267話 強いな、松村 07
「もうね、ヴィジュアルでやられちゃったよ!
あれだけで、感激モノだよ!」
「何せ絵師が、ジュンヤ・スエモリだからな。
あの独特のタッチは、悪魔の世界でも人気なのか?」
「当然だよ!
ほら、彼って一時期、『引退説』が囁かれてたじゃん?」
「ああ。何かの取材で『そろそろ筆を置きたい』と言った、とか噂が流れて」
「それがいきなり、ViMで全カード新作描き下ろしでしょ?
こっちでも発売前から大ニュースになってたもん」
ジュンヤ・スエモリは日本のみならず世界的な、アート界の大御所。
重厚で華麗、且つ緻密な絵柄は、誰が見てもすぐに彼の絵だと分かる。
ファンタジー系を描かせたら右に出る者なし、と言われる巨匠だ。
確かに当時、彼がViMに関わると知って心踊った者は多かっただろう。
更に。
通常のトレカは5〜6人の絵師でヴィジュアルを分担するのが普通。
それをジュンヤのみで全て描くという、超絶豪華な計らいだ。
これがViMの売り上げの中核を担ったのは、間違い無い。
『プレイ勢』だけでなく、プレイしない『コレクター勢』も劇的に増えた。
しかし───ViMの魅力は、見た目のみならず!
「ゲームシステム自体も、奇跡的な出来だよな。
バランス調整がしっかりとされてるから、突然のルール改訂も無い」
「それもあるけどさー、やっぱり『世界観』だよ。
今までトレカに興味が無かった悪魔達も、世界観で惹きつけられたから」
「ん?どういう事だ?」
「あのね。
ViM以前のトレカのバックグラウンドって、ボクらからすると、何ていうか。
”あーー、人間にとってはそんな感じなのかー”、みたいな。
厳しく言っちゃうと、『なんちゃってファンタジー』なんだよね」
「ふむふむ」
「だけど、ViMはそうじゃなくってさ。すっごくリアリティがあるんだ。
固有の名称は誤魔化してるみたいだけど、ボクらはすぐに分かっちゃうよ。
誰がモデルなのか、何の魔法、アイテムを指してるのかさ」
「───まさか、ViMの製作者って───」
「や、や!それはこっちもすぐ、調べたから。
本当に人間!全く悪魔と関わってない、ただの人間さ!
マーカスみたいに魔法を借りてるとかも、なかったらしいよ」
「じゃあ、どうやって悪魔達が納得するようなモノを作ったんだ?」
「そこは、未だに不明なんだよねー。
ただ、調べた連中の話じゃ、かなり稀少な文献が山積みされてた、ってさ」
悪魔関係の文献?
『魔導書』とかそういう、ヤバい部類か?
僕も言えた立場じゃないが、それらを所有してるだけで《二種指定》は確実。
内容次第では、《一種》とされる事すら。
そして実践を試みれば即、特務の任務である。
───例の、超絶難易度な召喚術の本。
───くれたのがシンイチローの『お母様』で良かったよ。
もしも、あれが他の悪魔からの贈り物だった場合。
最悪、『不死身のシンイチロー』と交戦だぞ。




