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第十一話 めざせアイドルコンテスト優勝! ー1ー 経過報告

ー1ー

 

 辺りは白い魔法の霧に包み込まれている。

 足元は少しばかり不安定で、心なしかこの世界全体が揺れている様に感じられた。

 俺、八重洲ともかはこの、夢の中で夢だと分かる明晰夢を見ている。

 本来この夢は、一面オレンジ色の秋の夕陽に染められた、思い出深い江藤なつきの家の裏山である。

 だが、俺が酒を呑み酔っ払った時にだけ、この景色に変わるのだ。

 

 霧の中に、ひとりの美少女がたたずんでいる。

 そのうしろ姿の美しさに、俺は目を奪われる。

 まるで魔力を秘めているのか、逸らそうにも、自分で自分の目を自由にする事ができない。


 それほどまでにその美しさは……

「オベンチャラはそれぐらいにして!」


 はい。すみません。


 振り返ったその美少女は、たいそうお怒りになられてる様で……

「解説もいい!」


 いやね、俺もさ、あの日の夜すぐに……

「言い訳もいい!」


 はい。すみません。


「私はね、なにも私をないがしろにしたって怒ってるんじゃないの!」


 はい。すみません。


 …………


「ちょっと報告が遅すぎやしませんか」


 怒ってんじゃん。

「屁理屈言うなあっ!」


 はいっ! すみません!


「ったく! ああ言えば、こう言う!」


 はい。すみません。


「あんた、すみませんって言ってれば済むって思ってんじゃないの?」


 はい。いや、その、思ってないよ……分かってるよ。


「じゃあ、なにが分かってんの?」


 えっ!?

 その、思ってないって思ってることを分かってるよ的な……


「的なとかいらないっ!

 40にもなって、そんなチャラついた言葉使わない!」

 

 はいっ! すみません!


「ふん、もういいわよ。

 まあ何だかんだ言っても、おおむね、あんたは良くやったわよ」


 はい。有難う御座います。


「うん。

 あの方も喜んでらしたしね」


 ……あ、ああ、あの方ね。


「え? あんた、あの方の事忘れてたの?」


 てへっ。


「呆れた……

 あんた、何の為に頑張ってんの?

 もとの世界に帰りたかったんじゃないの?」


 分かってるよ、分かってる。

 ただ最近やる事多くってさ、目の前の事処理すんので手一杯だったのっ。


「出来る役者は俯瞰ふかんで、もう一人の自分が見てるんじゃなかったの?」


 ギャフン!


「バカじゃないの。

 口で言う人いないわよ」


 ここにいるじゃん。


「屁理屈っ!

 ん~まあ、あの方も喜んでいるし、なつきくんも元気だし。

 やってる事は正解みたいだから、いいのかな」


 そうだよな、合ってるよな……


 あ、そういえば、この間、凄くお前を感じたんだけど!

 あれってお前はどんな感じだったの?


「う、うん。

 私もよく分かんなかったんだけど……

 確かにあの時は視覚だけの感覚じゃなかったと思う」


 やっぱり。

 その辺りも俺たちとこっちの世界との関係でなにかあるのかも。


「それはそうと、この前は、汚い手使ってごまかしたわね」


 ごまかしてなんかないさ。

 あれは俺の本音だよ。

 あの時は本当にお前だって分かったんだ。

 だからちゃんと、なつきじゃなく、お前に伝えたかったんだ。

 葉月。

 本当にいつもありがとう。

 お前がいてくれるだけで、俺はこの世界で、ひとりぼっちじゃない。


「バカじゃないのっ!

 まあ……ね。

 わ、私だって、あんたがいてくれるから、寂しくないわよ……」


 ありがとう、葉月。


「ん。ありがと、ともか」


 そう言って、つんデレ美少女は顔を赤らめ、後ろを向く……

「だから、解説はいいって言ったでしょっっ!」



ー 1 おわりー


読んで頂いて、どうもありがとうございます。

ー2ーもどうか、よろしくお願い致します。



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