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クオリファイア・ロッド  作者: 斜志野九星
第3章 ファブリケイション・オブ・ロッド
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第13話 ニューロデストラクティブ・ロッド

 俺は、神上未咲に案内されるままに、町の北側に向かった。

「いったい、何処で事件が起きたんだ?」

「北の方に地蔵があるのを知ってますか? その近くで起きたらしいです」

 地蔵?

 この町には地蔵がたくさんあるから、どの地蔵のことなのか分からない。

「あたしに付いてきて下さいね! 竜司先輩!」

 神上未咲はルンルンだ。

 俺は、朝早くに起こされたので、あまり神上未咲のような気分にはなれない。

 今日、大丈夫かな?


 うう、疲れた……

 北の方と言われただけだったから、てっきり中心地から少し北に行ったところなのかと思ったら、そのまま北側の山の麓まで来てしまった。

 神上未咲はまだルンルンだ。

 よく、体力が持つな……

「あ、いたいた! 父さん! 兄さん!」

 神上未咲が、誰かを呼んだ。

 父さん、兄さんて……

「未咲!? 何で、お前がこんなところにいるんだよ!?」

 呼ばれた神上未咲の兄こと神上臨は、神上未咲を見るなり大声で怒鳴った。

「お前は家で大人しくしていろ! これは、俺と父さんの問題だ!!」

「何よ! 町の人たちが『魔女』がいなくなって困っているのに、あたしには何もさせてくれないの!?」

「当然だ!! この忌み子が!!」

 神上未咲は神上臨に負けじとキンキン声を出した。

 このまま、『神上家』の兄妹喧嘩が続くのかと思われたが、すぐに終わりを迎えた。

「おっほん!」

 神上達雄が咳払いをした。

 それを聞いた神上臨と神上未咲は、途端に静かになった。

 流石は、『神上家』の頭首。

 咳払い1つで、あの2人を静めるとは……

「2人とも、他人の目がある前で、そんなことをするんじゃないぞ」

 神上達雄は一見優しそうに、だがその言葉には凄まじい重みを乗せて、神上臨と神上未咲を叱った。

「はい……」

 神上臨と神上未咲は、静かに返事をした。

「そんなことより、『杖』のことだ。今、警察と医者に被害者を見てもらっている。2人ともすぐに合流するぞ」

 神上達雄は、態度を瞬時に変えて、今の状況を2人に伝えている。

 被害者!?

 飯地は『杖』で人を傷つけたのか!?

「未咲が連れてきた、そこの君……伊阪竜司君でしたっけ? 君も被害者を見てみますか?」

 神上達雄は、俺に質問してきた。

「はい!」

 当然だ。

 そのために俺は、神上未咲に叩き起こされ、長時間歩かされたんだから。

 見ない理由がない。

「では、こちらへ来てください。あなたの友達の本性が分かりますよ」

 笑みを浮かべながら、神上達雄が言った。

 飯地の本性?

 いったい、何なんだ……

 神上達雄に言われるままに道を進んでいくと、警察官がたくさんいる場所に着いた。

 そこは、道端に地蔵が立っている何の変哲もない道路だった。

 普通じゃないことと言えば、周囲に何やら焼き焦げたような跡があり、その中心部に老人が倒れていることだった。

「何か、分かりましたか?」

 神上達雄が、白衣を着た男即ち医者に質問した。

「ふうむ。少なくとも被害者は生きていますな。ただ……」

「ただ?」

「何かしらの要因で、身体を全く動かすことができないようですな」

 医者は聴診器を首にかけながら言った。

「外の傷は、何か電気ショックとか、雷で打たれたとか、そういう類のものですな」

「ですが、昨日は1日快晴でしたよ」

 医者の言葉に警察官が反論した。

「ただ、雷が近くで落ちていたという証言が何件もあります」

 雷の音は昨日、俺も聞いた。

 でも、快晴だった……?

 ということは……

「飯地が『杖』を使って、この人に何かをした?」

 これしか思いつかなかった。

 だが、何をしたのかは全く分からなかった。

「何者かが電気ショックを動けなくなるまで浴びせ続けたということでしょうか?」

 神上達雄は、俺を一瞬睨んでから、医者に訊いた。

「どうでしょうな。電気ショックだけならば、気絶するか死ぬだけでしょう。もっと他の要因が必要ですな」

「なるほど。ところで、この被害者を何処かへ運ぶことはできますか?」

 神上達雄は今度は警察官に訊いた。

「それなんですがねえ……道路にくっついていて全く動かせないんですよ」

 警察官が困った顔をして言った。

 道路にくっついている?

 どういうことだ?

「そうですか……。被害者の身の安全だけでも、何とかならないでしょうか?」

「それについてはご安心を。既に署の方で準備をしております」

「それは良かった」

 神上達雄は、胸を撫で下ろす仕草をした。

「では、私は他の用事があるので、失礼します」

「はっ! ご苦労様です!」

 神上達雄がその場を後にしようとすると、警察官たちは敬礼をして見送った。

 『神上家』だから、警察でも重要視されているんだろうな……

「しかし、死んだように身体を動かせない……。まるで、『魔女』だな……」

 神上達雄がボソボソと呟くのを、俺は聞き逃さなかった。

 まるで、『魔女』?

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