124話 新時代の古式遊戯 08
再度突入して来る騎馬を、ある程度引きつけておいて。
俺は身体を捻り、尾を旋回させる。
地を擦りながらの、薙ぎ払い。
大質量に物を言わせた、致死攻撃。
───さあ、どうする。
───避けなきゃ、『痛い』どころじゃあ済まねぇぞ?
黒馬の軌道が、瞬時に変わった。
回転方向に合わせて、背を向ける形で曲がる。
速度の出ている尾の先端ではなく、付け根側にコースを取っている。
しかも、俺の噛み付きを警戒した、絶妙な距離感。
───もう、間違いない。
───こいつ、超一流の軍馬だ。
この現代に、本物の竜と正対して。
これ程まで動ける馬が、世界に何頭いるだろうか。
手綱を握ってるだけで、碌に指示も出せない『騎士』を乗せて。
俺の挙動から素早く判断し、動きを変えている。
1回の突撃で1回、必ず騎士の利き手が向くように。
踏み付けがし難いよう、前脚と後ろ脚の間に一瞬だけ喰い込むように。
せっかく作った攻撃タイミングを、騎士が何度外そうと。
腐ることなく、焦ることなく、自らの職務を正確にこなし続けている。
《もしも、この馬に『本物の騎士』が乗っていたら》。
───背筋に、寒気が走った。
世界最高峰の軍馬と、竜殺し。
この2つしか揃わなくて、俺は幸運だったのかもしれない。
───もはや、手加減は無しだ。
───味わって貰おうか。
───灼熱の、竜息を!




