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第2話 ラノベ主人公になる方法(薬使用)

ここから実質、本作っぽい話になります。

良ければお付き合い下さい。

「め、面接があるのか!?」

 依頼主と会う為、約束していた通り自宅へと向かった俺達はそこで初めてこの依頼に面接がある事を知った。


「この依頼は少々特殊でね。依頼を達成できそうな人を予め面接を催す事で選定しておきたいんだ」

 そう話すのは今回の依頼主であるニーグさん。丸眼鏡を掛けた線の細そうな印象で、日本で言うところのオタクっぽい男だった。


「面接……そこまでして俺達に一体何をさせたいんだ?」

「ふふっ、よくぞ聞いてくれた。僕は見つけたんだよ」

「見つけた?」

「惚れ薬の調合方法をさ!」

 その何とも胡散臭い薬にいかんともし難い表情を浮かべていると、ニーグさんは自らベラベラと詳細を話し始めた。


「いやね、ライトノベルでよく『何の理由もなく女の子に惚れられている主人公』っているだろ? 僕はね、あれに物凄い憧れを抱いてしまったのさ。だから僕は長年研究に明け暮れて、遂に惚れ薬の調合方法を発見したんだよ!」


 そんな馬鹿な事をキラキラした目で語るニーグさん。

 その懸命な努力を自分磨きに使っていたら、今頃は大した理由なく惚れられるような男になっていたのではないだろうか。


「つまり女の子の想いを惚れ薬を使って強引に捻じ曲げるって事ですか? それはどうなんですか!? 女の子はモノじゃないんですよ!」

 そんな話を俺の隣で聞いていたテレシアはどうもそれが気に入らないようでご立腹である。

 その気持ちは痛い程分かるが、今は依頼主の前で下手な事は言わない方が良いだろう。


「まあ良いんじゃないのか」

 俺達には然程関係のない事だし、と続けようとしたらテレシアはくるりと振り返って、

「ですよね! 惚れ薬を使ったとしても最終的に女の子が幸せであればそれで良いと思います!」

 とこれ以上無い程の笑顔で言ってのけた。

 お前の手首は高速回転するギミックか何かでも仕掛けられてるの?



「今回、君達には『興奮草』と呼ばれる魔法草の採取を頼みたいんだけど、ここで一つ問題があってね。この興奮草、見た目が殆ど一緒の魔法薬に『地獄草』と呼ばれるものがあって、間違ってこっちを惚れ薬の材料に使ってしまうと――――」

 ここでニーグさんは言葉を区切る。

 何だろう、もしかして死んでしまうとかじゃ……。


「実は思いっきり嫌われてしまうらしいんだよ。その理由はどうしてか分からないけれど、これがまた親の仇のように嫌われてしまうらしい」

 嫌われてしまうだけなら失敗したところで、この人一人が報いを受けるだけだな。


「何で嫌われてしまうんだろうか。物凄く味が不味くなるくらいで、これと言って嫌われるような成分は入っていない筈なんだけど」

 いや物凄く不味いもん食わせりゃ嫌われてもおかしくはないだろ、普通。

 そこまで分かっていて嫌われる理由が分かっていないのであれば、この人はそれこそ惚れ薬でも使わない限り人に好かれる事はない。


「まあ、という訳で、決して地獄草を採取しないで欲しいんだ」

「そうは言われても見た目が一緒の魔法草の見分け方なんて分からないんですが。まさかそれを判別しろってのが今回の面接内容ですか?」

 もしもそうだったら今回の依頼はお手上げである。

 今から勉強するにしてもさすがに時間が足りない。

 さらに言えばこの世界にはまともな「本」がない。勉強しようとしても専門家にでも教えを請わない限りは難しいのである。

 そんな風に落胆していた俺に向かってニーグさんはかぶりを振って見せる。


「いや、そうじゃないよ。これについては相当難しいからね。専門家でも殆ど分からなかったんだけど、ようやく見分けがつくって人を見つけたんだ。けれど、今度は見分けがつくって言っている人とコミュニケ―ションの取れる人が見つからなくてさ」

「コミュニケーション?」

 それは一体どういう事だろうか。


「いやね、端的に言えば言っている事が殆ど分からないだ。正直言って喋っている言語が何かも分からない。龍語でもないし、エルフ語でもない。そもそも彼女は人だ」

 ニーグさんは「お手上げだ」と言わんばかりに肩を竦める。


「面接ってのは要は彼女と会話の出来る人を探しているのさ。採取するエリアも強力なモンスターが蔓延る結構な危険地区でね。彼女を護衛出来る者且つコミュニケーションが取れれば丁度良い。まあ僕は冒険者ではないからね。強さは専門外だからそっちの判断はそちら様に委ねているけどさ。コミュニケーション出来るかどうかだけ試させて貰うよ」

 その説明に俺は頷いて見せるが、当然自信は毛ほどにもなかった。


 彼女と言うからには女性であるのだろうが、しかしそれ以外の情報は殆どない。

 元々、ライトノベルの為に死ぬほどバイトしていた関係上、英語くらいはある程度喋れるのだが、それ以外は殆ど分からない。

 そもそも英語なんてこの世界では役に立たないだろう。


 ただ、俺はこの世界に転生する際、女神による言語サポートを受けている。その関係でもしかしたら……と考えるものの、しかし当然ながらに自信がある訳ではなかった。

 そんな風に不安がっていると、俺はぽんぽんと肩を叩かれた。


「任せて下さい、ノボル様! 私は貴方様に釣り合う女性になれるように古代語は勿論、猫人語や獣人なまり、果ては知性あるモンスターとなら多少のコミュニケーションも取れるよう訓練していますから。きっとその女性とも仲良くお喋り出来る筈です!」

「お前は一体俺を何だと思って釣り合おうとしていたんだよ」

「勿論、私の想い人ですよ!」

 そんな風にドヤ顔するテレシアを頼るより他になさそうだ。


「じゃあ宜しく頼むぞ、テレシア」

「はい、任されました! えへへー」

 そう言って嬉しそうに笑うテレシア。

 電波とは言え可愛いテレシアのそんな態度に思わずどきりとさせられてしまう。

 いや、ホント見てくれは美人なのだが。如何せん色々怖いのであるこの女の子。



「あの、ニーグさん。ところでその惚れ薬って少しだけでも良いんで、私に分けてくれたりとか……出来ませんか?」

「おい、お前それ誰に使う予定だ!」

 やっぱり油断ならねぇぞ、この女!



 ニーグさんにこっそり惚れ薬について尋ねていた彼女のその行いによって、上がった好感度は元に戻ったのだった。

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