では、妥当な手段でしょうね。
ただし、ガニア家のように個々にノルマを課す事は禁止よ」
「つまり、分家の血は《捧げられたものではない》、って訳だな?」
「まあ、そうだよ。それがどうしたの?」
「───やっぱりな。
よし。今回の一件の謎が、完全に解けた」
「「え??」」
吸血鬼2名が同時に声を上げ、顔を見合わせる。
なあ、こういう時だけ仲がいいのは、どうしてだ?
疎外感というか若干、悔しいんだが。
まあ、いい。
軽く咳払いし、注目を集める。
コーヒーで喉を湿らせ、ニヤリと笑って。
───さあ、『開演』といくか。
「分家じゃなく、本家に人間達が押し寄せた理由。
それは、貯蔵された血の違いにある。
本家のそれは、遥か昔から人間の自由意志で捧げられたもの。
嫌がるヤツから奪い取ったのは、一滴たりとも無い。
まあ、分家だってそういう時代はあったんだろうけどな」
「そうだね」
「その通りよ」
「ズィーエルハイトの為に。
他の何者でもなく、ズィーエルハイトに対して期待し、応援する為に。
それは即ち。
《ズィーエルハイト・ファンクラブ》だ」
「・・・は??」
「ファンクラブ?」
「だって、そうだろう?
好きなアーティストのファンクラブに入会し、会費を払う。
それがアーティストの『力』になり、会員も貢献したという満足を得る。
樽を満たす血の一滴一滴が、熱烈な支持者。
ファンクラブの会員だ。
ズィーエルハイトは、このシステムを。
まだ『ファンクラブ』という概念が無かった頃から、独自に運用していた」
「・・・・・・」
「───ファン、クラブ───」
「そして、時は流れ。
ファリア・ズィーエルハイトが、初の女性頭首となり。
《ズィーエルハイト・ファンクラブ》は、その名を《FFC》と変えることに」
「エフエフシー、って何さ?」
「??」
「《ファリア・ファンクラブ》の略だ。
どんなイケメンであっても、男性のファンはそう簡単に付かないが。
ファリアの美しさなら、性別を問わず心を鷲掴みにされる。
したがって現在は、名実ともに『ファリアONLYのファンクラブ』だ。
昔の頭首を応援していた会員も、とっくにファリアへ宗旨替えしている。
───ここまでは、いいか?
何か質問があれば答えるが」
「・・・何を訊いていいか、さっぱり分からない」
「───だ、大丈夫、よ」
「じゃあ、次へ進むぞ」




