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303/743

301話 公認される 05



「クライス、ちょっと聞きたいんだが」


「何さ、アル」


「分家の方は、どうやって血を確保してるんだ?

献血キャンペーンとかか?」


「そんなのやってバレた時は、大事件になるよ。

人間が人間に向けた善意を横取りするのも、何か嫌だしさ。

ただ、献血というのは当たらずとも遠からず、かな」


「ほう」


「『検査用採血』からの拝借だよ。

医療機関に、吸血鬼(ウチの)を潜り込ませてる。

言っとくけどこれ、他家(よそ)よりよっぽど穏便な方法だからね?

ファリアだって承認してるし」


「ええ。『強制無し』の原則下では、妥当な手段でしょうね。

ただし、ガニア家のように個々にノルマを課す事は禁止よ」


「つまり、分家の血は《捧げられたものではない》、って訳だな?」


「まあ、そうだよ。それがどうしたの?」


「───やっぱりな。

よし。今回の一件の謎が、完全に解けた」


「「え??」」



吸血鬼2名が同時に声を上げ、顔を見合わせる。


なあ、こういう時だけ仲がいいのは、どうしてだ?

疎外感というか若干、悔しいんだが。


まあ、いい。


軽く咳払いし、注目を集める。

コーヒーで喉を湿らせ、ニヤリと笑って。



───さあ、『開演』といくか。



「分家じゃなく、本家に人間達が押し寄せた理由。

それは、貯蔵された血の違いにある。

本家のそれは、遥か昔から人間の自由意志で捧げられたもの。

嫌がるヤツから奪い取ったのは、一滴たりとも無い。

まあ、分家だってそういう時代はあったんだろうけどな」


「そうだね」

「その通りよ」


「ズィーエルハイトの為に。

他の何者でもなく、ズィーエルハイトに対して期待し、応援する為に。


それは即ち。

《ズィーエルハイト・ファンクラブ》だ」


「・・・は??」

「ファンクラブ?」


「だって、そうだろう?

好きなアーティストのファンクラブに入会し、会費を払う。

それがアーティストの『力』になり、会員も貢献したという満足を得る。


樽を満たす血の一滴一滴が、熱烈な支持者。

ファンクラブの会員だ。


ズィーエルハイトは、このシステムを。

まだ『ファンクラブ』という概念が無かった頃から、独自に運用していた」


「・・・・・・」

「───ファン、クラブ───」


「そして、時は流れ。

ファリア・ズィーエルハイトが、初の女性頭首となり。

《ズィーエルハイト・ファンクラブ》は、その名を《FFC》と変えることに」


「エフエフシー、って何さ?」

「??」


「《ファリア・ファンクラブ》の略だ。


どんなイケメンであっても、男性のファンはそう簡単に付かないが。

ファリアの美しさなら、性別を問わず心を鷲掴みにされる。


したがって現在(いま)は、名実ともに『ファリアONLYのファンクラブ』だ。

昔の頭首を応援していた会員も、とっくにファリアへ宗旨替えしている。


───ここまでは、いいか?

何か質問があれば答えるが」



「・・・何を訊いていいか、さっぱり分からない」

「───だ、大丈夫、よ」


「じゃあ、次へ進むぞ」



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― 新着の感想 ―
[一言] ファリアのファンクラブ、、、どこかの狼が関わってそう
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