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クオリファイア・ロッド  作者: 斜志野九星
第2章 アムニジア・ロッド
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第10話 ホルダーベア・フロム・ロッド

 俺は、結城の母さんに結城の学生証を持ち出しても良いか訊いてみた。

「これ、持って行ってもいいですか?」

「いいよー。なんか買っちゃっただけだからー……」

 結城の母さんは、快く了承してくれた。

 目的を果たしたので、俺は神上未咲を伴って結城の家を出ることにした。

「お邪魔しましたー」

 結城の家を出て、しばらくすると神上未咲が俺に話しかけてきた。

「竜司先輩、結城花帆って人は本当にいたのですか?」

「ああ」

 俺は結城の学生証を神上未咲に見せた。

「うちの中学の学生証? でも、さっきの女の人は何かの拍子に買っちゃったって……」

「未咲。学生証って、いつ何処でどんな風に渡される?」

「え? えっと、入学式の日に学校の先生から手渡され……」

 神上未咲は自分の発言を辿っている途中で、ハッとした。

「買えない!!!」

「そういうこと。しかも、学生証には……」

 その学生証には、「結城花帆」という名前、生年月日、結城の顔写真があった。

 この学生証なら、結城がいたことを証明できる。

 これは、結城の母さんが言っていたみたいに、何かの拍子に買うことなんてできない。

 それに結城の顔写真は、どうやって用意するんだろう?

「これが、結城花帆さん……」

 神上未咲は学生証をまじまじと見つめていた。

「竜司先輩は、結城花帆さんのことをどう思っていたのですか?」

 突然、神上未咲が俺に質問してきた。

「え? そうだなー」

 ちょっと悩んでから、

「頭が良くて優しくて、俺の幼馴染なのが信じられないくらいの女性だったよ」

 頑張って出せた回答がこれだった。

 もう少し、結城の凄さとか言えたはずなのにな……

「へー……」

 神上未咲は何か不満そうだ。

 また何かやらかしたか!?

「竜司先輩は……結城花帆さんのこと……その……す、好きだったのですか?」

 神上未咲の質問に、俺は吹きかけた。

 結城のことは、純粋に友達だと思っている。

 照れ隠しとかではなく、純粋に。

 それに飯地の方が、結城のことをずっと好きでいる。

 俺が友達のライバルになるわけにはいかない。

 だが、結城がただの友達かと言うと、それは何か違う。

 だから、俺はこう答えた。

「好きだよ。友達として……」

「そ、そうですか……良かった……」

 答えを聞いた神上未咲は、安心したような顔をしている。

 良かった?

 いったいどういうことだ?

「良かった?」

「な、何でもないです!」

 俺はその理由を訊いたが、誤魔化された。

「結城花帆さんって人がいたことは信じます。でも、その人は本当に『魔女』になったのですか?」

 ああ、そうか。

 結城がいたことの証明はできたけど、今度は結城が『魔女』になったかどうかを証明しないといけないのか。

 うーん、それはどうしようも……

 いや待てよ……

「未咲。『神上家』に、『魔女』になった人とか『魔女』の候補になった人の名簿とかってないか?」

 俺の隣にいるのは、神上未咲。

 忌み子らしいが、それでも『神上家』の1人だ。

 何とかならないかな?

「見たことはないですけど……でも、探してみます!」

 神上未咲がハキハキとした声で返事をした。

 とりあえず、その名簿を待つことになるな。

「そんなことより、これからどうしますか?」

 空を見ると、もう夕暮れだった。

 今は夏休みだから、もう6時くらいだろうか?

「今日のところはこれくらいにして、また明日、事件のことを調べてみないか?」

 俺が提案すると、神上未咲はまた不満そうな顔になったが、状況を把握したのかすぐに戻って、

「そうですね! あたしは、家に帰って名簿を探さないといけないですし」

 ハキハキとした声で応えてくれた。

「では、竜司先輩! また明日!」

「ああ! 名簿のこと、よろしく頼むな!」

 俺と神上未咲は、手を振って別れた。

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