第33話 ガーディアン・ディエティ・フォア・ロッド
「まず、2人とも地蔵ってどんなものか知っているかな?」
本条さんが、俺と神上未咲に訊いてきた。
なんか道端にあるなーって程度にしか感じていなかったな。
地蔵について考える機会なんてないし……
「よくは知らないですね……」
「何か役割とかあるんですか?」
地蔵のことを全く知らないので、俺は本条さんに訊いた。
「役割と言うか本来は、民衆の信仰の対象なんだ」
本条さんが答えた。
ていうか、だいぶ噛み砕いて説明してくれているな……
「現代だとほとんど道に立っているだけになっているけどね」
本条さんが、さっき俺が思ったことを言った。
やっぱり、そうなんじゃん。
「まあ、だいぶ簡単な説明になっちゃったけど、ここまでが普通の地蔵の話だ」
普通の地蔵の話?
何か特別な地蔵でもあるのか?
「じゃあ、木丈霞町の地蔵は、普通じゃないのですか?」
神上未咲が、本条さんに訊いた。
え?
それって、いったい……
「そのとおり。木丈霞町の地蔵の極僅かは普通のなんだけど、大多数が普通じゃない」
本条さんが、シリアスな口調に変えて言ってきた。
「木丈霞町の地蔵のほとんどは、ただの目印だ」
「目印? 何の目印ですか?」
「『魔女』が『杖』を使って儀式をするためのだ」
神上未咲の質問に本条さんが答えた。
「『魔女』が強力で広範囲に影響を及ぼす魔法を使うためには、『神上家』があらかじめ『魔女』への供物や生贄を用意しなくちゃならない。その供物や生贄を置く場所の目印となっているのが地蔵だ」
『神上家』はそんなこともするのか……
初めて知った。
「何で、そんなことを本条さんが知っているんですか?」
「『神上家』が地蔵の近くに動物の死体を置いているところをこの目で見た。その後、動物の死体から光が出て、周囲に拡散した。そんなことができるのは、『杖』くらいしかないだろ?」
本条さんが淡々と答えた。
そんなことがあったのか……
でも、俺は今まで一度も見たことがない。
何でだ?
「おそらく、地蔵の近くに物を置くことで、魔法が効く範囲を決めたり、その物から力を貰ってより強力な魔法を使えるようにしているのだろう」
本条さんの話し方の感じからすると、憶測がだいぶ混じっているみたいだ。
でも、本条さんの説明の通りだとすると、飯地の行動にも納得がいく。
飯地は、『杖』を使った儀式をするために人々を奇妙な状態にしているんだ。
まだ何を狙っているのかが分からないけど……
「あの、『杖』を持っている犯人は木丈霞町の北の山の麓と東の山の麓の地蔵の前で、人を動けなくさせているんですけど、犯人が何を狙っているのかとか分かりますか?」
俺は本条さんに訊いた。
「何だって!? 今、何処と何処って言った!?」
「北と東の山の麓です」
「それは……その犯人は大変なことを狙っているぞ!!」
大変なことを狙っている?
飯地がやろうとしていることは、そんなに大変なことなのか!?




