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クオリファイア・ロッド  作者: 斜志野九星
第3章 ファブリケイション・オブ・ロッド
12/58

第12話 インシデント・ウィズ・ロッド

「竜司、起きなさーい」

 次の日の朝、俺は母さんの声によって起こされた。

 まだ眠い……

 もう少し、寝させてくれ……

「こら! 竜司、起きなさい!!!」

 今度はすぐ近くで声が聞こえた。

「うわっ!!」

 俺は無視しようとしたが、母さんが布団を剥いできた。

 何で、俺の部屋に入っているんだ!?

「会いに来ている人がいるわよ! さっさと、髪をとかして服を着替えて行きなさい!!」

 俺に会いに来ている?

 いったい、誰だろう?

 髪を雑にとかして、服も適当なのを選んで、玄関に向かった。

「竜司先輩、おはようございます!」

 来ていたのは、神上未咲だった。

「あ、おはよう……ふわぁぁぁぁぁ……」

 俺は欠伸混じりに挨拶をした。

 夏休みだというのに、よくこんなに早く起きられるな……

「うわっ、何ですかその服装……」

 神上未咲が、俺を見てドン引きしている。

「そんなに酷いか?」

「ありえないですね。ちゃんとした服に着替えてきてください!」

 ええ、面倒くさい……

 でも、このままだと神上未咲の不満な顔をまた見ることになるし、また言う事を聞かされるということになりかねない。

 しかたがない。

 ちゃんと着替えてこよう。


「これでどうだ?」

 十数分後、俺はちゃんと服を選びなおし、玄関に戻った。

「まあ、まだマシです……」

 今度は、ドン引きされなかったが、反応は微妙なものだった。

「ところで、何の用だ?」

「竜司先輩、酷いです! 今日も事件のことを調べるって約束したじゃないですか!!」

 神上未咲のキンキン声が響き渡る。

 近所に迷惑だから、やめてくれ……

「ああ。でも、こんなに早く来なくても……」

 俺はまだ眠い。

 ちなみに今は午前8時。

 普段通りの夏休みなら、まだぐっすり寝ている時間だ。

「竜司先輩と約束したのですから、できる限り早くしたかったのです!!」

 神上未咲は嬉しそうに言っている。

 どうしてそうなる!

「それはそうと、竜司先輩に報告があるのです!」

「報告?」

「家の書庫を探していたら……あったのです! 『魔女』の名簿が!」

 何だって!?

 実のところ、『魔女』の名簿があるとは全く思ってなかった。

「そうか! で、その『魔女』の名簿は?」

「とても重たかったので、家に置いてきちゃいました!」

 ……おい。

 確かに探してとしか頼んでないけど……

「後で一緒に見に行きましょう!」

 神上未咲はとても楽しそうだ。

 え?

 一緒に見に行くって……

「それってまさか、『神上家』の屋敷に行くのか?」

「そういうことになりますね」

 神上未咲にとっては特別なことではないんだろうが、俺にとっては一大事だ。

 『神上家』の屋敷に入れるなんて、滅多にないぞ!

 いったい、『神上家』の屋敷の中はどうなっているんだろう……

「あれ? でも、それだと『神上家』の情報が俺に漏れていることにならないか?」

「別に屋敷に入るくらい、どうということはないですよ。うちには、町役場の関係者とかしょっちゅう来ますから」

 とりあえず、大丈夫らしい。

 ひょっとしたら、『魔女』の名簿以外にも何か知れるかもしれない。

「じゃあ、早速『神上家』の屋敷に行こうか」

「あっ!!」

 俺が『神上家』の屋敷に向かおうとすると、神上未咲が突然大きな声を出した。

「あたしが急いでここに来た理由をすっかり忘れていました!」

 え?

 『魔女』の名簿が見つかったことを報告しに来たんじゃないの?

「竜司先輩。この町の北の方で、『杖』が原因の事件が起きたのです!」

 『杖』が原因の事件だって?

 それってまさか、飯地が事件を起こしたってことか?

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