6 『二度目の朝日』
――何で俺の部屋にいるんだ。朝日が差し込むいつもの部屋だ。
つい先ほどまで香澄とフランと駅前のカフェにいたはずだ。なのに......
もしかして俺、死んだのか?
昨日見た先人の経験と、今の自分の状況を照らし合わせてみると正に同じ状況に立たされている。
俺が死んだなら他の二人は...... 最悪の想像が脳裏を過った。
「絶対にそんなことにはさせてたまるか」
出会ったばかりとはいえ、フランもだし何より香澄が心配だ。彼女だけは命に代えても守らなければならない。
取り敢えずこういう時は前回の流れを踏襲するのがお約束だ。それなら......
――急いで準備をして香澄に連絡を取り、駅前の広場に到着したが香澄が待ち合わせを10分過ぎても現れない。再び連絡を取ろうとしたが遠目に彼女を見つけることができた。
「遅れてごめんね一誠」
「いやいや、俺も今来たばっかりだから気にしないでいいよ」
前回出来なかったこのやり取りも無事達成できた。と心の中で俄かに喜びが生じた。
「でも、今日はどうしたの?最近は連絡もしてこないし、学校にも来ないし。何より顔色が物凄く悪いようだけど」
「連絡しなかったのは悪かった、最近は色々あってね。顔色は......気にしないでくれだいじょだから」
「その若干の間が凄く気になるけど大丈夫ならよかった。」
そう言って、優しく微笑んだ。この笑顔だけは絶対に守ると再び誓った。
既に前回の既定路線とは、大きく異なるが展開としては今のほうが全然いい
と、思いふけっていると
「あ、あの一誠?私たちって一応付き合ってる訳じゃん。だから、その......」
耳まで赤くした香澄がぼそぼそと言葉を紡いでいる。
「ああ、分かったよ。今度またデートしよう。そうだなそろそろ年末だし初詣にでも一緒に行こうか」
そう言うといっそう顔を紅潮させコクコクと嬉しそうに頷いた。
今回は背後でおちょくってくるフランがいない分かなり平和だ。しかし本当に俺は死んだのかと疑念を隠せずにはいられない。
しばらくして香澄がお手洗いにと、離席している間自分のケータイ画面を見ると「複数での連続通り魔事件が発生」と速報が表示されていた。
何とも物騒な事件だ、自分の周りでは多くの人が昼の団欒をカフェで過ごしている。危険とは全く無縁だ。
「何難しい顔してるのよ、うわ......通り魔なんて今どき珍しいわね。でも割と近くだから気を付けないとね」
香澄は帰ってきて早々ケータイの画面を見ると俺が見たものと同じ速報を見て僅かに顔を曇らせた。
「そろそろ帰ろうか、また年末のことは追って連絡するから」
「うーん、もうちょっと一緒にいたかったけど......必ず連絡してよ、絶対だからね!」
別れを惜しんでくれたことが素直に嬉しかったのか自分でも分かるくらい顔が熱い。
――じゃあね。また今度ね
すぐ傍の駅の改札まで彼女を送り、駅構内を出た。その瞬間、二階のホームからだろうか大勢の悲鳴が聞こえてきた。胸が苦しい、心臓が張り裂けそうなほど高鳴っている。ふと脳裏を過った。
――香澄、香澄は!つい先ほど見送ったばかりの彼女はもうこの駅を離れただろうか。もし離れてなければ......
「香澄!!」
俺は大急ぎで駅のホームへと向かった。
クリスマスに投稿予定でしたが新PCを購入致しましてバタバタしてしまい間に合いませんでした。
申し訳ないです。
さて、本文についてですが作者の香澄への願望があふれ出てしまっていますが悪しからず。
最後になりましたが年内もう1話投稿予定ですのでお楽しみに!では!