282話 知らないことは、知らないことに 08
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「・・・まあとりあえず、適当に座ってくれ」
「すまないね、アルヴァレスト。
わざわざ転移陣まで出してもらって」
「おい、ヴァレスト。
えらく狭苦しい部屋だが───これはアレか?
コンビニ雑誌で定期的に特集が組まれる、『男の隠れ家』とやらか?
結局ロフト部分は格好だけで、大した活用も出来ないという」
「うるせぇよ。この面子でその辺の店、って訳にはいかないだろ?
うちのアジトなんて論外だし、ここしかないんだよ」
「ふむ。それにしても、固い椅子だな」
「おい、何やってんだ!?テーブルに腰掛けるなよ!」
「ん?丁度良い高さだったから座ったのだが。
使っては駄目なのか?」
「普通、椅子にランプを置くか?
どう見てもローテーブルだろうが!」
「そうか。まるで椅子のようなテーブルだな」
「ねえ。それで、『海エルフ』の事なんだけれど。
どうして探したら駄目なんだい?」
「ああ。わたしの後輩で、かなり偉くなった奴がいてな。
そいつに頼んで少し、調べてもらったのだが。
───『海エルフ』の正体は、《外来種》。
即ち、 外宇宙からの移住者だぞ」
「えええ〜〜〜っ!?
外宇宙って・・・エルフとは関係無い種族なの!?」
「うむ、全く無いな。
こちらでは、『海エルフ』とは別の呼称で記録されている。
そもそも、彼等の本来の姿は人型ではない可能性が高い」
「そんな・・・じゃあ、なんでエルフと同じ見た目に」
「地球に降りて初めて出会ったのが、たまたまエルフだったのだろう。
とりあえず姿を真似てはみたが、同じ生活圏で暮せば齟齬が生じてしまう。
そこで、エルフが住んでいない場所───海へ潜った。
天使側の見解としては、そんなところだな」
「《外来種》かぁ・・・考えもしなかったな。
夜空の星に思いを馳せる事はあっても、そこから誰かが来るなんて」
「そういうメルヘンな世界に生きているから、エルフは取り残されるのだ。
太陽系外の探査は、天使も悪魔も力を入れている。
そこそこ居るものだぞ、《外来種》と判明しているのは」
「確かに、そうだな。
幾つか有名なのが・・・『雪山の巨人』とか、『透明な飛行魚』とか」
「あとは意外なところで、『砂の唄い手』もだな」
「・・・はあ!?砂の唄い手!?」
「何だ、ヴァレスト。知らなかったのか?
むむ───ひょっとするとこれは、言ってはならないやつだったか?」
「ちょっ、ちょっと待て!!砂の唄い手が、外来種だと!?
いやいや、そんな・・・嘘だろっ!?」
「生憎だが、本当だぞ。
外来種の中では比較的、多くの調査記録が残されているしな」
「・・・・・・」
「どうした。随分と顔色が悪いようだが。
今朝何か、傷んだ物でも食べたか?」
「・・・い、いや・・・」
「そういう『明らかに挙動不審なツッコミ待ち』は、見ていてイライラする。
いいから、腹を割って話せ。
お前とわたしの仲だ、悪いようにはしない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・昔、付き合ってた」
「どんな付き合いだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・色々と、だ」
「ふうむ。
お前は───女なら誰でもいいのか?」
「馬鹿言うなッ!!」
「じゃあ、顔で決めたのか?」
「ち、違ッ!・・・彼女は性格も・・・相性も良くッ!!」
「砂の唄い手達はな。
数百年の周期で『母星』へ戻り、別の個体が地球へ派遣されるらしいぞ。
───つまりだ、ヴァレスト。
未だ我等が到達出来ない、遥か彼方の惑星で。
父の顔を知らぬ『新型のドラゴン』が誕生したかもしれんな」
「『新型』って言うな!!『新型』って!!」
「別に、ネクスト・ジェネレーションでも構わないが。
この先機会があれば、認知くらいはすべきだぞ、男として」
「お前、まったく遠慮が無い物言いだな!
うちの秘書並みに、グサグサ突き刺しやがって!」
「お前とわたしの仲では、これくらいが適当だと思ったのだが。
すまないな、口下手で」
「・・・・・・」




