表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
273/772

271話 That's all right. 01


【That's all right.】



「どこで暮らすにしろ、旅の途中で寄っただけにしろ。

生まれ育った場所のメシってのは、ふと懐かしくなるもんさ。

故郷(くに)の言葉で書かれた看板見つけりゃ、特にな」


「いや、まあそれはそうだろうけど・・・」


「人間なんて様々だが、腹が減ったら皆同じだ。

当然、こういう種類の奴等だって来る。

採用する時にも言った筈だぞ?」


「確かに聞いたさ、聞いたけど!

いくら何でも『あれ』はないよ、オーナー!無理だって!」



ぶんぶん、と首を横に振るバイト青年。

オーナーと呼ばれた壮年の男は、短く吐き捨てるような溜息。



(お前、散々自慢してたろうが。

何人相手に喧嘩しただの、どこぞの誰に勝っただのと)



やっぱり口先だけか。

一々真に受けず、これまでは適当に相槌を打ってきたが。

結局いざとなったら、この有様だ。

こういう時に格好が付けられないなら、最初から言わなきゃいいのによ。



まあ───『あれ』を見たら、そうなっちまうのも仕方無いか。



一番奥、壁際のテーブルに着いた3人組。

どんな阿呆でも一発で『分かってしまう』ほどの、存在感。

威圧感(プレッシャー)


とてもじゃないが、素人が対応出来るような相手ではない。



特に、ダークスーツの2人。

目の奥の光がヤバすぎる。

あれは人間(ひと)の姿をした、凶悪な肉食獣だ。

己の強さを自覚しており、他者を蹂躙する事に一切の躊躇(ためら)いが無く。

笑いながら殺し、臓物を引き千切り。

その血の海に座ってレアステーキを平らげるような、『暴虐』の頂点。


元々『そっちの世界』にいた自分でも、背に冷たい汗が(にじ)むくらいだ。


並んで座った2人に対し。

その向かいに腰掛けた、まだ若い1人。

こちらはやや『軽め』な印象だが、それもこの場での単なる比較でしかない。

あの男だって実際は、相当なものだろう。

1人で道を歩けば、街の強面(こわもて)連中が全員()けちまうレベルだ。



「───アッカルド兄弟と、舎弟のダニーロか」


「え??」


「揉めたロシアン共を全員ブチ殺して、一躍有名になった奴等さ。

だが派手にやり過ぎたもんで、イタリア(本国)に居られなくなってな。

しばらくは他国(そと)で『夕涼み』ってのは、噂で聞いちゃいたが。

まさか、ウチの店に来るとはな」


「ええ〜〜・・・」


「ま、それはそれとして、仕事だ。

さっさと注文取ってこい」


「い、嫌だっ!そこまで教えといて、あんまりだよ!

これもう、洒落になんないって!!」


「デカい声出すんじゃねぇ、馬鹿。

ふん───今回だけは、俺が代わりに行ってやるか───」



オーナーは腰の後ろ辺りに、ぐい、と力を込め。

トレードマークである赤いバンダナを手早く外した。



(ヤンチャ坊主にはいい薬だろうが、店を辞められても困るしな)

(最低限の挨拶だけは、しておくか)



挨拶といっても、堅気の連中が思うようなものじゃない。

堅っ苦しい文言や、作法もありゃしない。


顔見て目ぇ合わせたら、全部『分かる』。

余計な言葉なんか必要無い。



それが、《マフィア》ってもんだ。



「先輩、すみませんッス!御馳走になりまッス!」


「おう、いいっていいって。気にするな。

せっかく地上(こっち)に来たんだ、握り締めた小遣いを減らす事も無いだろ」


「へへっ、今日の俺はツイてるぜ!これで1食分浮いた!」


「ああ??キース、お前は稼ぎがあるだろうが」


「アンタが思ってる程、営業ってのは高給取りじゃないんだぜ?」


「───まあ一応、年長者の義務として(おご)ってやるが。

今回だけだからな?」


「よッし!」


「それで───どうだ、オーレン。初めての地上の印象は」


「結構ゴチャゴチャしてて、人間が多いッスね」


「そりゃそうだろう。ミュンヘンは都会だからな。

少し田舎のほうへ行きゃ、のんびり長閑(のどか)なもんだよ。

ただ、なあ。

将来はこっちで暮らすにしても、『巣穴探し』は簡単じゃないぞ?」


「そのへんは、お袋からも聞いてるッス。

けどやっぱり、伝統ってのを大切にしていきたいッスから」


「ふうむ───なかなか立派なドラゴンだな。

よし、もっと食べろ。それだけじゃ足りないだろ?

どんどん追加していいからな」


「ッス!」


「おおっ!これでもう1食分浮くぜ!」


「キース、お前なぁ。

ランチで食い溜めとか、そこまで金に困ってるのか?

賭け事(ギャンブル)は程々にしておけよ?」


「おいおい。そんなモンに手は出さねぇよ。

単純に、今月は支出が(かさ)んじまってさぁ」


「何の支出だ」


「何のって、アレさ。

『交際費』だよ───ほら、分かるだろ?」


「その成果は?」


「見事に惨敗だ。(ことごと)く全滅。

ロマンスのロの字も残ってねぇよ」


「───腹一杯、食っていいぞ。

デザートまできっちり、責任持ってやる」


「すまねえ!恩に着るぜ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 全然違う人と勘違いされてて笑ったw。 ヴァルストさんの服装ってマフィア風じゃなくてまんまマフィアの格好なのね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ