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5. ミッション

 ひいばあさんの葬式は八重洲本家、つまり俺のうちで執り行った。


 なつきの家は全壊だったし、江藤家は一応うちの分家にもなる。

 だがそんな形式は関係無く、江藤家は地震(?)当日からうちで寝泊まりする事になった。


 葬式は本来3年程先になる出来事だ。

 歴史が変わってしまうのでは? と心配したが……

 ひいばあさんはこの頃ほとんど外出せず、庭で畑いじりの余生だった。

 だから世界は無事なのだと、葉月と葉月の中にいるなつきはそう言っていた。 




「ともか!」


 葉月が俺の胸に飛び込んできた。


「もう、ダメかと思った!

 ホントに危なかったの!」



 あの後……

 長い1日が終わり、俺は夢の中にいた。


 ひいばあさんの救助作業は終わり、なつきの両親、うちの父ちゃんが搬送先に駆けつけた。

 俺となつき、雪姉は、父ちゃんの車で母ちゃんと一緒に八重洲家に戻った。

 江藤家が休める様、準備する為だ。

 バタバタ慌ただしくして飯をかっ込むと、いつの間にか寝てしまったみたいだ。



「あれ?

 俺、酒なんか飲む暇無かったんだけど」


「ああ、私達、向こうの世界から帰って来たでしょ。

 だから私、なつき君から追い出されてんのよ」


「えっ!

 そうなの?」


「まだ過去にいるから私は産まれていないでしょ。

 仕方ないから、あんたの魂に移って来たのよ」


「ええっ!?」 


「そんな事より!」


 葉月は抱きついていた体を離し、表情を引き締め俺を見詰め直した。


「夕方は本当に危なかったのよ。

 もうちょっとで地球、割れてたわよ」


「ああ、何となく分かってた」


 あの時の……

 あの、とん吉が俺に向けた視線には何度も見覚えがある。

 あれは奴が女に惚れた時の目だ。


 アレを俺に向けて来やがって。

 咄嗟に身の危険と、それ以上の破滅の予感を感じてしまった。

 案の定、うっかり世界を消滅させるとこだった訳だ。

 やはり、とん吉と俺とはそういう関係になってはイケナイという事だろう。


「それを前にあの方……お母さんは阻止しようとしてたでしょ」


 ああ、そうだったな。

 って、そうか、ここでは俺の考えがダダ漏れだったな。


「もう少し早く伝わっていたらお婆ちゃんを救えたけど、だって」


 え⁉

 なつきもいるのか?


「ええ。

 でも、本体の残滓ざんしみたいなもんだって」


 そ、そっか……

 そうだよな。


「そのお母さんが言うには、お婆ちゃんはもう世界には影響力が無かったから大丈夫だったんだけど、あんたは違うって。

 あんたが女って周りに気付かれるのは非常に不味いって」


「あ! そうだよ!

 何で女なんだ?」


 俺だけ前の世界から体ごと移動したみたいになってんじゃん。


「あ~、あはは、その通り。

 体ごと移動しちゃってんのよ」


「はあ?」


「手違い」


「なっ」


「間違い」


 ………


「うっかりミス」


 おいおい、なつきは神様になったんだろ?


「神様だって万能じゃないの! だって」


 全知全能の神ってのは言い過ぎなんだなあ。


「とにかく、世界を正常化させるのに1ヶ月くらいかかるって。

 その間あんたはバレないように普通の生活を送ってちょうだい」


 ええ⁉

 家に引き込もってちゃダメなの……

 いや、ひと月は不自然すぎるな。

 実際そんな過去無いし。


 う~、仕方ねえなあ。


「ごめんね。

 また負担をあなたに押し付けちゃって」


 まあ、そうだけどなあ。

 でも、ずっと心につっかえてた想いを解消させてもらえたんだ。

 神様初心者の尻拭いくらい、文句言わずやんないとな。


「そ。ありがとね」


 ニッコリと葉月が笑顔を向ける。

 こんな可愛いツンデレ見せられちゃ、張り切らざるを得ん。

 

「全然ツンデレじゃないでしょ!」


 思いがけず、俺の新たなミッションが始まってしまった。


葉月の登場です。

本編ラストでは正ヒロインになれました(?)が、番外編ではどうでしょう。

なつきもちゃんと女の子ですしねえ。


読んでいただきまして、ありがとうございます。

次話もどうか、よろしくお願いいたします。



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