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クオリファイア・ロッド  作者: 斜志野九星
第5章 ストラグル・アゲインスト・ロッド
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第39話 クリティシズム・トゥ・ロッド

 『神上家』の屋敷が近くなると、何だか騒がしくなってきた。

 どうやら、『魔女』の社の方から聞こえてくるみたいだ。

 『魔女』の社といっても、偽の『魔女』の社の方だ。

「おい! 『杖』が盗まれているなんて聞いてなかったぞ!」

「どういうことだ!? 説明しろ、『神上家』!!」

「もう、私たちは終わりなのですか!?」

 行ってみると、『魔女』の社の前……というより『魔女』の社を含めた『神上家』の屋敷の周りを、木丈霞町の人々が包囲していた。

 そして、『魔女』の社と『神上家』の屋敷に向かって、罵声を飛ばしていた。

 前回聞いた罵声より、酷いな……

「あの、すみません」

 俺は気になることがあったので、近くを通った老人を呼び止めた。

「え?」

「『魔女』の社の周りがあんなに五月蠅くなったのって、いつからですか?」

「昨日の夜からずっとだよ。五月蠅くて、わしは気持ち良く眠れなかったよ」

 老人は大層疲れているようだった。

 目の下に隈がある。

「そうですか。ありがとうございます」

「あいつらには気を付けるんだよ。何をしでかすか分からん」

 そう言って、老人は俺から離れていった。

 これで、神上未咲が俺の家に来なかった理由が分かった。

 『魔女』の社と『神上家』の屋敷の周りを囲まれていて、屋敷から出られなかったんだ。

 しかし、困ったな……

 神上未咲に会えないぞ……

「達雄様のお通りだ! 道を開けろ!」

 突然、『神上家』の屋敷の方から声が聞こえてきた。

 内容的に、『神上家』の黒服が発した言葉だろう。

 『神上家』の屋敷の入口の方に行ってみるか……


「『魔女』の守護もできず、『杖』の管理もできず、何が『神上家』だ!!」

「この町からいなくなれ!!」

 五月蠅い……

 仕方なく『神上家』の屋敷を包囲している人たちの近くを通ったが、本当に五月蠅い。

 これが昨日の夜からずっととか、『神上家』の人たちもそうだが、近所の人たちもよく耐えられたな……

 それとも、近所の人たちも屋敷の包囲に加わっているのか?

「おい! どけ! 達雄様は仕事があって忙しいのだ!」

 『神上家』の黒服たちが、包囲している住民たちを押し退けようとしていた。

「何だと!? この無能の『神上家』が何を言い出すか!!」

「『神上家』の頭首の安全より、まずは『杖』を探したらどうだ!!」

「この木丈霞町の恥さらしめ!!」

 だが、『神上家』の黒服たちに対して、包囲している人たちの方が圧倒的に多かった。

 例え『神上家』の黒服たちが並の人間より強かったとしても、この人数を押し退けることは簡単ではないだろう。

 ちょっとずつ、神上達雄が乗っているであろう車が前進しているが、黒服たちは人々に押されている。

 しばらくすると、車の窓が開いた。

 1人の『神上家』の黒服が窓に近寄り、神上達雄からの指示を訊いているようだ。

 そして、

「我々がいなくなると、二度と『魔女』は現れないぞ!!!」

 人々の罵声をかき消す程の大声が辺りの空気を震わした。

 途端に、『神上家』の黒服の周りにいた人々が静かになる。

 その隙をついて、車が急速発進した。

「うわっ!」

 突然の出来事に人々はただ避けるしかなく、神上達雄の車はまんまとその場から去っていった。

「あ……待て!!!!」

 『神上家』の屋敷の入口付近にいた人々は、それに気づいて車を追いかけていった。

 罵声はまだなくならなかったが、入口付近の人々はいなくなった。

 屋敷に入るには今しかないか……

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