二人きりの年末年始
「栄汰〜。紅白始まるよ!」
「ちょっと待ってくれー」
今日は年越し。
僕らが同居をはじめて7ヶ月と少し。
「今年は大変だったなぁー」
「何が?」
「たとえばストーカーされたり突然同居人ができたり…」
「なんで全部私なのよ!」
でも結夏と出会ってからは僕の毎日がとても楽しくなった。
恋愛感情はないが、もう彼女は僕にとって簡単には手放せないものになっていた。
「ねぇ、年越し蕎麦いつ食べる?」
「もう夜食でもいんじゃないのか?」
「そだね。じゃあ作ってくるね」
天野家では毎年蕎麦屋に行って年越し蕎麦を食べていたので家蕎麦は楽しみだ。
そーいえば結夏料理作るの上手くなったなー。
そんなことを考えていたら、
「できたよー」
出てきたのは蕎麦の上にかき揚げがのったシンプルなものだった。
でも食べてみると、
「美味しい!つゆにだしが効いてる」
「うん。栄汰のお母さんからの仕送りに高そうなの入ってたから使ったの」
僕の仕送りを勝手に開けて使っていただと…。
まぁそれはいいとし、
「蕎麦美味しいか?」
「うん!とっても美味しい」
二人でスーパーに行って20分蕎麦を選ぶのに悩みまくった甲斐があった。
「あ!去年もこの人紅白出てたよね!」
「そーだったっけ?」
「なんで覚えてないのよォ」
今年の年越しはいつになく楽しいものだった。
朝起きて階段まで行くと下の階からいい匂いがする。
リビングのドアを開けると、
「あけましておめでとう。栄汰」
「おはよう。結夏」
「お雑煮作ったから食べよ」
朝起きて下に降りると超美少女が朝食を作ってくれている。
なんて幸せなんだ。
そんなもう当たり前のようなことを考えながら雑煮を結夏と食べていると、
〈ピンポーン|《インターホンの音》〉
「誰だろ…」
「僕が出てくる」
玄関に向かい扉を開くとそこには幼馴染で仲のいい七海陽葵が立っていた。
「えーくん!あけおめ〜。お邪魔するねー」
「いやッ!、今はちょいとダメ…」
と言ったものの陽葵は無理やり僕の横スペースを通り抜けリビングへと走る。
僕もそれを追いかけ走った。
「クンクン。女の匂い、強い」
「な、なわけないだろッ」
もうダメだと思っていたのだが、誰かが入ってきたことに気づいた結夏が咄嗟に隠れてくれたらしく結夏の姿は見えない。
「ほら、いるわけないだろ」
「そんなはずは…」
ブー|《着信音》
「ん?」
まずい。ウォークインクローゼットの方から着信音がッ!。
「えーくん。クローゼットのあたりから着信音しなかった?」
「き、キノセイじゃないかな…」
「ま、待て!」
陽葵がクローゼットの方へ行き扉をあけると、
「あれ?。誰もいないや」
「え?。あ、あぁ当たり前だろ…」
な、なんで居ない?
あそこにはダンボールや本が大量にあって隠れる場所もほとんどないはず…。
手品でも習っていたのか!?
そんなこんなで陽葵は30分ほどダラダラしてから帰った。
帰り際に、「浮気なんかしたら許さないぞ(ハートマーク)と言って陽葵は帰っていった。
僕はリビングに戻りクローゼットを開けた。
「おそい」
そこには今までに見たことがないぐらいに睨みを効かせた美少女が体育座りをしていた。
「ほんとにごめん。またケーキか何か買って償うから許してくれ…」
「わたしはそんな安い女じゃないわ」
お嬢め、やはりそんな物では無理だったか。
「じゃあ、私のいうこと1つ絶対にきくってのは?」
「こわ…。まぁ優しいヤツなら」
「交渉成立ね」
まんまと口車にのせられたと後で後悔する栄汰だった。
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