異世界から転移してきて日本をNAISEIする!
フィクションですよ。ギャグですよ。
「というわけで早速、サクサク行くとしよう」
「魔王様、少しはマクラというか、こうなった経緯を説明するなど必要ではないかと」
「必要か? 状況説明など? ワシとお前が解っておれば何も問題無かろう?」
「そうでしょうか? 皆様、ポカーンとしておられますよ?」
「ふむ、そうだな。だが全員この催眠魔法でヨロレイヒー。……うむ、洗脳完了。これで日本の国会議員は全員、ワシの意のままよ」
「まぁ、さっさと復讐したいのも解りますが」
「だいたい何でこの日本に住む少年が、私の世界に来てシッチャカメッチャカしてくれたのだ?」
「さて、転移とか勇者とか、そういう話のようでしたな」
「おかげでワシは死にかけた。逆探知して日本に転移することで逃げることはできたが」
「あの勇者はやりたい放題してくれましたからなぁ」
「あの日本の少年がやってきて、NAISEIだー、とか、知識チートだー、とワシの世界を魔改造してくれおって」
「魔法の無い世界の知識とやらで、いろいろ変わりましたから。銃に大砲、毒ガス兵器に生物兵器と、よくもまあ、あんな恐ろしい物を作って広めてくれましたな」
「ワシの魔王城をブッ飛ばしたあの核兵器とはなんだ? この日本ではあんな恐ろしい物を作っているのか?」
「この日本では作って無いようですが、下請けのある他の国で作らせたり、核兵器に必要な電子機器や部品を、人工衛星用として輸出している企業が日本には御座います」
「取り扱いが難しそうだが、あんなものの部品を売り買いしているのか? 恐ろしい国だな。だが、勇者がワシの世界でNAISEIなぞして魔改造するなら、仕返しにワシが日本をNAISEIして、魔改造してくれるわ」
「魔法に耐性がありませんから、国会議員の洗脳も簡単でございましたね」
「クックックックック、さぁ、ワシのNAISEIを見せてくれる! そして勇者の故郷を、メッタメタにしてやるわ!」
「それでこそ魔王様です」
「しかし、何だこの国は? この借金の額はいったいどういうことだ? これはどうやっても返せないでは無いか」
「これはもう、返せないからヤケクソになっておるのでは無いでしょうか?」
「国を運営するものがヤケクソになっては、国の民が哀れでは無いか。とっくに破綻してもおかしく無いぞこれは。どうするつもりなのか?」
「おそらくは踏み倒すつもりかと。この日本は過去に明治維新のときに、金を円に切り替える際、国の借金を踏み倒しております」
「なんだそれは? そんなことをすれば信用を無くすでは無いか?」
「その辺りを内戦と内政で誤魔化しておるようですな」
「なんといい加減な国だ。だが、まずは財源確保か。ふむ、この年金という制度を潰そう」
「それは難しいかと。この日本は民主主義とやらで国民が大きく反対する政策は取れません」
「問題無かろう。この日本ではネズミ講が違法とある。この年金というのは国が行うネズミ講では無いか。ハナから違法だ」
「では、年金機構を潰して、ついでにリストラとしましょう」
「リストラするにはこの戸籍とマイナンバーもだ。管理するシステムが何故二重になっている? どちらか片方で良いだろうが。マイナンバーを残して戸籍は完全に排除。管理する組織はふたつも要らん。戸籍に関わる組織は全員クビにしろ」
「なかなか財源確保は進みませんな」
「切り詰めるところは切り詰めていかねばな。この健康保険というシステムも無くすぞ」
「それでは国民に医療費の負担が増えますが?」
「今のところ医師が足りんだろう。優秀な医師はその分、治療費を高く取る。これで医師が稼げるとなれば医師になろうという者も増えるだろう」
「なるほど」
「それと予防接種も止めさせるぞ。何故、保存料に水銀など使ってる者を幼児に注射するのだ? これでは脳の発育に悪影響が出るぞ」
「幼児期の予防接種が脳に影響を及ぼし、うつ病になりやすい脳になる、という仮説がありますな。WHOも保存料に水銀を使用する予防注射は止めるように推奨していますが、なかなか変えられないようです」
「いまだ真偽は不明だが、健康な子供にやらなくても良いような治療をするのは、百害あって一利無し。全国の学校で全ての予防接種を止めればかなりの金が浮くだろう」
「医療関係はバッサリ切るのですな?」
「代わりに医師免許を更新制にする。自動車の運転と同じく年寄りの医師の手術も危ないだろう。更新のテストに不合格となれば医師免許を剥奪する。三年おきぐらいか?」
「年寄りを引退させては医師不足が進むのでは?」
「その分、若手を増やす。健康保険が無くなれば医師は稼げる仕事になるだろう? だったら自ずと増えていくわ」
「少子化による人材不足はどういたしましょうか、魔王様?」
「ふむ、ならば義務教育は小学生までとして、中学校と高校を全部無くそう」
「大胆ですな」
「教育と利権が絡みモリカケだなんだと言うくらいなら、数を減らして管理しやすくしてしまえ」
「中学校、高校を無くせば教師も職を無くして転職することになりますか」
「子供は小学校を卒業した時点で働けるように法律も変える。これで人材不足も解消する」
「上手くいきますかな?」
「調べてみたところこの日本では、文字も読めずに溶接して工業製品を作っている者が工場で働いている。ならば小学校を卒業して、ひらがなもカタカナも読み書きできて、九九ができれば問題無い」
「大学は如何しましょう?」
「大学は残しておく。高校卒業程度認定試験は無くす。小学校を卒業した時点で大学の入試を受けられるようにする。やる気があるものは私立の塾や予備校に通い、大学を受験すれば良い」
「小学校の次は大学となるのですな。賢い子はスキップが可能になると」
「優秀な人材を何年も遊ばせるのは国の損失であるし、本人にとっても己に合ったスピードで学習できるだろう。小学校を卒業した時点で専門学校に通うのもよかろう」
「しかし、この国の借金は膨大ですな」
「国会議員をリストラするか。院はふたつも要らん。片方は潰せ」
「では参議院は全員クビと」
「次は税か。贅沢品の税率を上げるとしよう。酒にタバコ、他には、ふむ、このあたりか?」
「どれでございますか?」
「高価なペットに税をかけるというのも有りか。他に嗜好品、生活必需品では無いもの。雑誌にマンガ、コンサート、ライブ、アニメ、ゲーム。ソシャゲのガチャにも税金をかけるぞ」
「マンガ税、アニメ税、ラノベ税、ゲーム税にガチャ税。コンサート税にライブ税ですな。しかし、締め付けすぎては反感を買うのでは?」
「そこは抜け道を用意してやる。タバコもマンガも酒もアニメも、自分で作って自分で消費するものからは税はとらん」
「なるほど、嗜好品、高級品に税をかけていくと」
「締め付けるだけでは反乱の危険がある。緩めるところ、そうだな、過疎化する地域の問題を解消するために、農業、漁業の復権だ」
「過酷な労働で利益率の低い分野ですな」
「自分で食う分の食料は自分で作るなり捕る方が得になるようにする。スローライフの気運が高まっているなら丁度良い。そして中間取引するところから税を取るようにする」
「そうすると、食料品の値段が上がると」
「作物を作れる農地があれば、金は稼げなくとも食いっぱぐれは無い。そうして土地の安い地域での住民を増やす。作物については売買すれば消費税がかかるので、作ったものを自前で消費することで食費を浮かす、という風潮にしていく」
「作物を作って売るのでは無いのですか?」
「その通り。そして地域の物々交換支援市場の開設。これで産地産消ともなるだろう。物々交換からは消費税は取れないからな。貧富の差が開いても、貧しくとも暮らせるようにして行けば良い」
「当面のところはこれで進めていくとして、上手くいきますかな?」
「ふん、選挙だなんだと議員がコロコロ変わったところで洗脳してしまえば良い。後はマスコミを大人しくさせるためにも、広告費からは大きく税金を取るぞ。コマーシャルひとつ打つ金からは50パーセントまで上げてやれ」
「流石は魔王様です」
「クックックックック、勇者が故郷に帰ってきたときにどんな顔をするのか見物だわ。カーッカッカッカッカ!」
◇◇◇◇◇
「なかなか勇者がこちらに戻って来ないのはどういうわけだ?」
「向こうが気に入って住み着いてしまいましたかな? しかし、魔王様、エネルギー問題は如何しましょう?」
「お前の練金術で開発している光発電はまだできないのか?」
「材料となるベルシドル発光体の量産が難しく、プルトニウムから作ることも可能ですが」
「何か問題があるのか?」
「ベルシドル発光体の他に副産物で黄金ができるのですが」
「それならそれで、その黄金を他所の国に売り、ついでに世界の金の価値でも暴落させてしまえ」
「では、そのように」
◇◇◇◇◇
「大変です! 魔王様!」
「どうした! 何があった!」
「向こうの世界で勇者が広めた核兵器で、各国が核戦争を! あちらの世界が核に汚染されました!」
「なんだと?!」
「勇者は悪魔の兵器を広めたとして、処刑されました!」
「なんということだ。これが現代知識チートの末路か? 恐ろしいな」
「核の汚染が無くなるまで、向こうには戻れません。一部ではミュータントも発生していると」
「ぬぅ、勇者の奴の故郷をメッタメタにして、泣き顔を拝んでから凱旋する予定が、故郷に帰れぬとは。……田舎のカブラッタ浸け食べたい……」
「私も故郷の味が懐かしいです。この日本は、空気は臭いし食べ物は不味いし……」
「しかし、帰れぬとなればここで暮らしていくしかあるまい。こうなるのであれば、いい加減なNAISEIなどするのでは無かったな。日本人が大人しく反乱を起こさないから良かったものの」
「いえ、それが魔王様がNAISEIを初めてからは内閣の支持率が上がっております。国民からの不満の声も以前より少ないようでして」
「……なんだこの国?」