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クオリファイア・ロッド  作者: 斜志野九星
第3章 ファブリケイション・オブ・ロッド
19/58

第19話 ヴァーテックス・ロッド

「ふぅ~」

 俺は、『神上家』の屋敷の外庭にあったベンチに座って溜め息をついた。

 疲れた……

「大丈夫ですか?」

 神上未咲が俺の隣に座った。

 隣に座らないでくれ……

 余計に疲れる……

「今日はよく動いたから疲れただけだ。そんなことより……」

 自分が情けなく感じる。

 そんなことより、俺にはしなければならないことがある。

「さっきは本当に悪かった!!」

 俺は神上未咲にちゃんと謝った。

 さっきの醜態を揉み消すことはできないが、せめて謝ろう。

 神上未咲の言いなりになりたくないからという理由もあるが……

「別にいいですよ! 竜司先輩の新たな一面も見られましたし……」

 神上未咲は、快く許してくれた。

「でもやっぱり、竜司先輩は本当に優しいのですね!」

 そして、ニッコリして俺にこう言ってきた。

 何が優しいんだ?

 さっき、あんなことをしたのに……

「はあ……」

 俺は、どんな返事をしたらいいのか分からず、すごく曖昧な返事をした。

「何ですか? その微妙な返事は……。励ましたのにお礼の言葉もないのですか?」

 神上未咲は頬を膨らませて言った。

 え、えー……

 何でそうなるのー……

「あ、ああ、ありがとう」

 俺は神上未咲の願いどおりにお礼を言った。

 くそおおおおおおお!!

 結局、言いなりになってしまった。

 だが、今ので少しだけ調子が戻ってきた。

「ところで、俺が知らなそうな『神上家』の常識って何かあるかな?」

「常識ですか……?」

 よし、口調もだいぶ安定してきた!

 神上未咲は少し考えてから答えた。

「常識というか噂なんですけど、木丈霞町には昔、お城があったらしいのです」

「お城!?」

「はい。ちょうど、あたしたちがいる屋敷の敷地には、元々城があったらしいのです」

 木丈霞町に城ねえ……

 どこの武将かは知らないけど、よくこんなところを選んだものだ。

 理由は想像がつく。

 木丈霞町は、四方を山で囲まれた盆地の中にあり、隠密性が優れている。

 隠密性を重視して建てられた軍事工場があるくらいだ。

 同じ理由で、誰かが城を作ろうとしても不思議はない。

「ただ、そのお城が奇妙で、何と一晩で現れ翌晩に姿を消したと言われているのです!」

 神上未咲は、最後の方を興奮気味に言った。

「一晩で現れ翌晩に姿を消した? どういうことだ?」

「あたしも分かりません。小さい頃、父さんにそんな話をされただけですから!」

 俺は、その城の奇妙なところを神上未咲に訊いたが、分からないみたいだ。

 神上達雄がそんなことを言っていたのか……

「うーん。教えてくれて嬉しいんだけど、今回の事件の解決には繋がらなそうだな……」

 俺は少し考えてから言った。

「ごめんなさい。でも、『神上家』の常識と木丈霞町の常識の違いがよく分からなくて……」

 神上未咲は俺に謝った。

 確かに、さっき『神上家』が俺たちに嘘をついていることが分かっただけで、何処で『神上家』が嘘をついているのかは全然分からない。

 神上未咲と答え合わせをしてもいいが、常識を全部覚えているわけじゃない。

 その方法以外で、何か『神上家』の嘘が分かる方法があれば、事件の解決へと一歩進めるはずなんだが……

バタン!!

ダッダッダッダッダッダッダッダッダッ!!!!!

 突然、『神上家』の屋敷の玄関が開き、『神上家』の黒服たちが走って出ていった。

「な、何だ!?」

 俺は『神上家』の黒服たちの走る音に驚いた。

「黒服の人たちが、あんなにたくさん……。行きましょう! 竜司先輩!!」

 『神上家』の黒服を見た神上未咲が、立ち上がって言った。

「え、何で!?」

「黒服の人たちを大勢動かせるのは、父さんしかいません。きっと何かあったのです! 行きましょう!」

 神上未咲が俺の手を引っ張った。

 さっきは嫌がってなかったか?

 だが、もし神上未咲が言っていることが本当だとしたら、俺も行かざる負えない。

 神上達雄が黒服に招集をかけているのなら、神上未咲が言うように何かあった可能性が高い。

「よし、行こう!」

 俺は立ち上がり、神上未咲と共に『神上家』の黒服の後を追うことにした。

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