122話 新時代の古式遊戯 06
馬上の騎士が、ゲートを潜り抜けてきた。
銀色に輝く、全身鎧。
その肩は国旗と同じ色で塗られ、胸部には獅子のレリーフ。
些か現代調な装飾が加えられては、いるが。
ベースはかなり古い、『時代物』だ。
そして。
手にしている『槍』は───
”騎士よ───よくぞ、ここまで辿り着いたな”
辿り着いたも何も、ゲート1発だが。
一応、しきたりに則って、重々しい言い回しにしておく。
ひえっ、と情けない声を上げる騎士。
『ド、ドド、ドラゴンだ!』とか、『喋った!』とか。
肝がすわってねぇな。
こいつ、大丈夫か?
御大層なのは、格好だけか?
”───おい。何か言え”
「・・・は・・・はいぃ?」
”お前は何の為に、ここへ来た?ハッキリと言え”
「え・・・あの・・・」
「きゃあああ!!騎士様、どうかお助けを!!」
おお!
姫様、ナイスフォロー!!
100点満点の悲鳴だ!
宙に浮いた格子の鉄籠。
それを見てようやく、騎士も己の本分を思い出したようだ。
「お、王女を返せ・・・いや、あの・・・返してください・・・」
”腹の底から、声を出せ!!”
「王女を返してくださいっ!!」
”よし!!───だが、『返せ』と言われて、返す竜などいないッ!!”
「・・・ええぇ・・・」
”この世は、力こそ全て!!返してほしくば、俺を倒してみせろ!!”
「そんな・・・無茶な・・・」
”まずは、名乗りを上げろ!!貴様の名は!?”
「え?ええと・・・オレは・・・ロバート」
”もっと、カッコ良く言え!!”
「・・・わ、我は、サースティン家嫡男!
王室騎士、ロバート・サースティン Jr.!!」
"俺は、殲滅の黒竜!!ヴァレスト・ディル・ブランフォール!!
・・・やべ、言っちまった!
まあ、いい!!───いざ、勝負ッ!!"
「ちょっ!ちょっと待って!!勝負は、待って!!」
”いくぞッ!!うらああぁぁッ!!”
現代にも、騎士がいる。
俺にはそれだけで、十分だったし。
実のところ、それほど期待もしていなかった。
だが、いざ蓋を開けてみたら。
本物の、『竜殺し』を持って来やがった!
こいつの祖先、マジに竜を倒してやがった!
───最高の展開だッ!!燃えてきたぜッ!!
この『決闘』は、ウェールズの山奥に中継されてる。
姉貴と、正臣さんが見てる。
ハリウッド映画くらいには、盛り上げないとなッ!!




