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クオリファイア・ロッド  作者: 斜志野九星
第3章 ファブリケイション・オブ・ロッド
24/58

第24話 インサージェント・オブ・ロッド

 家に帰ると、母さんが心配そうな顔をして駆け寄ってきた。

「遅かったわね。いったい、何をしていたの?」

 母さんは何だか機嫌が悪いみたいだ。

「朝うちに来た子と一緒に、町を回っていただけだよ」

 俺はだいぶ詳細を省いて答えた。

「あらそう……。未咲ちゃん、竜司に凄く会いたそうにしてたから……」

 母さんは、溜め息混じりに言った。

 え?

 神上未咲が、俺に会いたそうにしていた?

 ただ俺と飯地に関わりがあるから、事件の解決に協力させようとしていただけだと思っていたんだけど……

 いや、だから会いたそうにしていたのか?

 早く事件を解決して、神上達雄に認めてもらうために……

「そんなことより、母さん。不機嫌みたいだけど、何かあったの?」

 俺は母さんのムスッとした顔が気になった。

「何かあったですって!? 他人事だと思って!!」

 すると、突然母さんが怒鳴りだした。

 え、なに!?

 俺が原因なの!?

「お父さんから電話があって、「いったい、いつになったら竜司は戻って来るんだ?」ですって!! 竜司は私の子供なのにねえ?」

 母さんは俺を見ながら、自分の正当性をアピールした。

 原因はじいちゃんだったか……

 まあ、理由も何も知らされず孫を唐突に帰らされて、その後音沙汰もなければ心配するだろう。

 ここのところ忙しかったから、全くじいちゃんに連絡を入れてなかった。

 それはそうと、母さんのさっきの態度はいったい何なんだろう?

 母さんに俺が夏休みにいる場所まで縛られる道理はどこにもない。

「そういえば、帰ってきてからじいちゃんに連絡してなかった。……後で電話するよ」

 俺はそう言って、一旦自分の部屋に行った。


 母さんは、いなくなったかな?

 俺はソロリソロリと電話がある場所まで向かった。

 何でこんなことをするのかというと、母さんがいる前でじいちゃんに電話をすると凄い剣幕でジロジロ見られるからだ。

 とてもそんな中で、電話したいとは思わない。

 だから、俺は母さんが何処かに行くまで、自分の部屋に籠っていた。

 本当にいないな?

プルルルルルルルルルルルルル……

 後は、じいちゃんが電話に出てくれればいいんだけど……

プルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル……

 あれ?

 ひょっとして、じいちゃんもばあちゃんも寝ている?

 困ったなあ……

 明日の朝かけなおすにしても、明日も神上未咲と一緒に『杖』の事件を調べに行くだろうし……

 ん?

 そういえば、じいちゃんは木丈霞町を怪しむ人たちとつるんでいるって話を、ばあちゃんから聞いたことがあるな。

 ひょっとしたら、『杖』とか『魔女』に詳しい人もいるんじゃないか?

 じいちゃんが出たら、訊いてみるか。

プルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル……

 ……

 遅い!!

 これはしばらくの間、連絡取れないかもしれないなあ……

プルルルル、ガチャッ

「はい、もしもし」

 じいちゃんが電話に出た。

「もしもし、伊阪竜司です」

「おお、竜司か! どうだ、元気か?」

 じいちゃんは俺が電話に出ると嬉しそうに訊いてきた。

「うん、元気だよ」

「彩に変なことされてないだろうな?」

 じいちゃんは、俺が母さんに何かされたんじゃないかと思っているみたいだ。

 じいちゃんといい、母さんといい、妙な疑いを抱く。

 流石、親子。

「大丈夫だよ。そんなことより、じいちゃん。じいちゃんって確かうちの町を怪しんでいる人たちと友達なんだよね?」

 俺はさっき思いついたことを実行した。

「へ? はっ!? 竜司、いったいお前誰からそんなことを聞いた?」

 じいちゃんは、酷く狼狽えているようだ。

 あまり知られたくなかったのかな?

「ばあちゃん」

 俺が答えると、じいちゃんは溜め息をついて、

「……後で懲らしめてやろ」

 と呟いた。

 まあ、じいちゃんとばあちゃんの仲は良好だから、せいぜい木刀を持って追い回す程度で済むだろう。

「それでさ、そのじいちゃんの友達の中に『杖』とか『魔女』とか『神上家』について調べている人っていないかな?」

 俺がその質問をすると、受話器から鼻息を思いっきり出す音が聞こえてきた。

「いるぞ。俺の仲間全員が、今お前が言ったことを調べている。何なら、明日何人かに俺の家に集まってもらうように頼もうか?」

 じいちゃんが自信満々に答えた。

 明日!?

 急すぎるぞ!!

「あ、いやちょっと待って」

「いやあ、竜司が『神上家』を疑い出すとは思わなかった! めでたい!」

 制止しようとしたが、じいちゃんの耳には入っていないみたいだ。

「じゃあ、明日うちに来てくれよ!」

 そう言って、じいちゃんは電話を切ってしまった。

 しまった……

 これは行くしかない……

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