第40話 プリパレーション・トゥ・リカバー・ロッド
屋敷の敷地に入ると、『神上家』の黒服たちが走り回っていた。
いったい、何をしているんだ?
「誰だ、中に入れた奴は……五月蠅い奴らは入れるなって指示だったのに……」
『神上家』の黒服の1人が俺に気付いた。
屋敷を包囲している人たちと一緒にされたくないんだが……
「あの、神上未咲に会いたいんですけど……」
俺は『神上家』の黒服に、自分が来た目的を伝えた。
「え? あー、未咲ね……」
『神上家』の黒服は、そう言って屋敷の中に入っていった。
俺が言ったことはちゃんと伝わったのかな?
タッタッタッタッタッタッタッ……
しばらくすると、屋敷の中から走る音が聞こえてきた。
「竜司先輩!」
神上未咲が飛び掛かりそうな勢いで、走ってくる。
そのままのスピードだと、俺に激突するぞ!
「うわっ!!」
俺は驚いて後ずさった。
少しは自重してくれ……
「もう……屋敷の周りを囲まれたので、竜司先輩に会いに行けませんでしたよ!」
神上未咲は膨れっ面で、俺に言ってきた。
やっぱり、そうだったのね……
「寂しかったのですよ! 黒服の人たちは、父さんや兄さんと一緒に『杖』を取り戻す最終作戦の準備をし始めますし……」
神上未咲は余程ストレスが溜まっていたのか、俺に今の『神上家』の状況を話してくる。
『杖』を取り戻す最終作戦だって!?
「なあ、未咲……」
「はい!!」
「その『杖』を取り戻す最終作戦って、いったい何なんだ?」
最終作戦というからには、何かとんでもないことをしようとしているんじゃないか?
「知りません!」
神上未咲がハキハキと答えた。
うーん……
「おい! 拳銃は揃ったか?」
「大丈夫だ。『杖』を奪った奴を蜂の巣にしてやろう!」
『神上家』の黒服たちがそんなことを言いながら、俺たちの脇を通っていった。
拳銃って、まさか飯地を殺して『杖』を取り返す気じゃないだろうな!?
「未咲、『神上家』は力づくでこの事件に決着を付けようとしているぞ……」
「えっ!?」
いや、さっきの会話を聞いていれば分かるだろ……
「早くしないと、『神上家』に先を越されるかもしれないな……」
「そんな!」
俺が呟くと、神上未咲が涙目になりながら俺を見た。
神上未咲の目的を考えれば、『神上家』に先を越されることは由々しき事態だ。
もう二度と、神上未咲は『神上家』の真実を知ることができなくなってしまうかもしれない。
そんなことよりも問題は、俺の方だ。
神上未咲の目的が達成できないと、神上未咲が持っている『杖』を持った飯地と俺が会話をしている監視カメラのデータが『神上家』に渡ってしまうかもしれない。
そうなれば、俺の人生は破滅だ。
何としても、神上未咲の目的を後押ししなければ……
しかし、どうしたものか……
全然、良いアイデアが思いつかない。
「何か良い方法、ありませんか?」
神上未咲が俺に訊いてきた。
今、全力で考えているの!!
うーん……
「未咲が、『神上家』の最終作戦に協力するしかないかもしれない……」
正直、だいぶ投げやりな答えだが、これくらいしか思いつかない。
「ええ……」
神上未咲は凄く不満そうだ。
かと言って、これ以外に何も思いつかないぞ……
「まあ、いいです。兄さん呼んできますね!」
神上未咲がそう言って、屋敷の中に入っていった。
え!?
神上臨と喋るの!?




