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クオリファイア・ロッド  作者: 斜志野九星
第6章 クオリファイア・オブ・ロッド
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第50話 ドミネーターズ・ロッド

「な……何で……」

 モニターの中の飯地が、突然の出来事に驚愕する。

 唐突に、神上達雄は『魔女』になるはずの結城を殺した。

「何で、結城を殺したんだよ!!」

 飯地は涙を流しながら喚いた。

 俺もその場にいたら、同じようになっていただろう。

「泣く心配はありませんよ。『魔女』、目を覚ましてください」

 神上達雄がそう言うと、結城が目を開けた。

 だが、その目には生気は感じられず、何も見ていないようだった。

 表情はまさに無という表現が一番合い、とても生きているようには見えない。

「ほら、この通り。結城花帆君はただいまを持って『魔女』となりました」

 神上達雄は笑って言った。

「結城! 結城! 俺の事が分かるか!?」

 飯地は泣きながら、床を這って結城の顔の前に行った。

「……」

 だが、結城は無言で、微動だにしない。

「結城!! 返事をしてくれぇ!!」

 飯地は泣き喚きながら、結城の肩を揺すった。

 結城は何も感じないようで、何の反応もしない。

「ああ……五月蠅いですねえ!!!」

 突然、神上達雄が飯地の首を掴んだ。

「まだ分かんねえのか!! このガキが!!」

 そして、そのまま結城とは反対の方向に飯地を投げ飛ばした。

 今までの丁寧な口調から、乱暴な口調に変わっている。

「君の知ってる結城花帆はもういねえんだよ!! 『杖』を使うための生贄即ち『魔女』になったからなあ!!」

 飯地の首を絞めながら、神上達雄がドスの利いた声で怒鳴った。

 『杖』を使うための生贄が『魔女』?

 それっていったい……

「いやあ、これでしばらくの間『神上家』は安泰だなあ!! 『杖』の力を独り占めできるぜ!! クヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」

 神上達雄が狂ったような笑い声を上げた。

 『杖』の力を独り占めできるだって!!

「『杖』は……『魔女』は……木丈霞町のためにいるんじゃないのかよおぉ!!!」

 飯地は泣きながら、神上達雄に訊いた。

「はああ!? そんな都合の良いもんあるわけねえだろ!!!」

 神上達雄が、飯地を殴り飛ばした。

「『杖』は俺たち『神上家』のもんだ!! 昔、木丈霞町に『杖』で城を建てた武将から、私の先祖が『杖』を奪ったその時からなああ!!!!」

 いつだか神上未咲が話していた、一晩で現れ翌晩に姿を消した城。

 その正体は、『杖』で作った城だったのか……

「この町は未来永劫『杖』の城下町だ!! 『杖』が俺たち『神上家』の手にある限りはな!!」

 『杖』の城下町……

 杖という漢字を木と丈に分解して、丈を城と合わせて、下を当て字にすれば……

 木丈霞町……

「全く何でこんな簡単なことにこの町の住人は気が付かないかなあ? まあ、『杖』で人間の記憶を操っているからだけどな!! ギャッハッハッハッハッハッ!!!」

 『杖』で人間の記憶を操っているだって!?

「何で……何で……『魔女』に結城を選んだんだよおぉ!!」

「ああ? そんなことかあ……」

 飯地の泣きながらの問いに神上達雄は怠そうに答えた。

「『杖』を扱える奴が、死んでも意志を保ち続けられる人間だからなんだよ……」

 死んでも意志を保ち続けられる人間……?

「人は死んでも少しの間は意識があるんだ。まあ、大抵の奴らは死んだ時のショックで意志がパアになっちまうけどなあ」

 神上達雄が言っていることの意味が分からない。

 だったら何で結城が『魔女』に選ばれたんだ?

「そんな奴を探すのは苦労するぜえ……臨には迷惑をかけちまったな……」

 そして、神上達雄は一呼吸置いて言い放った。

「何せ、あいつに女を虐めさせて、『魔女』の資格がある奴を探らせていたからなあ!!!」

 何だって……

 神上臨が虐めをしていたのは、『魔女』の資格がある人間を探すため……?

 『杖』を使うには、死んでも意志を保ち続ける人間が必要……

 まさか!!

「結城花帆は、あいつの虐めに唯一屈しなかった!! 死ぬような虐めを受けてもこの女は屈しなかった!! だから、こいつは『魔女』に選ばれたんだよ!!」

 俺の予想通りの答えを、モニターの中の神上達雄が言った。

 確かに結城は神上臨の虐めには一度も負けなかった。

 それが、『魔女』に選ばれた理由かよ……

「まあ、もし見つかんなかったとしても、黒服の奴らに虐めさせていた予備の未咲がいるから、問題はなかったけどな!! グヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」

 神上達雄がまた笑い飛ばした。

 『魔女』の名簿に書かれていた「予備・・・神上 未咲」とはそういうことだったのか……

「うっ……ぐっ……」

 真実を知った飯地は、床に泣き崩れた。

「さあて、『杖』の真実を知った君には死んでもらわないとなあ」

 そう言って、神上達雄は飯地に拳銃を向けた。

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 突然、飯地は悲鳴を上げて本当の『魔女』の社から出ていった。

「っち、逃げやがった。まあいい。明日の今頃には、『魔女』が『杖』に馴染んで、結城花帆の記憶を消しちまえるからな!!」

 神上達雄が舌打ちをしたが、すぐに余裕の笑みを浮かべた。

「ギェッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!」

 『魔女』となった結城は、『杖』を握ったまま呆然と『魔女』の社の中で座っていた。

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