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クオリファイア・ロッド  作者: 斜志野九星
第2章 アムニジア・ロッド
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第5話 シーカー・オブ・ロッド

 俺は、飯地が何故『杖』を持っていたのか考えた。

 飯地が、『神上家』から盗み出したのか?

 だとしたら、飯地はどうやって『神上家』の警備を潜り抜けたんだ?

 それに飯地が『杖』を奪ったのだとしたら、『魔女』になった結城から奪ったことになる。

 しかも、結城は何者かに殺されている。

 となると、飯地が結城を殺して『杖』を奪った……

 いやいや。

 まさか、あいつがそんなことをするはずがない。

 飯地は、はっきり言ってしまえばコミュ障だ。

 俺や結城みたいな幼馴染相手の場合は別だが、それ以外の人と喋ろうとすると何も喋れなくなる。

 そのせいで、飯地のことを毛嫌いする人は大勢いる。

 だが、飯地と仲が良い人たちは口を揃えてこう言う。

 飯地はすごく優しい。

 決して人に危害を加えるようなことはしないし、悪口も言わない。

 そして気が利き、よくムードメーカーみたいなポジションに納まっている。

 だからこそ、飯地が人を殺したりするなんてことは考えられない。

 ましてや、『魔女』という偉大な人物を殺すなんてことは、もっと考えられない。

 気掛かりなのは、飯地は結城のことを異性として好きであるということ。

 結城に何かあると、あいつは酷く動揺する。

 今回もそれで……

 でも、結城は『魔女』になったわけだし、飯地が動揺する理由が思いつかない。

 ひょっとして、誰か別の人が結城を殺して、何かの弾みで飯地の元に『杖』が行ってしまったのかもしれない。

 いや待てよ。

 それだと、飯地が『杖』で魔法を使える理由が分からないぞ。

 どうしたものだろう……


 いつの間にか、商店街まで来ていた。

 俺の家と『魔女』の社を繋ぐ最短ルートを通ると、その間に商店街がある。

 ただ、道が狭いし人が多いし車は通るし等々の理由で、普段は少し遠回りしている。

「なんか買って帰るか……」

 落ち着きたいから、アイスが食べたい。

 近くにある駄菓子屋に行こう。

 だが、決めたはいいものの、それを実行に移すことはできなかった。

 前から黒服の男が2人来たからだ。

 この町で黒服の男と言えば、『神上家』の黒服以外まずありえない。

 しかし、『神上家』の黒服は、『魔女』の社の警備にかかりきりで普通は外にいない。

 何か嫌な予感がした。

 特に理由があるわけではないが、直感というやつだ。

 俺は後ろを見た。

 後ろにも『神上家』の黒服が2人いた。

 しかもこちらに向かってくる。

 逃げなくては……

 俺が走り出すと、後ろの『神上家』の黒服たちも走り出した。

 前から来た『神上家』の黒服たちは、身構えているような態勢を取っている。

 間違いなく、俺が狙われている!

 何でだ!?

 と思う間もなく、俺は『神上家』の黒服たちに捕らえられてしまった。

「逃げるなんてどういうことかな? 伊阪竜司君」

 取り押さえられた俺の前にスラッとしたイケメンが現れた。

 そのイケメンは、木丈霞町で神上達雄に並ぶほどの有名人だった。

 イケメンの名前は、神上(しんじょう) (のぞむ)

 神上達雄の息子で、次期『神上家』頭首。

 木丈霞中学校に通う中学3年生で、中学校を思うがままに牛耳っている。

 彼に目をつけられた生徒は、陰湿な虐めを受けたり酷い嫌がらせを受ける。

 俺の知り合いでも、1人だけ彼に目をつけられた生徒を知っている。

 その生徒の名前は、結城花帆。

 結城は、この男が主導する虐めの一番の被害者だった。

 だが、結城はその虐めに一度も屈しなかった。

 そのせいで、神上臨の虐めはどんどんエスカレートしていった。

 そんな時、結城は『魔女』に選ばれた。

 神上臨にしてみれば、自分が最も嫌っている人間が自分が守護しなくてはならない人間になって、いい気持ちはしないだろう。

「伊阪竜司君。『杖』のことで何か知らないかな?」

 神上臨は表向き笑顔で、俺に迫ってきた。

「し、知らないですよ、先輩」

 俺は恐怖で口が震えてしまったが、何とか答えることができた。

「そうかあ。でも、父さん曰く君が一番怪しいらしいんだよねえ……」

 俺が怪しい!?

 いったい、それはどういう……

「ねえ、伊阪竜司君」

「は、っはい……」

「結城花帆って誰だい?」

 衝撃の一言が俺の耳に入ってきた。

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