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クオリファイア・ロッド  作者: 斜志野九星
第2章 アムニジア・ロッド
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第3話 スピリティング・アウェイ・ロッド

 夏休みに入って、俺はじいちゃん家に来ていた。

 あんな田舎の町にいるより、山を下りてデパートとかがたくさんあるところにいる方がずっと良い。

 空気は、木丈霞町の方がおいしいけど……

「今日は、何をして遊ぼう……」

 じいちゃん家にいる間は、毎日遊び放題だ。

 来年受験生だとか、そういうことは忘れよう。

プルルルルルルルルルルル……

 電話だ……。

 あいにく、じいちゃんは山へ畑仕事に、ばあちゃんは川へ趣味の釣りをしに行っているので、俺が出るしかない。

ガチャッ

「はい、もしもし」

「あ、竜司!?」

 電話に出た途端、母さんの声が俺の耳に響いた。

 すごく慌てているみたいだ。

「ど、どうしたの?」

「今すぐ、帰ってきて!! 大変なことになったの!!」

「大変なこと?」

「とにかく、さっさと帰ってきてちょうだい!!」

「ええ……」

「帰って来るの!! いいわね!!」

 母さんはそう言って、電話を切ってしまった。

 ガチャンという音が俺の耳に残る。

 帰りたくないなー……。

 でも、母さんを怒らせると怖いからなあ……。

「竜司、帰ってきたぞー」

 大きな声が聞こえてきた。

 じいちゃんが、帰ってきたみたいだ。

「竜司、今日は何処に遊びに行くんだ?」

 さっきの電話がなければ、俺は「今日は、○○に遊びに行く」と言って何処かへ遊びに行くんだけど……

「じいちゃん。母さんに帰って来いって言われた……」

 母さんに歯向かうわけにはいかなかった。

 俺はじいちゃんに事情を説明した。

 じいちゃんの車で、木丈霞町まで送ってもらうことになった。


「唐突に帰ってこいとは、いったいどういうことなんだろうな?」

 車を運転しているじいちゃんが、俺に訊いてきた。

「なんか、大変なことになったって言っていたけど……」

 あの慌て様は尋常ではなかった。

「あの町に行ってから、(さや)は変になっちまったな……」

 じいちゃんが、呟くように言った。

 ちなみに、彩というのは母さんの名前。

 伊阪(いさか) (さや)が母さんのフルネームだ。

「あの町に行くなと言ったのに、男に惚れて行っちまいやがった……」

 じいちゃんは、木丈霞町のことが大嫌いだ。

 昔、ばあちゃんが教えてくれたことなんだが、じいちゃんは母さんのことをとても可愛がっていたらしい。

 しかし、母さんは生まれも育ちも木丈霞町の父さんと結婚してから、じいちゃんとばあちゃんを毛嫌いするようになった。

 じいちゃんはじいちゃんで、母さんが自分たちを嫌う理由を木丈霞町のせいにしている。

「挙句の果てになんだ……? これからは『魔女』を信じますだ!? ああっ!!?」

 母さんは、俺の家族の中で一番『魔女』を信じている。

 対して、じいちゃんはそれに対抗するみたいに、木丈霞町を怪しむ人々とつるんでいる。

 そのおかげで、じいちゃんが前より元気になったと、ばあちゃんは笑っていたけど……

「あの男も胡散臭……もうすぐ、着くぞ」

 いつの間にか、木丈霞町とその外を繋ぐトンネルに入っていた。

「トンネルを出たところにある駐車場に止めるから、後は歩いて行けよ」

 じいちゃんは、あまり木丈霞町に居たくないみたいだ。

 俺は車から降りて、じいちゃんを見送った後、歩いて家を目指した。

 流石田舎の町と言うべきか、全然人に会わない。

 だが、どういうわけか、いつもより騒がしい。

 お祭り騒ぎとかの類ではなく、何かパニックに近いような雰囲気だった。

 そんなことを思いながら歩いていると、家に着いていた。

「ただいま」

 家に着くと、母さんが青ざめた顔で向かってきた。

「竜司! もう、大変なのよ!!」

 相変わらず、母さんは大変しか言わない。

「いったい、何があったの? 無理矢理帰らされて、何もなかっただったら怒るよ」

 イライラしながら言った。

「あああああああ、ごめんね」

 母さんは謝った後、深呼吸をして落ち着いた。

 落ち着いたのが、外面だけな気もするけど……

「あのね……、『魔女』が殺されたの!!!!」

 母さんの大声が、家中に響いた。

 嘘だろ……。

 結城が……殺された?

 そんな……

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