136話 再会Ⅱ 03
「ミリアン。今、実弾入りの銃はあるか」
「あったら、どうするんですぅ?」
「同郷のよしみで、貸してくれ。そして、僕はお前に何も訊かない。
だから、お前も僕に何も訊くな」
「───」
「銃を」
「はいはい、分かりましたよぉ───ほいっ」
後退しながらミリアンが、こちらに放って・・・え??
何だ、これ??
「どうぞ、『催涙グレネード』ぉ!」
「ぶへッッ!!げえッふぉ!!げえッ!!」
「訓練用のヤツなんで、威力弱々ですけどぉ!」
「げえッふぉ!!げえッふぉ!!」
「モロに吸っちゃあ、駄目ですからねぇ?」
「ぶえッっぐ!!へげえッほ!!」
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「死ぬかと思った」
「ガスグレで死ぬヤツなんて、いませんよぉ」
「死ぬかと思った」
「いやあ、『自決する気マンマン』な顔してたんで、雰囲気変えようとぉ」
手渡されたスポーツドリンクのボトルに、口を付ける。
10秒で、半分以上を流し込んだ。
「ネタバラシするとですねぇ。
教えてくれたのは、リスヴェン枢機卿なんですよぉ!げひひひ!」
「・・・あのハゲがッ!!何で率先して、機密漏洩してるんだよ!?」
「そりゃあ、あたしに言っておかないと、マズイからでしょぉ」
「マズイ、って何が!?」
「だって、何も知らされてなかったら、あたし。
先輩の事、ブチ殺してXXXして解体してますよぉ?」
「・・・え・・・?」
「ヴァチカン勤めになったもんで、『異教徒』ってだけじゃあ殺しませんけどぉ。
『邪教徒』や、それっぽいのは、問答無用で殺りますからねぇ!」
「・・・・・・」
「先輩の情報、かなり初期の段階で、あたしのトコに来てるんでぇ。
おかげで先輩の事、殺さずに済みましたぁ。
お互い、リスヴェン枢機卿に感謝しないとぉ!」
「・・・ええと・・・何というか」
「はいぃ?」
「僕は・・・思っていた以上に、ギリギリの所で生存してるんだな」
「やっと気付きましたかぁ。
そもそも『特務』ってだけで、死亡率がバカ高いですからねぇ。
秘匿部隊員でさえ、年間5人の殉職者は出ませんよぉ」
「おい、具体的な数字を上げるなよ!」
「『それを知っても降りられない人』には、言ってもいいんですよぉ!」
彼女は心底、楽しそうに。
血走った眼で歯を剥き、笑っていた。




