181話 午後の秘め事 05
「って事は、あんた達。その『試験』とやらに受かったわけ?」
「おうよ!」
「当然だぜ!」
「ふーーん。
人間のというか日本で言えば、難しさは東大や国家公務員総合職くらいかー」
「だが、自慢するようなモンでもねぇぞ」
「本気でやりゃ、大抵のヤツが出来るだろ」
「おー。言うわねー」
「だってよぉ。ああいうテストは、たった1つの能力だけで解決出来るからなぁ」
「そうだぜ。『記憶力』さえありゃ、9割以上が叩き出せるよなぁ」
「正確には、一字一句を順番通りに刻み付ける『焼き付け記憶』と。
条件によって変動させる『パターン記憶』の2種類ね」
「そうそう!カオルもオレら側のタイプだから、もう分かってると思うけどよ」
「これって、『試験』もしくは『書類仕事』以外じゃ、通用しないからな」
「確かに、そうね。
『魔法』をやるようになってから、嫌というほど味わってる。
この世で才能と呼ばれるべきものは、記憶力じゃなく、発想力。
独創性も適応力も、根本は『発想』なのよねー」
「オレらがマギル様の下でやってる『仕事』も、そうなんだよ」
「やりがいを感じるわけだ、ビンビンと!」
「『仕事』自体の難易度に加えて、7割の調整もあるしな!」
「そこは自己都合でしょうが。
けど、充実はしてるわね、あたし達」
「「おうよ!」」
久し振りのピザというか、チーズにお腹が満たされて。
心のほうも小躍りして喜んでいる。
大学へ行った日の昼食は学食だし、それ以外はセンセの手料理だ。
普段から外食しない分、たまにはこういうガツンとしたのを食べるのも悪くない。
ブレイクとエイクは、明らかに食べ過ぎだけど。
特に、ビール。
それだけ飲んで、まだ入るの?
アルコール度数は無視するにしても、容積的に何処へ格納されてるのか気になる。
気になるが。
・・・そろそろ、切り出さないといけない。
魔法について、議論した。
お互いの境遇も語り合った。
この雰囲気は、悪くない。
加えて、あちらはお酒が入っている。
悪魔だから、正体を無くすほど泥酔はしないだろうけど。
敢えてビールを注文するくらいだがら、多少の酩酊は感じるんだろう、多分。
やるなら・・・今だ。
今こそが、好機。
「あーー、そういえばさ。ちょっと頼みたい事があるんだけど」
「おう、どうしたカオル?」
「ピザ足りなかったか?」
「いや、足りてるから大丈夫。
そうじゃなくて、さ。
・・・マギル講師の・・・写真とか、ない?」
「「──────」」
無言で。
ブレイク達が、顔を見合わせた。
やばい。
マズった。
急ぎすぎた。
直球すぎた。
羞恥に、自分の顔が熱くなってゆくのを感じる。
やっちゃったよ!
どうしよう、これ!?
「・・・あ、いや・・・今の無しで・・・忘れて」
「オレらは、マギル様の懐刀」
「絶対の忠誠を誓ってる」
「『死んで来い』が命令なら、速攻で死ぬし」
「『殺して来い』なら、自分の肉体が一欠片になるまで力を尽くす」
「・・・・・・」
「だがよ」
「そんなオレらだが」
「「───指先まで溢れた、『忠誠心』のあまりに。
うっかり、カメラアプリを起動させちまう事もある」」
「お兄ちゃん'sッ!!!」
「HAHAHA!!!妹よッ!!!」




