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クオリファイア・ロッド  作者: 斜志野九星
第3章 ファブリケイション・オブ・ロッド
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第18話 コモン・ノーレッジ・イン・タウン・オブ・ロッド

「ひっ、や、やめてください! いったい、どうしたのですか!?」

 神上未咲が泣きそうな顔で言った。

「とぼけるな!! 俺たちを騙しておいて、まだしらばっくれるのか!?」

 俺は神上未咲を壁に押し付け、怒鳴った。

 俺たち木丈霞町の人たちは、『神上家』に騙されていたんだ。

 今まで『魔女』の社だと思っていたものは、ただの置物で、俺たちはその置物に向かって願いを言っていたんだ!

 俺たちの声は、『魔女』に全く届いていなかったんだ!

 それにしても、偉大な『魔女』をあんな灰色の建物に閉じ込めているだって!?

 つまり、結城はあの無骨な建物に閉じ込められていたってことじゃないか!

 俺と飯地が結城にした約束はどうなるんだ!?

 結城は……結城は、本当の『魔女』の社の中で1人寂しく死んだのか!?

「な、何のことですか!?」

「本当は、全部知っているんだろ!? 結城が死んだ理由も!!」

 俺はもっと大きな声で怒鳴った。

「知らないですよぉ!」

 神上未咲は、まだとぼけている。

 何で俺は結城が『魔女』になることを止められなかったんだ!

 こんなことになると分かっていたら、俺は止めたのに!!

「うっ……うっ……」

 いつの間にか、目から涙が零れてきていた。

「竜司先輩……」

 だんだんと神上未咲を掴む力が弱くなっていく。

「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 俺は大声で泣いていた。

 『神上家』に騙されていたことが、悔しくて悔しくて俺は泣いた。


 どれくらい泣き続けたか分からない。

 いつの間にか、神上未咲に支えられて立っていた。

「竜司先輩、いったいどうしたのですか?」

 神上未咲は心配そうに俺を見ている。

 別に怒っているということは無さそうだ。

 よく、あんなことされて怒らないな……

「すまん。俺たちが『神上家』に騙されていることに気付いて、結城がその犠牲になったのかと思うと、怒りを抑えられなくなった」

 まだ、頭がうまく整理できていない。

 自分の発言が、微妙におかしい。

「騙されている?」

 神上未咲がキョトンとしている。

 まずは、それを説明しないといけないか。

「未咲は、神上達雄に本当の『魔女』の社が中庭にあるって教えられていたんだよな?」

「はい」

「でも、俺たち木丈霞町の人たちは、『神上家』の屋敷の外側にあるあの建物に『魔女』がいるって教えられていたんだ」

「え!? 木丈霞町の人たちは、あの建物が囮だと知っててあの建物に願いを言っていたのではなかったのですか!?」

 神上未咲は、どうやら俺が本当の『魔女』の社のことを知っていると思ってあんなことを言ったみたいだ。

 そりゃ、あんな風に言うわ……

「違うよ。第一、俺たちが偽の『魔女』の社と本当の『魔女』の社があることを『神上家』から聞いたことなんて一度もない」

 俺の発言に神上未咲は絶句している。

 自分の常識が周りの常識じゃなかったんだ。

 無理もない。

「まだ、何も解決に向かっていないけど、はっきりしたことがある」

「え?」

「もう、『神上家』は信用できない」

 俺が今出せる結論。

 この町の常識は、もう信用できない。

 特に『神上家』から出ている『魔女』や『杖』の情報は信用できなくなっている。

 『神上家』が嘘をついている可能性が高いからだ。

「え……それじゃあ、あたしはもう竜司先輩と一緒には……」

 神上未咲が、絶望したかのような発言をした。

「俺は『神上家』がって言ったんだ。別に未咲のことを信用しないとは言っていないよ」

 俺がフォローすると、神上未咲の顔は明るくなった。

「じゃあ、これからも一緒に事件を調査してくれますか?」

「もちろんだ。むしろ、一緒にいてくれた方が嬉しい」

 神上未咲がいなければ、『神上家』が嘘をついていることは分からなかった。

 それに『神上家』に関することは、神上未咲からしか聞き出せない。

 神上未咲のおかげで、この事件が解決に向かっていると言ってもいいくらいだ。

「これからもよろしくな。未咲」

「はい! これからもよろしくお願いします!」

 神上未咲が元気な声で返事をした。

「ところで、竜司先輩」

「何だ?」

「すごく疲れているみたいですけど、外庭で休みますか?」

 途端に、俺の身体を疲れが襲った。

 そういえば、俺は朝早く起こされ、長時間歩かされ、すごく重たい本を持たされ、さっきみっともない泣き方をした。

 夏休みにしては、すごく動いた。

 俺の身体には疲れがたくさん溜まっていた。

「ああ。ちょっと、休ませてくれ……」

 俺は神上未咲の意見に従った。

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