引きこもり太郎、スパルタ式ヨットスクールへ行く!
色々と詰め込んだら長くなっちゃった!
今回はかなりシュールです。我ながらひどい……。
むかしむかしあるところに、お人好しだけど長いことセックスレスのお爺さんとお婆さんが暮らしておりました。
いつものようにお爺さんは畑へ農作業に、お婆さんは川へ一服しにいきます。
お婆さんがいつものようにハッパを吸っていると川上から大きな桃がどんぶらこ~どんぶらこ~と流れてきました。
驚いたお婆さんは桃を重機で吊り上げると家に持ち帰り包丁で真っ二つにしようとしましたが、桃は意外にも固く、刃が通りません。
材木伐採用のチェーンソーを使ってみても、高濃度の硫酸をぶっかけても、地上1000メートルから落としても、桃は「ぎゃっ!」「熱っ!」「アホか!」と妙なリアクションをするばかりで一向に割れません。
二人が困り果てていると桃の中からかすかに声が聞こえてきます。
「飯」
なんと、桃の中に誰かがいるようなのです。
「飯」
しきりに小声で食事を要求してくる声に応え、お婆さんは握り飯を作って桃の前に置いてみました。しかし桃は何の反応も示しません。
「ややっ、これはもしかするとワシらが見ているから恥ずかしくて出てこられんのかもしれんぞ」
「んだんだ、離れてみてみるっぺ」
二人は家から出て、しばらく時間を潰してから戻ってみることにしました。
するとどうでしょう、3つ置いておいた握り飯は全て無くなっており、桃の中から「クチャッ、クチャッ、クチャッ……」という咀嚼音が聞こえてくるではありませんか。
「よし、この子を引きこもり太郎と名付けよう」
こうして引きこもり太郎と命名された男子は一度も顔を見せることなくすくすくと成長し、穀潰し生活を続けておりました。そんなある日……。
「婆さんや、そろそろうちも貧しくなってきたのぉ」
「んだ、ヒッキーもそろそろ外へ出て働いてはくれんかのぅ?」
桃に呼び掛けてみても返事はありません。
「困った。何とかして引きこもり太郎を外へ出す方法は無いものかの……」
「んだ、このままじゃあベトナムから来た技能実習生のグェンのお給料を下げるしかないっぺなぁ」
「かわいそうなことじゃが月給は今の10万円から8万円に引き下げて寮費も別途請求するしかないのぉ……」
「んだ、ヒッキーさえ真面目に働いてくれたらグェンにももう少しいい生活をさせてあげられるんだっぺがに……」
人のいいお爺さんとお婆さんはグェンのことをとても心配していました。引きこもり太郎を何とかして外へ出して働かせる方法をああでもないこうでもないと相談しあいます。
「爺さんや、もうこうなったらあの人達に頼んだらどうじゃ?」
「あの人達ってまさか……鬼ヶ島の?」
「んだ」
「仕方あるめぇ。あの人達に任せるとするかのぉ」
それから数日後……。
「ごめんください、元気ですかーっ!!!」
大声と共に玄関を張り手で破壊して赤ら顔の鬼が訪ねてきました。
「どうも、鬼ヶ島の方から来ました、鬼塚ヨットスクールの校長、鬼塚です」
意外にも丁寧にお辞儀し、鬼はそう名乗りました。
「やぁ、これはこれは鬼塚さん。うちの引きこもり太郎が桃に引きこもって出てこんのじゃが、何とかならんじゃろうか」
「んだ、このままじゃあ技能実習生のグェンの月給を7万まで減らして食費も別途請求せにゃあならんよってに」
「何ーっ! 引きこもりですとっ!!? 分かりました、私がこの穀潰しの玉無しヘナチン野郎を必ずや一人前の男にして見せますよ!!! ダァーッ!!!」
桃にラリアットを見舞ってから、鬼塚校長は屈強なボディーガード鬼達と一緒に桃をトラックへ載せてしまいました。
「元気があれば何でも出来る!!! では後のことは我々にお任せを!!! コッテリネットリ扱き倒してやりますよ!!!!!!」
ブオォーンとトラックが走り去った後で、お爺さんとお婆さんは一安心。
「これできっと、引きこもり太郎も立派な青年になって戻ってきてくれるじゃろう」
「んだんだ、グェンのお給料を6万円まで引き下げずに済みそうですじゃ」
それから数か月後……。
「爺さんや、グェンが逃げ出してからもう二か月くらい経ちますのぉ」
「おや婆さん、もうそんなにかいなぁ。さすがに月給を5万円まで引き下げたのはかわいそうじゃったが、ワシらにも生活があるでなぁ」
お爺さんは質素な本マグロの刺身を食べながら残念そうに肩を落とします。
「新しい技能時習性のグェンとグァンはまだ続きそうで何よりじゃが、一人6万ずつ払っておったらワシらも懐が苦しいわぃ……」
「そういえば……ほれ、なんといったかな、ヨットスクールに追い出したあの、なんとか太郎はいつ戻ってくるんじゃろうか?」
ここでお婆さんは引きこもり太郎のことを思い出しました。
「あぁ、おったのぉ、そんなやつも。元気にしとるんじゃろうか?」
と、その時。
「ただいまー!」
玄関のすだれをくぐって、浅黒い筋肉質な肌にレスラーパンツ一丁の姿の好青年が現れました。
「むむっ、どなたかな? 技能実習生?」
「オッス! オラ、引きこもり太郎改め、桃から生まれた桃太郎!」
「なんと! 爺さんや……ヒッキーがこんなに立派になって帰ってきましたぞえ……」
「信じられん……さすがは鬼塚ヨットスクールじゃ……ありがたやありがたや……労働力」
背中に背負った大きな風呂敷をドサッと下ろして、桃太郎は白い歯を見せて笑います。
「ジジイ! ババア! これからまた世話になるぜ!」
改心し、頼もしい若者になった桃太郎。お爺さんとお婆さんはうっすらと涙ぐんでいます。
「ところでヒッキー、その大きな風呂敷はなんじゃ?」
「へへっ……俺ともあろう男がこんな罠にホイホイ引っかかって桃から抜け出しちまうとはな」
そう言ってはにかんだ笑みを浮かべつつ、桃太郎は風呂敷を解きました。すると中から……。
「エロ本だよ」
人妻! 熟女! 熟れ熟れ! 四十路! 五十路! 六十路!
刺激的な惹句が並ぶエッチな雑誌が転がり出てきました。
そうです、桃太郎は鬼塚校長のハニートラップ(?)に引っかかりまんまと桃から引きずり出されてしまったのです。
「婆さんや……これは……!」
「爺さんっ」
桃太郎が一人前の男になって帰ってきた夜、お爺さんとお婆さんも久しぶりに男と女になって楽しんだのでした。
おしまい。
本気で童話ジャンル日間1位を狙っているので、これを読んで真実の愛に目覚めた方やベトナム人技能実習生の実態を知って憤った方は是非ともこのページ下部にあるアレをアレしてください!!!
よろしくお願いします!!!!!!! 僕は今からラーメン喰ってきます!!!!!!!!!