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コーラ戦士バブルマン

 それは、夜で起きた出来事だった。

 トイレに行きたくて、布団から目覚めた男は、トイレに行く途中で、それを見た。

 空きていた冷蔵庫、ドリンクなどが地に転がっていた。

 盗みにあったと思い、冷蔵庫に近づく男の目に、それが映った。

 地に転がっていたドリンクの中身が瓶を破り、外へと飛んでいったのを……

 その夜、人々の冷蔵庫から、全てのドリンクが消えた。


 時は朝6時、社会人たちが起きる時だ。

 しかし、彼らを迎えるのは、いつもの朝じゃなかった。

 なんだって、みんなの身体は謎の液体に絡まれ、動けなくなったのだ。

 その声も、その時に聞こえたものだった。

 「人間どもよ、喜べ! これからこの星は我々がもらった!」

 外にいる人たちは見た、いろんなドリンクが集まった身体の、巨大な生物……?

 いや、巨大なモンスターを見た……

 その名も……

 「休み時間を代表する怪物、Teaーレックス!」

 ビルよりもでかいそれに、人々は……絶望した……


 最初は動きたくなかった。

 モンスターが出たとはいえ、すぐ収まると思いたかった。

 彼のこの思いは今日も天に通じなかった。

 モンスターに反応し、勝手に変身し始める自分の体を見て、彼は思った。

 「出番か」

 部屋の窓を開け、彼は外に飛びこんだ。

 仕事の時間……


 人々は最初期待した。

 国家、軍隊、戦闘機……なんだっていい、ともかく、自分を助ける何かを……期待していた。

 その期待も、自分たちの意識ともに、消えていった……

 奇怪なのは、意識が消える前の瞬間だった。

 空を飛ぶ人間を、見たと言うやつがいた。


 「……なんだおめぇ?」

 Teaーレックスは戸惑っていた。

 絶滅したはずの人間が、目の前に現れたのと、その人間が空を飛んでいるのと、その人間の体の周辺から泡が飛び散らして、コーラの匂いが伝わってくることに……戸惑っていた。

 その答えは、そいつが答えなかった。

 答えなかっただけでなく、そいつは……

 「うるせぇボケ、早く死ね」

 侮辱してきた。

 何もかも納得できなかった。

 しかし、Teaーレックス全然は気にしなかった。

 これからやることも、起きることも、変わりはないだろうと……

 そう思った。


 最初に動くのは、やはり怪物のほうだった。

 全身を動かせ、目の前の人間を体に包み込もうとした。

 単純で明快……特別なことはなかった。

 これから人間を包めなかったことと、何百メートルの体がぶっ飛ばされたこと以外……特別なことはなかった。

 「うわ、手がベトベト……」

 手の汚れを心配している人間を残して……


 モンスター……怪物……悪魔……

 どの言葉も同じだ。

 怪人……怪獣……もののけ……

 人間に劣るはずはなかった。

 こうなるはずじゃ……

 「なかった!」

 空を飛んでいる最中に体を停止させ、Teaーレックスは……怒った。

 「くらい尽くしてやる!」

 自分にふたたび向かってきたモンスターに対して、人間はただ……

 「よし」

 喜んでいた。

 「もうこれ以上ベトベトはないだろう」

 自ら向かってきた相手に、喜んでいた。


 それは、事件の明日に、ニュースで流してることだった。

 世界中を散らかすドリンクのことと、目覚めた人々のことと……

 機械に撮られていた、謎のヒーローの姿のことを。

 コンビニのコーラを盗んで、モンスターと戦うそのヒーローは後にこう呼ばれていた。

 「コーラ戦士バブルマン!」

 ……しかし、本人が手のベトベトを消すのに精一杯で、そのニュースに気づけなかった。

 「殴るんじゃなかった……」

 彼にとって、これもただひとつの、日常にすぎなかった。


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