266話 強いな、松村 06
「店員さんが間違えて、『隔離ボタン』押しちゃったんだろうけど。
でも、どうして君まで巻き込まれたのかなぁ」
リュックを盾にするのを止め。
ぺたんと床に座るクマ───もとい、まっちゃん。
「ん〜〜〜。何だろう、何か原因が・・・。
まさかとは思うけど、マーカス。
君って、悪魔から魔法とか借りてないよね?」
「借りてる」
「そうだよねー・・・って、ええっ!?」
「色々あって、幾つか借りてるが」
「それだよ、それ!
旧型の隔離装置って、一定以上の魔力や魔法式で判定してるから!
君、悪魔として扱われちゃったんだよ!」
「なるほど」
まあ、大してショックは無いな。
カトリックの信徒でありながら、邪教徒と間違えられる僕だ。
そこからもう1段階、嬉しくないレベルアップを果たしただけの事。
「本当、マーカスって動揺しないんだね・・・」
「経験が活きる、というやつだ。
閉じ込められたのより、悪魔がカード屋に来てるほうに驚いてる」
「え?ボク??そりゃあ、来るよー。
ボクらのほうにも売ってる所はあるけど、品揃えが良くないし。
人間界のほうが安いもん」
ああ、いや。
あっけらかんと言うが、まっちゃん。
それ結構、驚愕の事実なんだが?
「悪魔の世界にも、プレイしてる奴がいるのか」
「勿論さ!
ボク、学校の教員なんだけどね。
休憩時間に生徒達が遊んでるのを見てたら、興味が湧いちゃって」
「ほほう」
まっちゃんは、教師なのか。
もしかして、クマのほうの姿で教壇に立つのか?
サイズ的に、相当な高さの足台が要るんじゃないか?
「ちょっとだけのつもりが、どハマりだよ。
でも、時間も給料もガンガン溶けていってさー。
”これは駄目だ”って、泣く泣くカードを全部売って、引退したの」
「だが、カード屋に来てるって事は」
「2年前に、復帰」
「───Vowers in Menace か」
「そう!
あれ見ちゃったら、トレカ熱が再燃してさー!」
Vowers in Menace 。
通称、ViM 。
トレーディングカード界に革命を起こし、現在も大人気のタイトル。
様々なトレカに手を出してきた僕だが、こいつの危険度は振り切れている。
頭一つ抜けてるどころか、2馬身くらい他を引き離している。
一生、これで遊んでいたい。
あまりに出来が良過ぎ、面白過ぎて、散財すること火の如く。
自制心は、死んだ!!
何故か!?
ViMが凄いからさ。
任務中にもデッキ構成を考えてしまう、合法的な麻薬のような作品だ。
これには悪魔ですら、抗えなかったか───




