179話 午後の秘め事 03
「───カフェオレの、カフェと俺とは友達でッ!!」 バッ!
「───Hotに冷えたぜ、上空はColdッ!!」 バッ!
「───ポイント貯めたら、無駄買いしッ!!」 バッ!
「───何は無くとも、出前呼ぶッ!!」 バッ!
「───智将・ブレイキンッ!!」 バッ!
「───智将・エイグラムッ!!」 バッ!
「───我ら2名、マギル様の懐刀ッ!!」 バッ!
「───よく食べよく寝て、Over Kill!!」 バッ!
「「ハジメマシテ!!イラッシャイマセー!!」」 ババッ!
あたしの部屋のド真ん中で。
謎のポーズをキメて静止する、悪魔2体。
彼等は期待に満ちた目で、こちらを伺っている。
間違い無く、リアクションを求めている。
・・・何なのよ、このレゲェメン共は!?
・・・何で、こんな暑苦しい馬鹿が来るの!?
「・・・はじめまして、いらっしゃいませ」
「「ハジメマシテ!!イラッシャイマセー!!」」 ババッ!
いやそれ、もういいから!
イチイチやらないと、死ぬ病気なの!?
「あのさ・・・マギル講師の『お使い』で来たんだろうけど。
あんたら、いきなり何やってくれてんの?」
「「んん?」」
ドレッドヘアの悪魔達が、揃って首を傾げた。
「───まさか、アレか?さっきの」
「───壊しちゃいけねぇやつだったか?」
「問答無用に破壊していい物って、この世にそうそう無いと思うんだけど?」
「HAHAHA!それもそうだな!」
「いい事言うねェ、お嬢ちゃん!」
いや、少しも笑うトコじゃないし。
上手い事も言ってないし。
「こいつぁ、うっかりしてたぜ!」
「うっかりついでに、直しといたぜ!」
「・・・は?」
直した?
過去形??
・・・ホントだ・・・修復されてる・・・。
それも、『生体認証』の部分まで。
ああ、うん。
凄いんだけどね、それやられちゃうとさ。
セキュリティとしてはもう、信頼出来ないし。
このシステム、1から作り直しだよ・・・。
「Hey Hey!どうした、テンション低いぜ?」
「ピクルスが歯に挟まったか、お嬢ちゃん?」
急にそんなの、挟まらないから!
あんたらのせいで、頭が痛いだけだから!
「その『お嬢ちゃん』ていうの、やめてくれる?
あたしは、仁生 薫」
「OK!カオルちゃんな!」
「ピクルスが歯に挟まったか、カオルちゃん?」
「『ちゃん』は無しで」
はあ、と自分でも驚くほど大きな溜息が出た。
こんなデカくて五月蝿い奴等に、いつまでも構ってる暇は無い。
マギル講師が来ないなら、コーヒーもお菓子も出さなくていい。
プリンターの排紙トレイから、印刷済みとなった用紙を掴み。
一応は揃えてから、レゲェ達に差し出した。
「はい、これね。
じゃあ、名乗ったばかりで悪いんだけど、速やかにお帰りください」
「了解!アディオス、アミーゴ!、って言いたいところだが!」
「そうもいかねぇ、世間の無情!」
「帰って」
「1個ブッ壊して、1個戻して、プラスマイナスゼロだろ?」
「ブツを受け取ってこのまま帰還したら、任務終了だろ?」
「それだと、かなり出来過ぎなんだよ」
「こんな単純な仕事じゃあ、7割にならねェんだよ」
「なあ、どうするブラザー?」
「何枚か捨てようぜ。それか、燃やしちまおう」
「ちゃんと渡してよ!!大事な物なんだから!!」
「いやあ、すまねぇな!運が悪かったと諦めてくれ!」
「7割にしねぇと俺達ぁ、生きてる意味が無ぇんだ!」
「・・・何よ、その『7割』って」
「詳しくは説明出来ないが、企業秘密だ!」
「つーか、世界の真理だ!」
「・・・・・・」
「という訳で、破壊活動の時間だぜ!」
「タバスコでもブッ掛けて、読めなくしちまうか?」
「オイオイ!───たまたま持ってるぜ、タバスコ!」
「ヒューーーッ!!偶然だが、俺も持ってたぜ!」
「・・・もしかして、あんたらさ。
マギル講師に叱ってほしくて、7割しか仕事しないとか?」
レゲェ'sが、固まった。
それから、少し間を置いて、こちらへ首を回す。
マンガでよくあるみたいに、ギギギ、と音がするようなアレ。
「「・・・何で、分かったんだ?」」
「まあ、直感的に。
あたしも、そーゆートコあるし」
「「!?」」
「マギル講師、いいよねー」
部屋の隅にコソコソと寄って、背を向ける悪魔達。
「・・・ヤベェぞ、ブラザー・・・」
「・・・あいつ、相当なHENTAIだぜ・・・」
「聴こえてるし!!ヘンタイってゆーな!!
同類でしょーがッ!!」




