表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
192/738

190話 Danger Zone 03



「───どうしたよ、セルディオル」



ぐびり、と喉を鳴らしてコーヒーを飲み。

その缶で両手を暖めながら、ログフォルドが言う。



「もしかして今日のヤツ、あんまり面白くなかったか?」


「いや、そうじゃないさ。とても楽しめたよ」




───顔に出ていたのかもしれない。

考え事をしている間は表情が固くなるのは、どうにも直らない癖だ。


しかし、彼に誤解されたくない。


『映画として』は、本当に楽しかったのだ。

その上で、何について考えていたかを、正直に話す必要がある。


こういう事を話題にするのは初めてで、多少の気恥ずかしさを伴うが。




「素晴らしいストーリーだったし、役者の演技も良かったと思う。

ただ、少し・・・『誇張し過ぎではないか』と感じる部分があって」


「んー?どの場面(シーン)だ?」


「まずは、出会いの所。

作中では、カメラの寄り方や音楽で盛り上げているから、違和感は無い。

・・・しかしだね。

実際に、あんな短時間で互いの距離が縮まるなんて、あると思うかい?」


「え??普通にあるだろー?」


「いや、流石に不自然だよ。

知り合って1分以内で抱擁して、それからすぐに主人公の部屋というのは」


「互いのフィーリングが合えば、そんなもんだろ??」


「フィーリング、って簡単に言うが、君・・・」




何でもない事のように、あっさりと答える悪魔。


嘘を付いている様子ではない。

それどころか、私の疑問が理解出来ずに若干、困惑しているようだ。



これは。

これは、まさか!?




「もしかして・・・君は、ああいった経験があるのかい?」


「そりゃあ勿論」


「・・・何回くらいだい?」


「いや、数えるようなもんじゃないだろー」


「何回だい?」


「───まあ、1ヶ月に2〜3回くらい」


「そうか・・・やっぱり君は、向こう側の世界に住んでいるんだね」


「何だよ、『向こう側』って?」


「・・・」


「ほれ、何ていうかさ。通りを歩いてたりしたら、あるだろ?

視線が合って、瞬間的に”これは”ってのが」


「・・・」


「もうさ、あーだこーだと言葉も要らない、そういう雰囲気の───」


「・・・」


「おーい?セルディオル?」


「・・・」


「おーい!?」


「・・・・・・」



「結構長い付き合いだけどよ。お前が怒ったの、初めて見たわ」


「怒ってないさ」


「いや、怒ってるだろー」


「怒ってないさ」


「とにかく───お前にその手の経験が無いのは、分かった」


「ああ」


「『もうちょっとで、いいカンジに』、っていう所までは?」


「無いよ。まったく無いね」


「うーーん。そりゃあ、何とかしなきゃいけねぇなー」


「別にいいんだよ。

未経験でも、仕事や天使として生きてゆくのに問題は無い」


「でもよー、興味があるんだろー?」


「・・・それは、まあね」


「───よし。こうなったら、とっておきのヤツだ。

『とびきりイイ所』を教えてやるから、行ってこい!」


「え?・・・まっ、待ってくれ!そんな、急に!」


「俺がよく利用してる所だから、大丈夫さ!

今、紹介状を書いてやるから!

これ持って速攻、行ってこい!」


「いや、その!・・・紹介状って、君は一緒に来てくれないのかい!?」


「今回は行かない!

こういうのはな、自分だけで乗り切って、まずは自信を付けるモンなんだよ!」


「しかし!」


「いいから!

ほれ、入り口ですぐに紹介状(こいつ)を渡せ!

そんで後はもう、相手に任せりゃいいからさ!

ええと、ちょっとばかり離れてるけどよー、住所は───」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ