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クオリファイア・ロッド  作者: 斜志野九星
第1章 ディス・タウン・イズ・インフルーエンスド・バイ・ロッド
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第1話 ストーリー・ビギンズ・フォア・ロッド

 もうすぐ夏休みの中学校にて、

「えっ!? まじかよ!! すごいな……」

 俺こと伊阪(いさか) 竜司(りゅうじ)は、幼馴染の結城(ゆうき) 花帆(かほ)の話を聴いて、大声を上げた。

「驚き過ぎだよ……」

 当の結城は、俺の驚き様に驚いている。

「でも、本当にすごいと思うぞ。まさか、お前が『魔女』に選ばれるなんてな……」

 俺と一緒に結城の話を聴いていたもう1人の幼馴染、飯地(いいち) 久彦(ひさひこ)も驚いている。

「2人とも驚き過ぎだって。何で選ばれたのか分からなくて、戸惑っているんだよ?」

 結城は俺と飯地の驚き様に若干引いている。

「すごいことなんだから、もっと素直に喜ぼうぜ……」

「そうだぞ。『魔女』に選ばれるなんて、余程のことがない限りありえないからな」

 俺たちは、結城を励ました。

「うん、ありがとう。……でも、みんなと話せなくなっちゃうのは寂しいな……」

 結城は笑顔を見せたが、すぐに曇った顔になった。

 しまった……。

 わざとその話題に触れないでいたんだが、結城本人が口に出してしまった。

「安心しろ。俺が毎日お前の所に行ってやる」

「お、俺も毎日とは言えないが、行ってやるぞ!」

 暗い雰囲気にしたくなかった俺たちは、更に結城を励ました。

 ちょっと俺の発言がぎこちなかったけど……

「うん……本当に……ありがとう……」

 だが、結城は俺たちの意図とは反対に泣き出してしまった。

「お、おい……」

 飯地は意図しなかった涙に狼狽えた。

「本当にありがとね。飯地君、伊阪君……」

 涙を流しながら結城は、俺たちに笑いかけた。

 そして、しばらくの静寂の後、結城が喋り出した。

「あ、あのね……2人とも、私が『魔女』になる儀式、見ていかない?」

「え!? いいのか!?」

 『魔女』になる儀式は、神聖な儀式だ。

 関係者以外誰も見てはいけないという掟がある。

 そんなものを見てもいいんだろうか?

「うん。『神上家(しんじょうけ)』の人たちが、友達を連れていっても良いって言ってくれたの」

 よくもまあ、許してくれたな。

 あの『魔女』に関しては堅物の『神上家』が……

「何だって! 俺は興味があるし、是非とも見に行きたい!!」

 好奇心旺盛というべきか、飯地はこういうイベントに目がない。

「伊阪君は?」

「うーん。じいちゃん家に行く準備をしないといけないから、無理だと思う」

 俺の返答に結城はしょんぼりしている。

 ……申し訳ない。

「そんなことより、もうこんな時間だ。『魔女』の儀式に行った方がいいんじゃないか?」

 気が付くと、もう午後4時だ。

「そうだね。じゃあ、行こうか。じゃあね、伊阪君!」

「じゃあな、伊阪!」

 2人は、教室を出ていった。


「俺も帰るか……」

 帰りながら、俺は結城のことを考えた。

 「みんなと話せなくなっちゃうのは寂しいな……」か……。

 本当は『魔女』になりたくないんだろうな……。

 結城は頭が良くて、顔が整っていて、おまけに優しい。

 そして、みんなの為に自分を犠牲にする勇気がある。

 正直、こんな美人が俺の幼馴染であることに驚きを感じる。

 だが、結城を嫌う人間は多かった。

 特に、他人を虐めて喜んでいるような人間は、結城を目の敵にしていた。

 中学に入った頃から、結城への虐めはエスカレートした。

 結城は、暴力を振るわれたり、暴言を吐かれたりと、色々な虐めに遭った。

 それでも、結城は負けなかった。

 結城自身とても強い女性ではあったが、それ以上に結城を支える友達が多かったのも大きな理由だと思う。

 だからこそ、結城にとって友達とは大切でかけがえのない存在だ。

 さっきの言葉も、これが原因で言ったんだと思う。

 俺は、結城の幼馴染だが、喋ることしかできなかった。

 彼女への虐めをただ見ていることしかできなかった。

 あいつが『魔女』になる前に何かしてあげれば良かったと、後悔している。

 せめて、結城が今までの『魔女』の中で最高の『魔女』になることを祈ろう。

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