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──第8話 試合開始! 夢ヒーローVS悪夢獣 後編──


夢世界に生まれた体育館。

そのバレーコートにネットを挟んで対峙する4人の男女。


悪夢獣チームは、悪夢部長と悪夢副部長。

対する夢ヒーローチームは、ドリーム太郎とプリンセス華子。


今。2組による夢世界バレー頂上決戦が開幕した。




──第8話 試合開始! 夢ヒーローVS悪夢獣 前編──




バシーン


悪夢部長によるジャンピングサーブが、夢ヒーローのコートに突き刺さる。


「あーん。凄いサーブね」


「むぐぐ……おのれ」


 夢ブレスで変身することによって、俺たちの身体能力は大幅に上がっている。

 だとしても、俺もプリンセスも、バレーは体育の授業でかじった程度。


 対する悪夢獣の2匹はバレー部所属。

 放課後も休みもバレー三昧の日常なのだ。


 権道高校バレー部が全国でどの程度の実力かは知らないが、技量で素人を圧倒的に上回るのは間違いない。


バシーン


再びのドライブサーブで、すでにスコアは7-0。

悪夢獣チーム部長による7連続サービスエース。

それも触れることもできないノータッチエースである。


「うにゅー! 2人ともがんばるにゅー!」


そもそもが2人対2人の対戦。

ビーチバレーに見えるが、ここは体育館に設置されたバレー用コート。


ビーチバレー用コートに比べて広いうえ、バレー用ボールはビーチバレーに比べ速度も出る。


それを2人で守るというのだから、攻め側が有利なのも当然である。


「とにかく、なんとかサーブ権を取る。プリンセス。耳を貸せ」


「なになに?」


 悪夢部長が狙うのは毎回コートの角ギリギリ。

 広いバレーコートを目いっぱいに使ってのサーブ。

 両サイドの角へ正確に決められては拾いようがない。


 だが、毎回正確に角を狙うというのであれば──


「おっけー。分かった」


2人ともにコートの後方に位置どる。

まずはサーブを拾わない事には始まらない。


悪夢部長がジャンプすると同時。

ドリームとプリンセスが走り出す。


バシーン


強烈なジャンプサーブ放たれた。


 馬鹿の1つ覚えが!

 よほどスパイクサーブに自信があるのだろうが。

 正確に角を狙うのであれば、中央を捨て、サーブと同時にコートの角へ走れば良い。


鋭い弧を描いたボールがコートに迫り来る。

俺とは逆側。プリンセスの位置どるサイド。


「プリンセス!」


あらかじめ走り込むプリンセスが、片手を目いっぱい伸ばして飛び込みギリギリ拾える距離。


「うにょおおおおお!」


バシーン


コートに突き刺さる。寸前でボールをはじき返していた。


「ぶへっ」


勢いのまま顔面からコートに倒れ込むプリンセス。


 顔は女の命だというのに……いや、男も同じだな。

 とにかく。

 玉の輿を狙うプリンセスが顔面を潰してまで、拾い上げたこのボール。


「つ、つぶれてないし……」


 この俺が。ドリーム太郎が何としても相手コートに叩きこむ!


「ふおおおおおお! 高まれ! 俺の夢パワー!」


空中高く舞い上がるボールに向けて。

ジャンプ一番。右腕に、夢ブレスを溢れる夢パワー。

その全てを開放。叩き込む。


「ドリーム全開! ドリームスパイク! しねええええええ!」


ドバシーン!


叩き弾かれたボールは、金の光をまとい一直線に相手コート。

両手を組み合わせ、レシーブで構える悪夢副部長の元へ。


「うにゅー……真正面にゅ」


構えボールを拾う。

悪夢副部長の両腕に触れたボールが


ドカーン!


金の光をまき散らす大爆発。

悪夢副部長は吹き飛び、コートに叩きつけられ、黒い霧となり消滅する。


「見たか! これが殺人、ならぬ、殺悪夢スパイクじゃい!」


従来であればドリーム光線として放つ夢パワーを、ボールに込めて放つのだ。


レシーブする。

受けるということは、わざわざドリーム光線へ当たりに来てくれるようなもの。

当たれば吹き飛び浄化されるのは自明の理である。


「やったね! ドリーム!」


鼻を押さえて立ち上がるプリンセスとハイタッチ。


 相変わらずスコアは7対1と不利ではある。

 が、プレイヤー数は2対1でこちらが有利。


 くわえてサーブ権を奪取した。

 ここから先は俺たちの攻撃ターン。


「うーにゅ……対戦相手を殺すのは卑怯な気もするにゅ……」


 そもそもの話。

 バレー部が素人を相手にバレー勝負を挑む時点で卑怯なのだ。


 卑怯は卑怯に帰る。

 恥じるなら、卑怯な勝負を挑んだ自身を恥じるがいい。


ボールを左手に、ドリームは右手ですくうよう下から打ち上げる。

いわゆるアンダーハンドサーブ。


フラフラっと天井近くまで上がったボールは、敵陣後方。

コート奥深くへと落下する。


悪夢獣チームは部長1人。

つまり、1タッチでボールを返さなければならない。


だが、単純にレシーブでボールを返しても。


「トス。プリンセス。頼んだ」


ドリームがトスしたボールに対して、プリンセスが飛び上がる。

悪夢部長もブロックするべく飛び上がるが。


「まかせて! プリンセススパイク! とー!」


ズガドカーン


力任せに打ち込むボールが、悪夢部長のブロックをぶち破りコートに突き刺さる。


「いえーい。どう? どや!」


得意満面の笑みで両手を掲げるプリンセス。


 おお……優雅さの欠片もない……

 プリンセスというイメージに反して、こいつはパワー型ファイターだ。


 俺のスパイクとは異なり、ボールに夢パワーがこもっているわけではない。

 単純に物理的パワーの問題。


 何せ夢ブレスで変身した俺たちの身体能力は一般人を大きく凌駕する。

 そのうえパワー型のプリンセスが馬鹿力で打ち込むスパイク。

 いくらバレー部部長とはいえ、人間がブロックできるボールではない。


ズガドカーン


プリンセスの活躍によりスコアは15対9と逆転。


バレーの技術では悪夢部長に敵わなくとも。

圧倒的な力は技術を制する。


レシーブで返してはスパイクされる。

となれば、悪夢部長は落下する天井サーブに合わせてジャンプする。


俺たちにスパイクさせないための作戦。

バックゾーンから直接スパイクしての攻撃に切り替える。


バシーン バサバサー


が、コート最後方からのバックアタック。

いくらバレー部部長とはいえ、成功させるには難度の高い技。

打ち返すボールはネットを揺らすばかりであった。


 やれやれ……どうやら勝負ありだ。

 プリンセスが予想以上のパワーファイターで助かった。


 1人を仕留めたとはいえ、ドリーム光線に等しい夢パワーを消費したのだ。

 俺の方も夢パワー切れで、天井サーブを打つのがやっとの状況。


バシーン バサバサー


 もしも、サーブ権が相手に移動したのなら。

 実質、プリンセス1人にレシーブを任せるしかなくなる。


「ぶ、部長。がんばれー! ぶちょうー!」


突然の声援に振り返れば。

夢を食べられ意識を失っていたバレー部の副部長。


悪夢獣が消滅した今。

意識を取り戻したのか、必死に部長を応援していた。


バシーン バサバサー


 おのれ……誰がお前の夢を取り戻したと思っている?

 応援するなら俺たちだろう……


 だが、部長の夢を取り込んだ悪夢獣。

 その見た目は、部長にそっくりとなれば。

 事情を知らない副部長が応援するのも無理からぬこと。


バシーン バサッ


 む? 微妙に悪夢部長のタイミングが合ってきたか?

 ネットを揺らしたボールが跳ね、俺たちのコートに落ちる。


ところをプリンセスがスパイク。押し込んだ。


 ……ふう。


 すでにスコアは24対7。

 我がヒーローチームの圧倒的有利。


 これで……最後だ!


ドリームが天井高く打ち上げるサーブ。


その落下点をあらかじめ分かっていたかのように。

悪夢部長は、走り込み助走をつけて高々と舞い上がった。


天井サーブの落下地点にピタリ。


バシーン


高空から打ち放たれたスパイクはネットを超え、ドライブを描いてヒーローチームのコートへ。


ズダーン


 やられた……

 レシーブエース。いや。スパイクエースというべきか。


悪夢部長は1タッチでヒーローチームのコートへボールを叩き込んでいた。


「やった! 部長! すごいっす! やったーー!」


歓喜のあまり副部長はコートに雪崩れ込み、悪夢部長に抱き付き抱擁する。


「ぐぐぐう……うおーぉぉ」


「ぶ、部長? どうしたんすか?」


身をひねり唸りを上げ悪夢部長が口を開ける。

その口から白い光が漏れ出していた。


「あれは……部長の夢が漏れ出してるにゅ!」


悪夢獣は夢を食べる存在。

ただし、食べる夢よりも、悪夢獣が強大でなければ食べきれない。


バレーをするうち、部長の夢。

バレーにかける夢が力を取り戻しつつある今。

悪夢獣の体内で消化しきれず暴れ始めていた。


「今がチャンスにゅ!」


「分かった。よし。行くよ!」


悶え苦しみ光を吐き動きを止める悪夢部長。


「吐き出して! プリンセスミラクルパンチ!」


ズンドコーン!


その腹部をプリンセスが思い切り殴りつけていた。


「どげっへええぁああ」


完全に白い光を吐き出し、悪夢部長の身体は黒い霧となり崩れていく。


「……え? ぶ、部長?」


「お前の部長は、あっちだ」


ドリームは呆然とする副部長の顎をとり横向ける。

その視線の先には、意識を失い床に横たわる部長の身体。


「え? あれ? ぶちょう? ぶちょうー!」


倒れる部長の元へ駆け寄り副部長が抱き上げる。


「う、うう……ふ、副部長? 俺はいったい……」


「部長! すごいっす。すごいスパイクだったっす!」


「そうか……おぼろげに覚えている。あの感触……バレーだ! バレーをやるぞ!」


「はいっ! やりましょう!」


周囲に光が満ちていく。

部長も副部長も。バレーコートも体育館も。

全てが白い光に包まれ、粒子になり消えていく。


「やったにゅ! 2人の夢を取り戻したにゅ!」


「本当? やったね!」


1人と1匹が手に手を取り踊り始める。


 やれやれ……そもそもが今回の悪夢獣2匹。

 バレー以外はショボショボのヨワヨワではないか。


 普通に戦えば、あっさりけりがついたような気がしないでもない。


 だが、まあ──


「ほら! ドリームも!」


 ドリームに向けて伸ばされる白い手の平。

 そっと手を取り1人と1匹のダンスへ混ざり込む。


 プリンセスと一緒のバレー。楽しかったのだから良しとするか。


「……お前ダンス下手くそにゅ。幻滅にゅ」


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