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クオリファイア・ロッド  作者: 斜志野九星
第3章 ファブリケイション・オブ・ロッド
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第17話 トゥルー・シュライン・オブ・ロッド

「何かありましたか?」

 神上未咲が、『魔女』の名簿を閉じるのを途中で止めている俺に訊いてきた。

「いや、何でもない」

 俺ははっとして、『魔女』の名簿を閉じた。

 神上未咲が、予備……

 あの感じだと、『魔女』の予備という意味にしか受け取れなかったけど……

 『魔女』の予備とは、いったいどういう意味だ?

 『魔女』は替えが利かない偉大な人物じゃないのか?

「竜司先輩?」

 神上未咲が何を考えているのだろうという目で俺を見ている。

 何かでまた言いなりにさせられるかもしれないけど、これは神上未咲に教えるべきじゃない。

 これが原因で、神上未咲がショックを受けて倒れてしまったら、俺は何と謝ればいいか分からない。

 俺の思い違いかもしれないし……

「さて、片づけるか」

 俺は『魔女』の名簿を持った。

「あっ、あたしも持ちます!」

 今度は、神上未咲も一緒に持ってくれることになった。


「ふぅ……」

「はぁ……はぁ……」

 俺たちは『魔女』の名簿を書庫に戻した。

「疲れました……」

 神上未咲が、息を切らしながら言った。

 まったくだ。

 使われていないページがほとんどだと言うのに、どうしてあんなに大きいんだろうか。

「これからどうしますか?」

「そうだな……。ちょっと、この屋敷を回ってみたいんだけどいいかな?」

「はい! 別にいいですよ!」

 神上未咲は笑顔で了承してくれた。

 本当にこの屋敷は、『魔女』の社を警備している『神上家』の屋敷なんだよな?

 いくらなんでも警戒しなさすぎじゃないか?

「でも、部屋には入らないでくださいね。よく分からない部屋とかありますし、入ってはいけないと父さんに言われている部屋もあるので……」

 厳しい条件がついたな……

 つまり、廊下しか回れないということか。

「分かったよ。その代わり、未咲も一緒に来てくれ」

「もちろんです!」

 神上未咲が嬉しそうに返事をした。


 俺は神上未咲と共に『神上家』の屋敷を回ってみて分かったことがある。

 1つは、謎の部屋が多すぎること。

 監視カメラを管理している部屋は、神上未咲が知っていたから分かったが、それ以外にも立入禁止の部屋がいくつもある。

 こんなに部屋を作っておいて、いったい何の意味があるんだろうか?

 もう1つは、『神上家』の屋敷の形だ。

 『魔女』の社をコの字に囲うように建っていると思っていたのだが、実際は違った。

 確かに『魔女』の社をコの字に囲ってはいたが、『神上家』の屋敷の中央に中庭があり、その中に灰色のあまりにも無骨な建物があるというのが真実だった。

 つまり、『神上家』の屋敷は丹の字の形をしていたことになる。

 何で、『神上家』は自分たちの屋敷の形を秘密にしていたんだ?

「なあ、未咲。中庭にある建物はいったい何なんだ?」

 俺は神上未咲に一番気になることを訊いた。

 部屋は、『魔女』の社の警備に使う機材とかが入っているんだろう。

 だが、中庭にある建物にはどんな用途があるんだろう?

 中庭の見栄えを良くするためにあるとはとても思えない。

 何しろ、見た感じ建物の材質はコンクリートだ。

 見栄えが良くなるどころか、悪くなっている。

「え!?」

 神上未咲が俺の発言が意外だと言う顔をした。

「竜司先輩、知らないのですか?」

 知らない?

 いったい、何を……

「あれが、『魔女』の社ですよ」

 神上未咲が、当然のように答えた。

 え?

 あんな無骨な建物が?

「じゃあ、『神上家』の屋敷の外側にあるのは?」

「あれはただの囮です。さも『魔女』が入ってそうじゃないですか!」

 俺の質問に神上未咲が、あっさりと答えた。

 囮!?

 ということは、俺たちはずっと『神上家』に騙されていたってことになるのか!?

 いったい、どういうことなんだ!?

「え? 竜司先輩、どうしたんですか……?」

 神上未咲が俺を見ながら怯えている。

 俺はだんだんと神上未咲に近付いた。

 神上未咲は後ずさりをしていたが、やがて廊下の壁に阻まれて動けなくなった。

 俺は神上未咲の服を思いっきり掴んだ。

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