表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

神様のおくりもの

作者: 作・かっぱ 編・うげ


 ぼくには名前がありませんでした。


 気づくとぼくは真っ白い光の中にいたのです。


「ここはどこだろう? それにどうして名前がないのだろう?」


 ぼくは名前をさがして旅に出ることにしました。


 あるひ、とおくからおとがきこえました。


 たん。


 たんっ。


 と、だんだんとちかづくにつれ、おとはおおきくなります。


「こんにちは。これはなんのおとですか?」


「やあ、こんにちは。これはわたしがたたかれているおとだよ」


「なぜたたかれているのですか?」


「なぜって


 そりゃあ


 やくわりだからにきまっているだろう」


 はなしているあいだにも、たんっ、たんっ、とおとはひびきます。


「いたくはないのですか?」


「だいじょうぶさ。それにやりがいもあるからね」


 ぼくにはやりがいがなにかがわかりません。


「ところで、ぼくのなまえをしりませんか?」


「うーん、わからないなあ。ほかをあたってみなよ」


「そうですか」


「きっとみつかるよ」


 そのこえにおくられて、ぼくはつぎへとたびだちました。


 こんどは、たくさんのすがたがみえました。


「すみません。どなたかぼくのなまえをしりませんか?」


「しっているやついるかー?」


「しらなーい」


「さあ」


「しってる?」


「ううん、しらない」


「さっぱりだ」


 みんなくちぐちにそういいました。


「わるいね。みんなしらないみたいだ」


 そのなかからだいひょうしていいました。


「いえ、またほかにきいてみます。みなさんはかぞくなんですか?」


 ぼくはきになってきいてみました。


「ああ、そうだよ。ぜんぶでじゅうにだ」


 ぼくはびっくりしました。


「おおいですね。それではやくわりもたいへんでしょう?」


「いいや、みんなやくわりはほとんどないよ」


 ぼくはさらにびっくりしてききます。


「なぜですか?」


「そら、しらないよ。でもみんなひつようとされているからいるのさ」


 ぼくもひつようとされているのかふあんになりました。


「やくわりもさがしてるのかい」


「そうだとおもいます」


「ふーん、まあがんばりな」


 ぼくはそこをあとにしました。


 ぼくはあてもなくさがしあるいていると、はなしかけてくるこえがきこえました。


「おうおう。なにしているんだ、こんなところで?」


「こ、こんにちは。ぼくはなまえをさがしているのです」


「なまえだって!? なまえなんてどうでもいいじゃないか!」


「なぜそうおもうのですか?」


「おれはなあ、なまえをいくどまちがえられてきたことか。そのかなしみがわかるか?」


「さ、さあ。なにせなまえがないものですから」


「む、そうだったな。だがおれはな、さいきんはなまえなんてどうでもよくなったんだ」


「そうなのですか」


「ああ。やくわりをこなすのがいちばんだとおもったのさ」


「なまえがないぼくにもやくわりがあるでしょうか?」


「もちろんあるさ。おまえがうまれてきたからにはな」


 そうはげまされて、ふたたびたびにもどりました。


 しかし、もうどこにいけばよいのかわかりません。


「ぼくのなまえもやくわりもどこにあるのだろう」


 ぼくはかなしくなりました。


 すると、いままでいちばんおおきく、あたたかいこえがそらからきこえました。


「やっと見つけたよ」


「あなたは、ぼくを知っているのですか?」


 その声はぼくの声が聞こえていないようでした。


 けれども、ぼくの言葉にこたえるように言いました。


「君がいなくては、読みづらくてかなわないな。これでやっとみんなにとどけられる」


 それっきり声は聞こえなくなりました。


 それでも、ぼくはひつようとされていることを知ってうれしくなりました。


 けっきょく、ぼくの名前はわからないままでした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 感想欄を読んで成る程ー、となった私です。
2023/04/30 12:04 退会済み
管理
[一言] こんにちは。 真っ白な光は、文章作成ページのことかなと思いながら拝読いたしました。 たんたんと叩かれているのはキーボードのEnterキー、役割がほとんどないのは「Q」、「X」、「L」などの…
[一言] 私も、ぼくの名前はわからないままでした。 何の世界のお話なのか、最後まで特定できなかったんですよね。残念です。 12って数字が出てきているので、一年か時計か、どちらかに関連する何かだと思う…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ