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268話 強いな、松村 08



「リアリティ、か」



ショルダーバッグからミネラルウォーターのボトルを出して、一口。



「そりゃ、あるに越したことはないが。

人間側と違って悪魔(そっち)は、手放しで喜べないんじゃないか?」


「え?どうして?」


「明らかに自分をモチーフにしたカードがあって。

それが弱かったりしたら、文句を付けたくなるだろ」


「あはは!『トレカあるある』の1つだね!

だけど、ViMに関してだけは大丈夫さ!」



リュックを倒してその中に潜り。

ずるずるとペットボトルを引き出す、まっちゃん。


その手、想像以上に器用だな。

僕の心配をよそに、難なく蓋を廻したぞ。



「まあ確かにね、誰だって自分の数値を強く設定してほしいし。

みんなが羨ましがるような、稀少価値も付けてもらいたい。

でも、ゲームの都合上、強いカードばかり作る訳にもいかない」


「ああ、そうだな」


「そこで効いてくるのが、フレーバーテキストなんだよ」



自身と同じ丈のペットボトルを抱え上げ、口元に運ぶクマ。


ごっ、ごっ、ごっ、ごっ。


なあ。

飲みっぷりはいいけど、全然ファンシーじゃない音がしたぞ?

子供の夢とかブッ壊すつもりか、まっちゃん。



「・・・ぷっは〜〜。

マーカスさー、《Hell Musica》の中段、思い出せる?」



『フレーバーテキスト』、もしくは『中段』と呼ばれるもの。

それは、イラストのすぐ下、カードの真ん中辺りに書かれた文章を指す。


プレイに際して必要な数値や効果とは別の、『それ以外』。

雰囲気作りの為の、想像を掻き立てるような補足文である。



「───”黄金の輝ける至宝は、失われた”

”されど、真の名手は楽器を選ばず”

”全ての者に、彼は教えるだろう”

”美しさの極致に、痛みがあること”

”絶望の果てに、慈愛がもたらされることを”」



緑色の月を見上げ、ヴァイオリン(フィドル)を構える蛇頭の悪魔。

その絵を思い浮かべれば、自然と言葉になる。



「おー!凄いなぁ!完璧に憶えてるじゃん!」


「プレイヤーのたしなみだ」


「いやいや、大したもんだよー!」



ちなみに、この特殊クリーチャー・カード《Hell Musica》。


効果は、


【発動直後、プレイヤーのLifeが1/3以下の場合、1/2まで回復する】

【発動後、そのターンにおける以降全ての自軍の攻撃及び魔法攻撃が貫通する】

【相手がダメージ軽減を発動していた場合、その値の分を更に攻撃力に加える】


カードランクがノーマルレアの為、発動コストはそれ程高くない。

しかしその割には、かなり破格の強さだ。

初心者から上級者まで、相手Lifeを削り切る為のラストアタックに使用される。


このカードが出されることを見越し、()えてシールド系を解除しておくか。

それらしい挙動はブラフと見て、突っ張るか。

最終ターンの1つ前は、心理戦だ。


”Musica使うのはド素人!”と、散々煽っていた動画配信者がいたが。

自分も対戦デッキにさらっと仕込んでいたのが発覚して、大炎上したよな。



「この《Hell Musica》の悪魔はね。

こっちの世界では大物で、すごく恐ろしいんだ。

うっかりネタにしようものなら、絶対にタダじゃおかないんだよ。

掛け値無しに、タブー中のタブー。

命に関わるからね、本当に」


「───そこまでか」


「本気になれば、《プレイ禁止》の法案だって出せる地位(たちば)だよ?

その『彼』が何一つ文句を付けないのは、フレーバーの文が秀逸だからさ。

”こんなの書かれたら、怒れないだろ”、っていう。

つい嬉しくなってニコニコするような、絶妙なトコを付いてるんだよねー」


「うーーむ。当の悪魔がノーマルレアのランクに納得してるならいいんだが。

それを聞いたら、一つ心配な事ができてしまったな」


「なになに??」


「『SS勢』」


「あーー」



『SS勢』というのは、『コレクター勢』から派生した第三勢力。

カード絵に惚れ込み、そのショートストーリーを執筆するViMファン達だ。



「SSも、よく読まれてるよー。

みんな楽しんでるから、問題無いと思うけどなぁ」


「そうか?書き手にも色んなのがいるから、どうなのかと。

───ん?ちょっと待てよ?」


「どうしたの?」


「半年くらい前だったか。

《Hell Musica》のSSを書いた奴が、大富豪から10万ドル振り込まれた、って。

あれって───もしかして」


「うんうん。マーカスの想像通りだと思うよー」


「────」




うおお!

Musica様、凄いな!


SSの出来が悪かった場合、どうなってたかは分からないが!



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