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8. 稲刈り

 今でもあるのか、まあ、やれても地方の小学校だけだと思うが……

 うちの学校では小3から農業の体験学習をやっていた。


 3年生でじゃがいも、4年生の時はさつまいも。

 学校の敷地ではなく、そう遠くない場所に畑を借りて作っていた。

 種芋の用意や植え方を指導してくれたのは、松尾という同級生のお母さんだった。


 松尾のおばちゃんはこども会によく顔を出す、子供好き世話好きおばちゃん。

 キャンプやクリスマス会等で可愛がってもらったが、今思うとあの畑は松尾さんの畑だったのかもしれない。


 俺達の学年以前は、この3、4年の芋作りだけの農業体験だったらしい。

 それが稲作体験も追加になったのは、やはりうちの協力を得られた事が大きいのだろう。

 ちょうどいい田んぼがあって、学童に俺がいたから実現したってところかな。


 ここには普通の米、いわゆるうるち米ではなく、もち米を植えていた。

 そして稲刈りの後は学校の全クラスに一旦米を配って、一升瓶で米搗こめつき体験。

 これは脱穀して玄米にした米を、一升瓶の中に入れて棒で突いて精米するのだ。

 これを全員体験し、白米にして回収。

 最後に全児童がグラウンドで餅つきをして、きな粉餅と大根おろし餅を食べる。という流れだ。


 そうだ、秋に刈り入れだから、もうそろそろだ。

 あと1ヶ月の間には必ず起きるイベントだな。

 まあ、これで正体がバレるって事もないとは思うが、用心し過ぎるに越したこっちゃない。


「来週の土曜だっけ?

 大根おろしで餅食うの楽しみなんだよなあ」


 とん吉の言葉で開催日が分かった。

 俺はここ最近、かなりオセンチになっていたんだと思う。

 オレンジの日以降に起こるであろう事柄は、欠片も情報が頭に入ってこなかったのだ。


「おいおい、来週は稲刈りだけだろ。

 餅はまだ食えねえぞ」


「ああああ、そうだった……」


「残念だったわね。サボっちゃ駄目よ」


「「「あははははは」」」


 とん吉のお陰で、なつきが幾分明るさを取り戻してくれた。

 さっきもおどけてくれてたし、奴なりの気遣いなのだろう。

 

 あと、ひとみ先生が稲刈りをやれるか心配していたとの事。

 学校も気を遣って、うちに連絡して来なかったのだと思う。

 今日あたりに話すのかもしらんが、まだだったら帰って父ちゃんに聞いてみようかな。



 ーーーーーーーーーーーー



 稲刈り当日はすこぶる快晴。暑いくらい。

 田んぼ脇の砂利道じゃりみちと刈り終わっている隣の田んぼには、小学5、6年生の児童が集まっている。


 格好は体操服とジャージ、帽子は麦わら帽を推奨。

 あと、タオルは必須。

 首に巻いておかないと、稲の細かい塵だかが服の隙間から入り込んで、チクチクチクチク痛痒いのだ。


 因みに、田植えの時もタオルを巻く。

 どんなに気を付けても顔には泥がつく。

 時々拭かなきゃ色男が台無しだからな。

 ホントはほとんど汗拭きだけど。


 田んぼの中には10人の児童が鎌を片手にスタンバっている。

 その手にした稲刈り鎌はうちで準備したが、両手に着けている軍手は各自に用意させた。


 100均で売っている手のひらにゴムの付いた軍手だと、鎌の柄をしっかり掴めて使いやすい。

 だが、この頃はそんな物売っていないし、100均自体も登場するまで何年かかるのか……

 

 とにかく流血沙汰は絶対にダメなので、鎌の取り扱いは俺とうちの両親でしっかり指導する。

 6年は昨年やっているのでまだいいが、5年生には触った事もない子がいる。 

 最初の10人は5年生だけなので、サポートの為近くには俺と平川らいつものメンバーがついててやる。


「よーし。準備が出来たら一緒に刈るぞーっ」


 田んぼの中の児童が横一列に並んだのを見て、父ちゃんが大きな声で指示を出した。

 

「「「お願いします!!」」」

 

 チビッコ達の元気な返事を聞いて、稲刈りイベントはスタートするのであった。

 

 

 


 

服の隙間から、もみの塵なんかが入ると、

「ひゃ~、はじかい!」

ってなります。

このチクチク痛痒い表現を「はじかい」と言うのは九州、四国辺りだけらしいですね。

関東では聞かないなと思って調べたら、思いきり方言でした(笑)

でも「はじかい」がピッタリなんだけどなあ。


読んでいただきまして、ありがとうございます。

次話もどうか、よろしくお願いいたします。

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