プロローグ
新連載です! 第一章終了までは毎日更新の予定なので、良ければブクマなどお願いします!
どうやら俺、早見 亘は死んでしまったらしい。
死因は過労だそうだ。
たくさんのお金が必要だった俺は、大学生にも関わらず昼もなく夜もなく働いて金を稼ぎ、勉学にも手を抜かず、睡眠時間を削りに削って生きていたらいつの間にかぽっくりだ。
どうしてそんなにもお金が必要だったのか。
――――それは俺が大のライトノベル好きだからだ。
現在、月にライトノベルが何冊発売されているか知っているだろうか?
答えは平均で二百冊以上である。
そのたくさんのライトノベルを手に入れる為、そして将来も安定してラノベを買う為。バイトにも勉学にも手を抜かず、また日々の睡眠時間ですらラノベを読む為に削っていたら……その命をラノベに捧げる結末となった訳だ。
だが、俺は後悔していない。
何故なら自分の好きな事に命を捧げられたのだから。
しかし、他人はそう思わないらしい。
「うっ……ううっ……可哀想すぎます! 憐れです、あんまりです! フィクションの為に現実を捨て、友達も作らず、恋人も作らず! 女の子の柔肌の感触も、キスの味すら知らぬまま愛の意味すら分からずに死ぬなんて……そんなの、そんなのあんまりです!」
これは俺が死後、天界とやらで女神に言われたセリフである。
正直、余計なお世話である。俺は自分の人生に満足しているし、それにキスの味だって知っている。ラノベで読んだ。
「早見亘さん。私が思うに貴方は生まれる世界を間違えたのですよ」
「生まれる世界?」
「ええ。貴方はラノベを好き過ぎたのです。日本という世界で生きていけない程に。ラノベをたくさん読めば読むほどに評価される世界であれば貴方はきっと億万長者にも救世主にも、きっと英雄にさえなれたでしょう」
「……馬鹿馬鹿しい。そんな事、考えるだけ無駄ですよ」
そんな世界、ある訳がない。
もしもそんな世界があれば――――ラノベを読みまくれば英雄になれる世界に俺が居れば、きっと俺は誰にも負けない英雄になれるだろう。
だが、そんな世界はない。だから議論するだけ無駄なのだ。
「――――ありますよ、そんな世界」
「……え?」
「貴方は後悔の残る人生を送ってきました。ライトノベルを読めば読むほどに英雄になれる世界。ライトノベルの為に死ぬことが出来た貴方にピッタリの世界です。今度はその世界で英雄となるのです」
「そんな世界が……?」
「どうします? 今なら記憶も年齢も容姿もそのままに、そして異世界での言語なんかも理解出来るサポート付きで異世界に転生出来ますよ?」
俺はその質問に対し、すぐに答えを出した。
「――――転生します」
だって俺はまだライトノベルを読んでいたかったから
こうして俺は記憶、年齢、容姿などをそのまま引き継ぎ、『ラノベを読めば読むだけ評価される世界』へと旅立ったのだった。
これはライトノベル好きの俺が、ライトノベルを読む為だけに頑張り、そしてライトノベルを読んだついでに成り上がっていく――――であろう物語である。
2017/4/30 冒頭の描写変更を行いました