110話 合法的な魔法使い 01
【合法的な魔法使い】
「ただ今、戻りました」
「おう、マギル。やっと帰ってきたか。お疲れさん」
「私の居ない間、何か変わった事は?」
「んー・・・いや、特にトラブルは無しだ。
まあ、ランツェイラだけに食事関係を任せるのも気が引けるんでな。
配膳と皿洗いは、男連中でやったぜ」
「普段からも、そうしていただければ」
「・・・善処する。それで、3日間の『ギルバート強化合宿』とやらは、どうだった?」
「ええ───日本の飛騨山脈には、多くの猿達が生息しているのですが」
「・・・うん??」
「その中に、某大学の研究チームからコサブローと命名された、一匹がいます」
「・・・おう」
「コサブローは一応、ボス猿です。しかし彼の率いる一団は、8つある群れの中で最弱」
「・・・」
「そこで、ギルバートにコサブローと配下達へ、『支援魔法』を掛けさせました。
当然、様々なタイミングで私がそれを打ち消し、『悪化魔法』を付けるわけですが」
「・・・どうして、そんな発想になる・・・」
「紆余曲折を経て、コサブローは。北アルプスの猿達の頂点に立ちました」
「・・・」
「勿論、生き物相手の演習ですから、『抗争』程度の被害で収まるよう努めました。
魔法の効果が切れた今、コサブローはまた、『最弱のボス猿』です」
「・・・呆然としてるだろうな。”全部、夢だったのか”、って」
「『夏の夜の夢』ですね」
「綺麗に纏めやがったな。猿達の怪我は?」
「回復させました。全て元通り、と言いたいところですが───1つだけ、問題が」
「どうした」
「コサブローの『対石化能力』が、かなり上昇しました」
「『対石化』って、おい・・・猿が??」
「ええ、石蜥蜴に遭遇した際には、重宝するでしょう」
「・・・日本に石蜥蜴、いるのかよ?」
「さあ───どうでしょう」
・
・
・
・
・
・
・
「ところでさ・・・明後日の、お前が開催してる『魔法講座』。
あれに1枠、捩じ込めねぇかな?」
「すでに満席ですよ」
「分かってる。毎回そうだからな。だが、そこを何とか!」
「───特別聴講、という形を取れなくはないですが。
受講は『完全抽選制』ですから、他の受講生の手前、好ましくないですね」
「頼むよ、マギル!」
「まあ───今回だけなら、いいでしょう。
ただ、その受講希望者は何故、私ではなくボスにこの話を持ってきたんです?」
「あーー。説明すると、少し長くなるんだが、」
「誰です?」
「カオルっていう娘が、」
「いつ知り合ったんです?」
「・・・分かった、分かった!ちゃんと話すからよ!
そんな表情するなって!」




