269話 強いな、松村 09
「『公式戦』は、どうしてるんだ?
やっぱり人間に混じって参加してるのか?」
「そうだね。参加者は沢山いると思うよ。
やっぱり、カード強くしたいしさ」
ViMにおいて『公式戦』───運営主催の正規大会は、特別な意味を持つ。
腕試しだとか、賞品の限定カードを狙うより、もっと重要な事。
それは、『使用カードのレベルアップ』である。
通常、トレカは勝つ為にロマンを捨てる必要がある。
具体的に言えば。
どんなに好きなカードがあれど、対戦時は強いカード優先でデッキを組む。
そこに一石を投じたのが、トレカ界の革命児と呼ばれたViMだ。
ノーマルやレア等のランクに関わらず、全カードに搭載されたICチップ。
これに、公式戦で撃破した相手カードに応じて経験値が書き込まれ。
規定に達すると、カードの持つ攻撃力や防御力、その他を底上げ出来る。
ただし、そうやって強くしたカードを使えるのも、公式戦だけだ。
所謂『野良試合』では、本来の数値でしか使ってはならない。
ICチップを読み取る機械が一般には無い以上、これは仕方無いだろう。
知らない奴に”このカードLV5だし!”とかやられたら、喧嘩になるからな。
まあ、これで限定的ではあるが、気に入ったカードの育成が可能となった訳で。
この試みは確実に、後続タイトルの礎となるに違いない。
あと、余談だが。
ICチップに関しては、相当な不正対策が施されているらしい。
自前で書き換えた馬鹿は、運営の読み取り機に通した瞬間、警告音を浴びて。
全ての大会における『無期限出場禁止』を食らった、という話だ。
「僕も何度か、大会に出場しているからな。
知らない内に悪魔と対戦した可能性もあるな」
「そうだねー。
けど、こっちでは公式戦よりも流行ってるのがあってさ。
システム的には何て言えばいいのかな、複数対戦というか、集団戦というか」
「───は??」
「有志の何名かで作った、《非公式の多人数用・戦闘ルール》があるんだけど。
それがもう、爆発的に広まっちゃって。
今みんながハマってるのは、『ギルド戦』なんだ。
メンバーと一緒に拠点を防衛したり、連合を組んで敵対勢力の城を攻めたり」
「何だそれっ!?」
「ボクも、ギルドマスターをやっててね。
小規模だけど三期、要塞を占拠してるんだよー」
「ああああああっ!!!」
めっちゃ面白そうだぞ、それ!!
僕もやりたい!!
行けるものなら、悪魔の世界へ行きたいよ!!
ちくしょう!!
ちっくしょおおお!!
「羨まし過ぎるっ!!
何で僕は、人間なんかに生まれてしまったんだっ!?」
思いっ切り両手で、床をぶっ叩いた。
「こらこら、マーカス。そんな事言っちゃ駄目だよ」
くうっ!!
つい、カトリック信徒にあるまじき発言を!
しかも、悪魔に諭されてるし!
「ああ───無性にViMがやりたくなってきた!
まっちゃんは今、デッキ持ってるか?」
「ん、あるよ?
もしもの時に備えて、プレイマットと、ダイスと、ライフカウンターも」
「僕も持ってる。もしもの時に備えて、常に一式」
互いの視線が、ぴたりと合った。
───同好の士。
───そして、競い合う者として。
「せっかく出会ったんだ。対戦しようぜ、まっちゃん!」
「そうだね、マーカス!やろう、やろう!」
「最新のexpansionまで、『全あり』で!」
「うん!『全あり』で!」




