159話 強き者の再起 01
【強き者の再起】
”───聴こえているかしら、アルヴァレスト?”
”───実は今、少し困った事になっているのよ”
”───目が覚めたら、電気や水道が止まっていて。
屋敷の中にあった大体の物が、綺麗さっぱり無くなっているのだけれど”
”───とりあえず、私はどうしたら良いかしら?”
『緊急通信』はその名の通り、緊急事態用。
『直接私信』よりも遠距離から、秘匿性の高い会話を行う為のものだ。
俺が登録しているのは、姉貴、プレイギル、そしてマギル。
その他も、かなり親しい間柄に限定している。
そして。
唐突に緊急通信でおかしな事を言ってきたのは、昔馴染み。
色々と縁のある、その・・・まあ、とにかく、あれだ。
”・・・事情は、後で聞こう。とにかく、そっちへ向かうぜ”
何となくだが雰囲気的に、『緊急性は高くない』と判断。
ちなみに、『緊急性が無い』とまでは言わない。
言わないが、ちょっと寄り道する時間くらいはあるだろう。
近くのスーパーマーケットで、多めに買い込んで行くか。
残念ながら本日の昼寝は、30分で終了だ。
横になっていたソファから起き上がり、スーツの上着に袖を通す。
「マギル、ちょいと出掛けて来る。
帰りは遅くなるだろうし、夕食は要らない」
「──────」
うむ。
分かるぞ。
『何か言いたい』ことを分かれよ、ということを言いたげな。
そういう表情だな。
「古い知り合いだよ・・・怒らせたら、姉貴の次くらいに怖いんだ」
「───そうなると、『彼女』の顔しか浮かびませんね」
よし。
分かってくれたようだ。
かなり、嫌そうだが。




