5 『最後に』
おい、そろそろ起きたらどうなんだよフラン。
「――うう...もうちょっとだけ」
もう昼前なのにこいつは何時まで寝ているつもりなんだ。まったく...
遂に異世界転移前日となってしまい今日俺はどうしても最後に会いたい人がいる。昨日連絡すると、予定をずらしてまで会ってくれると言ってくれたのだ。
普段は周りとほぼ変わらない俺だが一つだけ違うことがある。そう、最後に会いたい人というのはかれこれ二年の付き合いになる彼女だ。本当に自分でも不思議に思うくらい美人だし優しいし成績優秀といったまさに学園のアイドル的存在な女子が何一つ目立つことのない俺の彼女なのだ。
と、まあ見るからに不釣り合いな俺はクラスメイトに散々からかわれた。
そう懐かしい思い出に耽っているとようやくフランが立ち上がり、どっかいくの?と聞いてきた。
「ちょっと彼女に会ってくる。明日からはもう会えないかもしれないんだろ」
まだ完全に意識が覚醒しきっていないフランに伝え、とっくに準備を済ませた俺は部屋のドアに向かった
「――ちょ、まってまって!一誠に彼女なんていたの!?嘘でしょこんな平均男に彼女なんて!」
よしこいつに目に物見せてやろう
「どうだ!ここに映りし美少女が俺の彼女だ!はっはっは!」
俺がポケットから取り出したスマホに映る俺と彼女のツーショットをしっかりと見るとふらふらよろめきながら
「おかしいおかしい、なんでこんな可愛い子が一誠の...いや、待ちなさい一誠、その眼前にいる女の子に対してどんな評価をしているのか是非聞きたいところね!」
「頭幸せ残念系金髪美女か...あ、美女はいらなかったかごめんごめん」
「前半は置いておいて、なんで一番大事なとこをいらないって言うのよ!もう、決めた。一誠に付いていってその加工美少女の真の姿をこの目に焼き付けてやるんだからね!」
大体の人は、実際会うほうが可愛いって言うし俺もそう思うんだけどな...
俺が呆れている間に外出の準備を済ませたフランに絶対邪魔しないという条件付きで付いてくることを許し、待ち合わせ場所に急いで向かった。
「ごめんごめん、待った?」
「ううん、今来たところなんだけどこのやり取りは逆じゃない?」
確かにそうだと、思いながらコロコロ笑う彼女に見とれているとその後ろにさっそくむくれているフランと目が合ったが、そっとしておいてあげることにしたて駅前のカフェに入り向かい合って座った。
「でも、いきなりどうしたの。学校も来ないし返信もしないで、心配したんだからね!」
人混みを気にしてか、こそこそ言ってくるのが何とも言えない痣とさを演出している。
「ちょっとまあ色々あってな、あまり学校に行ける状態じゃなかったんだよ。で、その原因を香澄に話そうと思って今日呼んだんだよ」
「まあ大丈夫ならいいんだけどね、で、話って何よ?」
「俺、明日異世界に行くんだ。それで最後に香澄に会っておこうと思って」
こんな明らかに頭のおかしいことを打ち明けるのは、正直嫌だった。
「え...本当に大丈夫なんだよね。頭おかしくなったりしてないよね」
ああ、やってしまった。やっぱり打ち明けずに普通にデートすればよかった。全く、穴があったらすぐ入りたい。
背後ではフランが必死に笑いを堪えている始末だし、香澄は本気で心配してくれている顔だ。
――もう今朝からやり直せたらいいのに。
「――うう...もうちょっとだけ」
目の前では見慣れた俺のベッドに転がるフランがいた。
こんばんは!(投稿が夜だったので)
本日は物語の鍵となる重要な部分ということもあり連続投稿させて頂ました。
いよいよ序章は終わり、次話からようやく本格的に本編スタートとなります!是非お楽しみに!
最後になりましたが今回も読んでいただきありがとうございます!
これからもどうかよろしくお願いします!!