第7話 主人公願望の行く末
「そうか……依頼は失敗か……うむ」
俺達の報告を聞いたニーグさんは肩を落として項垂れてしまう。
「申し訳ありません。後少しのところだったんですが……、あの何だったら他に『興奮草』の生えている群生地とかあれば取ってきますが」
さすがに悪いと思えてきてしまい、依頼料とか抜きにしても許されるならばもう一度取りに行きたいところなのだが。
しかし、ニーグさんは力なく首を振った。
「いや、興奮草は希少の花だ。今回だって見つかったのは奇跡みたいなもの。他の場所と言われても情報が無いんだよ」
「それは、その、すいません……」
どうやらとんでもない失敗をしてしまったらしい。
だが、ニーグさんは「いや、良いんだ」と言ってくれた。
「構わないさ。そもそも女の子が理由なく惚れるなんてそれこそ僕たち男の儚い夢みたいなものさ。それを実現しようとしたのがそもそもの間違いだったんだ」
「それは……」
「夢は夢、現実にしようとするなんて事、早々合ってはならないんだよ。それも適性な努力もしないで惚れられようなんて事、考えても見ればおかしかったのさ。今回の事ももしかしたらライトノベルの神様って奴がそれを許してはくれなかったのかも知れないな」
ニーグさんは何処か悟ったような事を言う。
だが、その言葉は何処か説得力があった。
俺もライトノベルが大好きな人間の一人だ。そういったシチュエーションに憧れないでもない。
しかし、夢は夢だからこそ楽しめるのだ。それを現実にしちまうってのはもしかしたら何か違うのかも知れない。
そんな中、ニーグさんは「それに」と続ける。
「よく考えたら僕ってばライトノベルばっか読んでてリアルの女の子の友達なんて一人も居ないから、いきなり惚れ薬を飲んでくれそうな相手がそもそも居ないんだよね(笑)。つうか現実の女の子なんて皆、僕に見向きもしれくれないって言うかさ、そもそもラノベのヒロインよりも可愛い女の子なんて現実に居ないんだよね。ほら、現実の女の子って我儘だし面倒だし、あと毛とかも生えてるんでしょ。いやー……きついっす(笑)」
なんだろう。聞いているだけで涙が出てきた。
「と言うかカップルって何? 食えるのって感じ。そもそもリア充憎んでいる僕がそのリア充の仲間入りになるなんてちゃんちゃらおかしいって言うかさ。……そうだよ。リア充を全て消し飛ばせば相対的に不幸な人間は誰も居なくなる! ふふ……なんでそんな事にも気が付かなかったんだ! ……という訳で惚れ薬の開発なんて止めて今度はリア充を吹き飛ばす劇薬でも作る事にするよ。いやー……ノボル君、なんか逆にありがとう! これで僕はリア充なんて悪の手先になる心配はなくなった!」
どうやら俺が依頼を失敗した事により、世界にはまた一人リア充を憎む悲しき性を背負った人間を生み出してしまったらしい。
そんなこんなで依頼は失敗に終わった訳だが、一つだけ収穫があったと言えばあった。
「くく……我と魂の契約を望むか……良いだろう。では共に悪逆の限りを尽くしたカオスロードを共に歩もうぞ!」
という訳で、アリスがパーティに加わる事になりました。
アリスの方はと言えば元々冒険を共にする仲間が欲しかったそうだが、しかしその難解な邪気眼言語から上手くコミュニケ―ションを取れる相手が居らず、高い実力を持っているのにパーティメンバーに恵まれていなかったらしい。
しかし、今回の件で上手くコミュニケーションを取れる相手が見つかった他、先の一件にてテレシアとも打ち解けたが為に自らパーティ加入を志願してくれた。
こちらとしての戦力が増えるのは望むところであったが為にトントン拍子で話は進んだのだ。
結果としてライトノベルは手に入らなかったものの、十分な見返りがあったという訳である。
正直、テレシアの方はアリスの言っている事の半分は分かっていない様子だが……しかし、彼女達は彼女達で通じ合っているものがあるのだろう。
二人はまるで姉妹かのように仲良くしている。
それは何ともまあ喜ばしい事である。
ただ、少し厄介な事も出来てしまっている。
「こら、アリス! ノボル様はお疲れなのですからベタベタと引っ付いては迷惑ですよ!」
「休息を取らねばならない今だからこそ我とノボルは魔力を共有しなくてはならぬ。これは必要な儀式なのだ!」
「また、そんな言葉使って……。少しは私にも分かるような言葉を使いなさい!」
「むー……我の操る魔界語を軽んじるとは……テレシアよ、愚かなるぞ」
「ほーら、そんなに遊びたいならこっちに来て私と遊びましょう」
「やだやだやだー! 我はノボルと遊ぶの!」
「そんな事言ったら私だってノボル様とイチャイチャしたいんですよ!」
「…………」
俺は二人のやり取りを横目で眺めつつ、深い溜息を吐く。
仲良くなりすぎて遠慮がなくなったのか、やり取りが活発になり過ぎたのである。
しかもアリスが俺に懐こうとする分、テレシアもまた俺に懐こうとするので、単純な労力が二倍以上に増えてしまっている。
俺はパーティメンバーが増えた事でラノベ入手に一歩近づけた喜びと何処か喧しいやり取りが増えた心労で嬉しさとも苦笑いともつかない表情を浮かべるのだった。
これで一先ず短編的には終了です。
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2017/04/29 表現を一部修正しました。