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クオリファイア・ロッド  作者: 斜志野九星
第2章 アムニジア・ロッド
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第4話 ガーディアン・オブ・ロッド

 俺は急いで、『魔女』の社に向かった。

 母さんから告げられた衝撃の出来事を確かめるためだ。

 信じられない……

 結城が殺されただって?

 いったい、誰なんだ……

 自分の未来を犠牲にして俺たちの為に『魔女』になった結城を殺した奴は……

 しばらくすると、『魔女』の社に着いた。

 やはりと言うべきか、たくさんの人だかりができている。

「神上さん! 『魔女』が死んだって本当ですか!?」

「『魔女』がいなくなったら、私たちはどうなってしまうんですか!?」

「助けて下さい! 『魔女』が必要なんです!」

 人々は、1人の男に詰め寄っていた。

 その男は、この木丈霞町で知らない人はいない程の有名人だった。

 神上(しんじょう) 達雄(たつお)

 『神上家』の現頭首で、『魔女』を守護する責任者でもある。

「みなさん、落ち着いてください。現在、『魔女』の後継者となる人物を探しておりますので、もうしばらく、もうしばらくお待ちください」

 神上達雄は、台の上に立ち、来ている人たちを説得していた。

 本当に結城が死んだか、訊いてみないと……

 俺は神上達雄に詰め寄っている人々の中に入り込み、できる限り神上達雄に近付いた。

「すみません! すみませーん!」

 手を振って大声で神上達雄を呼んだ。

 だが、周りの人の声が大きくて、全然聞こえていないみたいだ。

 もう少し、近づかないと……

「すみませーーーーーーーん!!!」

 人をかき分けて、更に近づいた。

 他の人たちに、凄く怒った目で見られた。

 怖い……

「……あ? 何ですか?」

 ようやく聞こえたみたいだが、今度は神上達雄に睨まれた。

 一瞬、怯えてしまいそうになったが、チャンスは今しかないと思って訊いてみた。

「あの、結城って本当に死んだんですか?」

 発言した途端、神上達雄は顔をゆがめた。

 こいつ何言っているんだ?

 という顔をしている。

「結城?」

「結城花帆です」

 結城のフルネームを言っても、神上達雄は首を傾げていた。

 何で分からないんだ?

 仮にも『魔女』の守護と『魔女』に関わる儀式を執り行う『神上家』の頭首なのに……

 このままだと、埒が明かないので、質問を変えてみた。

「あ、いえ……『魔女』って本当に死んだんですか?」

 結局、周りの人たちと同じ質問になってしまった。

 神上達雄は、その質問を聞くなりゲンナリしてから、

「あああああ! 言っているでしょ! 『魔女』が死んだので、後継者を探していますって!」

 大声で怒鳴った。

 俺はその時の神上達雄の気迫に押されて、人ごみに呑まれてしまった。

 人をかき分けて近づいていったのが祟ったのか、どんどん後ろに追いやられた。

 最終的に、神上達雄に詰め寄っている人々の集団から追い出されてしまった。

「これから、どうするんですか!?」

「『神上家』はいったい何をやっているんですか!?」

「木丈霞町の恥さらしめ!!」

 だんだん神上達雄への質問が、罵倒に変わっている。

 俺は、別に『神上家』を責めるつもりはない。

 それに結城の死が確かめられたから帰ることにした。

「おい! 何か言ったらどうだ!?」

「神上さん! はっきりしてください! 本当はどうなんですか!?」

「『魔女』を出せ!!」

 『魔女』の社の敷地を出ても、罵倒の声は聞こえてくる。

 流石に五月蠅いと思う。

ビュォォォォォォォォォォォォ!!

「うわっ!」

 突然、強風が吹いてきた。

 身体が持ってかれそうになるくらいの凄い風だ。

 俺は近くにあった電柱に掴まり顔を手で覆った。

ヒュゥゥゥゥゥゥゥ……

 しばらくすると、風は止んだ。

 もう少し長く吹いていたら、吹き飛ばされていたかもしれない。

「何なんだ。今の風は……」

 電柱から離れ、顔を上げた。

 さっきまでとは違う光景が目に入ってくる。

「なあ、伊阪。『魔女』っていったい何なんだ?」

「え?」

 いつの間にか、俺の前に飯地がいた。

 だが、いつもの飯地とはまるで違った。

 着ている制服は、ボロボロでところどころ変色している。

 腕や手には、幾つもの傷があり、痣になっているところもある。

 そして、顔は青ざめ、目に光はない。

 そんな姿の飯地が、目の前にいた。

「結城は、あんなものになるために、自分を犠牲にしたのか?」

 飯地が俺に問いかけているとも、飯地が飯地自身に問いかけているようにも聞こえた。

 あんなもの?

 『魔女』を、あんなものだって?

「飯地……いったい何を言っているんだ?」

 『魔女』をあんなもの呼ばわりするなんておかしい。

 俺は試しに質問してみることにした。

「俺が言って、お前が理解できると思うか?」

 飯地に質問で返された。

 というか、明らかに喧嘩を売られている。

「あ? 確かに俺はお前より頭が悪いけどな……」

 俺は飯地に近付こうとした。

 その瞬間、飯地が信じられないものを取り出した。

 それは、柄の先端に摩訶不思議な色をした玉がある棒だった。

 まるで、魔法使いが使う魔法の杖……

「おい、お前……」

 実物を見たことがない俺でも分かった。

 飯地が持っている物は間違いなく、『魔女』が魔法を使うための道具『杖』だった。

 『杖』に付いている玉が光る。

 同時に凄まじい強風が吹き荒れた。

「うわっ!」

 俺は再び電柱に掴まった。

 強風が吹き止み、飯地が立っていた場所を見ると、そこには誰もいなかった。

 何で、飯地が『杖』を持っているんだ?

 そして、飯地が魔法を使った?

 『魔女』でもないのに……

 いったい、何がどうなっているんだ?

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