表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
175/738

173話 愛ゆえに 06



木立を()り抜け、茂みを踏み分け。

道無き斜面を(くだ)ってゆく。


ただし、真っ直ぐではなく、なだらかに左へと廻りながらだ。

多分、(ふもと)の小屋からの増援を避ける為か?


正直、僕の方向感覚はあまりよろしくない。

撤退コースはもう、完全にシンイチロー任せだ。



・・・銃声は、あれから全く聞こえてこない。


追手が2人だけって事はないだろうが、これは『()いた』と見るべきか?

おっさん、ゆっくり歩きながら鼻歌で、余裕な感じだしな。



「シン、『回収班』の待機地点まで、どれくらいかかる?」


「あと30分くらいで、山から抜けるよ。

そこから更に1時間、かなぁ。かなり大回りするからね」


「・・・1時間半・・・」




まだそんなに歩かなきゃいけないのか。

もう、うんざりする気力も残ってないぞ。


何だか色々考えてしまって、頭痛がするし。


あんたのせいだぞ、おっさん!




「マーカス。さっきの話の、続きというか。

それにも関係してる事なんだけどさ」


「ああ」


「この『真実の聖杯』───『回収班』に渡すの、やめない?」


「・・・は?」


「ちょっと、危険だと思うんだよねぇ。人心支配(マインドコントロール)なんて」


「そりゃあ、危険だからヴァチカンで保管するんだろ」


「ヴァチカンなら、絶対に安全なのかい?」


「僕らの仕事は、それを考えることじゃないだろ。

任務の完全遂行こそが、使命だぞ」


「そうだね。

私も、『神より(うけたまわ)った任務』なら、そうするよ」



おい。

また、ショーチューを!


やめろよ、本当に!

アル中かよ、おっさん!



「君はさ、『神』を信仰するあまり、ヴァチカンまで信じちゃってるの?」


「組織なんだから、そういうものだろ!」


「あそこにいる連中だって、ただの人間さ。

そして人間である以上、『欲』もあるし、悪い奴だっているよ。

私からしたら、カルトが所持してようと、ヴァチカンが保管してようと同じだね。

そもそもこんな『聖杯』なんて、無いほうがいいと思うなぁ」


「シンイチロー」



脚を止めて、一声。



「うん?」



おっさんも立ち止まり。

自然と、向かい合う形になる。


狂相の僕と、飲んだくれの中年男。

第三者から見れば、相当に絵にならないシチュエーションだろう。


だが、言いたい事は言わせてもらう。


さっきの仕返しじゃあないが、僕にも僕の信仰(考え)がある。

それがあんたに認められなくても、構わない。

そんな必要も無い。





───ただ、最悪の場合。


───殺してでも、止めなければならない。



シンに勝てるのか?

逃げられたら、追いつけるのか?



出来る、出来ないを考えるより先に。

《障害》となれば同僚さえ排除しなければならないのが、『特務』なのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ