9、爆発の影響
竜達が安全と思う場所はここ、竜騎士の訓練場。
既に次期長官を運んだ子供の竜は翼を舐めて親の竜の到着を待っていた。
親の竜が訓練場に到着し、直ぐに騎士達に伝える。
「飛べる者は直ぐに王宮へ!ハン隊長が天井の下敷きになった!他にもケガ人はいるだろう!」
「他の者は地上部隊、海上部隊に救援要請!」
「アン!!その竜に革紐を急いで着けろ、私が飛ぶ!!」
騎士達は状況を素早く飲み込み行動に移す。
『え~僕もう疲れちゃった~』
「、、、私の為に、もう少し頑張って、、、」
泣きそうな私の顔を見た子供の竜は、
『僕ね、ロールって言うんだって。』
「ロール、、、いい名前だね。」
「たっ、隊長!そんなに竜に近づいては危険です!」
アンが恐怖で中々革紐を付けられずにいる。
「この子は大丈夫だから、早く!」
「はっ、はい!」
数分後私はロールの背に立ちハンの元へ向かっていた。
ハン!ハン!
官房長官の部屋へは内部からの侵入が困難なようで様子は先ほどのままだった。
先に飛び出した騎士達も竜が大きすぎて侵入出来ずに上空を飛んでいた。
「ロール、振動を起こさないようにゆっくり入るよ!」
『むずかしいよぉ』
「私をまず室内に降ろして、それからゆっくり入るの。」
指示通りにロールは私を降ろす。
ハンが立っていた場所に近付く。瓦礫の中にハンの足が見える。辺りには大量の血液も見える。
「ハ、ハン!!」
私の力では瓦礫をどけることが出来ない。
『どいて、僕がその瓦礫持ち上げるから。』
ロールは更に部屋が崩れないようにそーっと瓦礫を口に挟みゆっくり持ち上げる。
ハンの全身が確認出来たが頭からも出血しており私が動かす事で危険が増すような気がしてしまう。
『大丈夫、引っ張り出して』
ロールが言う。
「ででも!」
『大丈夫だから』
ロールが瓦礫の重さに震えている。急がないとみんなが危険だ。
「ハン!今助けるよ!生きていて!」
両脇からハンを抱えだし窓側に移動させる。
上空を飛んでいた騎士を呼びハンを乗せ医療班のもとへ運ぶように頼んだ。
『待って、僕に今出来る事!』
ロールがハンに向かってキラキラした息を吹き掛けるとハンを包み込んだ。
「何をしたの?」
『応急処置だよ、さっ、僕ママの所に戻りたい。』
「ロール!ありがとう!」
ハン、頑張れ!頑張れ!
直ぐに行くから頑張れ!
ロールに乗ると訓練場に一目散に飛び立った。
「ちょっ、手加減してぇ~!」
『ははは、これでも手加減してるんだけどな。』
訓練場に着くとアンが不思議そうに竜の手入れをしていた。
「隊長!お怪我はありませんか?」
ロールは私を下ろすと直ぐ様親の竜に向かう。
「大丈夫だ、私は医療班に向かう。こいつらを頼む!」
「ですが、こいつは魔竜です!直ぐにでも処分しないと!」
バサンと親の竜が翼を広げ後ろにロールを隠すと、アンに威嚇の姿勢を取る。
「こいつ!」
アンは竜に電流を流そうとしたが、それを制止し、
「大丈夫だから!!」
早くハンの所に行きたいのに!うまく行かないのがもどかしい!
次第に他の竜達も戻ってきて騎士達が私を絶賛する。
「竜に立って飛べるなんて、隊長ぐらいです!」
「先ほどの的確な指示、これからも隊長についていきます!」
私の周りは騎士が取り囲んでしまいなかなか医療班に行ける状況ではなくなる。
ここで無理やりハンの所に行ったらミリスじゃない。ミリスそんな事しない。
「隊長!」
カロンの怒鳴り声が輪の外から聞こえる。
一気に輪が開けてカロンがずかずかとやってくる。
「どういう事ですか!卵を盗む隊長なんて今まで見たことありませんよ!」
あ~益々、ハンの所に行けなくなった、、、
「え~、其についてはですね、」
カロンを直視できずに、言葉が詰まる‼
「しかも!魔竜を連れて!!」
「え~、其れについてもですね、」
「隊長はこの国を滅ぼしたいのですか!」
カロンの怒りは収まらない。
それは当たり前の考えで、ごく稀に誕生する魔竜は力が通常の竜に比べ膨大で、魔力を備えている。しかも人間になつく事がない。
その力は国を滅ぼす程に危険であり、魔竜が誕生した時には殺してしまう決まりがあるのだ。
その決まりに反した事をカロンは怒っている。
「私達は間違っていたんだ。」
「ほら、見てごらん。あの竜は衰弱し本来なら今日死んでいたはずだ。」
皆が竜を見る。竜の目は活力がみなぎり、身体は艶がある。
「だが、どうだ?今にも死にそうか?ちがうだろう?」
「竜は卵を産む事で衰弱するが卵が孵化するとあの竜のように活力が戻るのだ。それは人間の母親と同じ原理だろう。」
私、なんか知的な人みたい!
でもそう思っちゃったから、やりたくなっちゃったからやってみたんだけど。
「子供もそんな狂暴じゃないよ、話せばわかる子だし、むしろ頭が良くて協力的だよ!」
しまった、素で話してしまった!この言い方はミリスじゃない。
騎士達がざわめきはじめたが、カロンは驚きの表情で私を見る。
「隊長は竜と話せるのですか?」
え?え?どういう事?
『僕との会話は他の騎士には聞こえてないんだ』
は?ロールを見るとしれっと親の竜との交流を楽しんでいて私と会話している様子もない。
「どうして?」
『それは君に備わっているスキルだからじゃないの?』
「スキル?」
その時脳裏に強く私を呼ぶ声がこだました。
「ぐっ!」
余りの頭痛に倒れそうになるのをこらえる。
「隊長?」
カロンが心配そうに尋ねる。
「、、、皆、ご苦労だった!今日はゆっくり休め。話しはまた明日!カロンは後程私の部屋に来るように。」
強く私をハンが呼んだ気がするから。