表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クオリファイア・ロッド  作者: 斜志野九星
第6章 クオリファイア・オブ・ロッド
56/58

第56話 トゥ・ディア・フレンズ・フロム・ロッド

「待ってください! それでは……それでは、あたしのこれまでの苦労は全て無駄になるのですか!?」

 突然、神上未咲が叫んだ。

「無駄って何のことだ?」

「あっ……」

 俺が質問すると、神上未咲はオロオロした。

「そうなるな……。嘘をついてまで、伊阪に近付いたことが……」

 飯地が神上未咲に静かに言った。

 嘘!?

 嘘って何だよ!?

「飯地、未咲……。お前たちが言っていることの意味が全然分からないぞ!」

 俺には飯地と神上未咲が何について話しているのか、全然分からなかった。

「すみません、竜司先輩……。実は、竜司先輩と飯地先輩が喋っている部分の監視カメラのデータというのは、存在しないのです」

 神上未咲が衝撃の発言をした。

「何で、そんな嘘をついたんだ?」

 不思議と怒りは湧かず、代わりに疑問に感じた。

「それは……」

 神上未咲は少し戸惑ってから、決心したように俺に向かって言った。

「竜司先輩が……好きだからです!」

 一瞬、俺の思考が停止した。

 今、何て言った!?

「嘘をついてすみません。困っている竜司先輩を放っておけなくて……でも、どうやって近づいたらいいのか分からなくて、嘘をついて近づきました」

 神上未咲が真剣な表情で言った。

「それじゃあ、未咲が言っていた神上達雄に認めてもらいたいってのは……?」

 確か、神上未咲の目的はこれだったはずだ。

「それもありましたけど……でも、竜司先輩を助けたかったのです!」

 神上未咲は、後半の方を強めに言った。

「まさか、伊阪……。神上未咲がお前の事を好きだってことに気づいてなかったのか?」

 飯地が俺を呆れた顔で見ている。

「お前は気付いていたのかよ……」

「ああ」

 俺の質問に、飯地が即答した。

 まるで、俺が鈍いみたいじゃないか!!

「そういうお前は結城のことが好きなんだろ? 生き返らせようとするくらいなんだから……」

 俺は飯地に仕返したくなった。

「は?」

 だが、飯地からは素っ頓狂な声が返ってきた。

 え?

「何を言っているんだ? 俺が結城を生き返らせようとしているのは、結城が好きだからじゃないぞ」

 飯地は実に淡々と俺の仕返しを封じてきた。

「結城が友達だから……。結城が『神上家』に利用されたのが許せなかったからだ!!」

 飯地が静かに、そして強く言った。

「好きとかそういう感情以前に、結城は1人の友達だ。その友達を薄汚れた大人に利用されたままにしておいて良いのか!!?」

「良い訳がない……」

 俺は飯地の問いに、即答した。

 俺が飯地と同じ立場だったら、間違いなく飯地と同じ思考になっていただろう。

 そして、多分飯地と同じ行動を取っていただろう……

「そういうことだ」

 飯地がそう言うと、周囲を飛んでいる白い粒子の量が増えた。

「結城が生き返った世界でまた会おう」

「ああ。そうだな……」

 俺は飯地に返事をすると、神上未咲の方に振り向いた。

 神上未咲には、お礼を言わないと……

「未咲、今までありがとうな。未咲のおかげで、俺は飯地の目的を知ることができた」

 俺が神上未咲にお礼を言うと、神上未咲は笑顔になった。

「こちらこそ! 竜司先輩のおかげで、この町の真実を知ることができました!」

 神上未咲がハキハキと答えた。

「ところで、竜司先輩はあたしのこと、好きですか?」

 そして、顔を赤らめながら俺に訊いてきた。

 神上未咲には、何度も言いなりにさせられた。

 そのせいで、俺の心はズタボロだ!

 だが、神上未咲のおかげで俺はここまで来れた。

 神上未咲がいなければ、この事件に対してただ疑問に思うだけで、終わっていただろう。

 それに、神上未咲の明るいところは嫌いじゃない。

「ああ……大好きだよ……」

 俺は静かに答えた。

 途端に、俺たちが立っていた『神上家』の屋敷が白い粒子になって消滅した。

 これで、結城の死から始まった『杖』の事件は無かったことになるのか……

 神上未咲と共に、過した日々も……

「では、竜司先輩!」

 白い粒子が飛び交う中で、神上未咲が笑顔で言った。

「今までありがとうございました!」

 その言葉を最後に俺の意識は途切れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ