258話 危険な宿題 02
「なかよくしたいのは、ほんとう」
コーヒーカップを抱えて、チビチビと飲むリーシェン。
「なにか困ってること、あったらゆって。
やっつけたい奴いるなら、協力する」
おいおい。
物騒な事、言い出しやがったぞ。
「うちは、そういうのはやらねぇよ。
ミュンヘンで一番の穏健派だぞ」
「・・・うそつき」
「いや、本当さ。『当たり障りなく』がモットーの、ヴァレスト一派だ」
「・・・」
じとっ、とした疑いの目で俺を見るリーシェン。
しばらくして、短い溜息が零されて。
それから、細い指がテーブルの上に置いてある灰皿を指した。
「・・・たばこ、吸ってもいい?」
「お?おお、いいぞ」
ハイブランド製のバッグから取り出される、ロングシガレット。
ダイアを嵌め込んだライターで、カチン、と火が灯された。
「───意外だな」
「女のぶきは、意外性ってゆう」
メンソールの香りが、ふわりと応接室に漂う。
10か11くらいにしか見えない少女が堂々と紫煙を吐くのは、インパクト大だ。
しかし、喫煙者は肩身が狭い昨今。
同士にケチを付けるのは止めておこう。
「アジトですうと、カルロゥがおこる。
甘いものも、たくさん食べるなってゆわれる」
「へえ。そうなのか」
「あいつ、『健康おたく』。かなり、じゅうしょう」
「非健康なのは、間違い無くこちらだ。言い返せないな」
「それに、他にもうるさい事いっぱい、ぐちぐちと」
「ま、あんまり悪く言ってやるなよ」
俺も負けじと自分のタバコに火を付け、深々と吸い込む。
「怒ってくれる奴がいるくらいで、丁度良いんだぜ。
恐怖政治で締め上げるより、そのほうが上手くまとまるのさ」
「・・・バレスト」
「ヴァレストだ」
「ゔぁれすと。
今思い付いたこと、さも昔から考えてたみたくゆうの、よくない」
ぐおっ!
こいつ、俺の心が読めるのかっ!?
「ま、まあ、あれだ。そのカルロゥってのは、優秀なんだろ?
うちの陽気なコンビから聞いたぞ?」
「うん。あれが無職だったとこを、ひろってやった。
もともと、知り合いだったし」
「おう、優しいとこあるじゃねぇか」
「わたしのほうが、おねーさんだから。こき使ってやろうとおもって」
「どこまでヒネくれてんだ、お前は」
「照れる」
───2本分の煙が渦を巻くのを眺めながら、聞こえないように溜息。
リーシェンの一派は、ミュンヘンの中でも『大手』の1つとして有名だが。
こんな癖の強いのがトップだったとはなあ。
こりゃあ、部下が相当に苦労してそうだ。
戻って来たブーメランに後頭部を直撃されたくないから、言わないが。




